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第一部6・職人の朝は早いが寝るのが遅いのは自己責任。【全4節】
02本当に相変わらずだ。
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思わぬ再会に、驚いたとか、嬉しいとか、何で? とか、そういうことより先に。
仕事場来るならアポくれよ、私ほぼノーメイクなんだけどって感想が頭を駆け巡り。
さっさと応接室で待たせて、化粧を直した。
化粧室の鏡に写る、私の顔で存在感を放つ眼帯と野暮ったい眼鏡を触る。
………………取らなくてもいいか、義眼を入れてはあるけどさっき眼帯姿も眼鏡も見られてしまっているし。
本当に来るなら来るって事前に教えとけよ……こいつマジに。髪ももう少しどうにかしたってのに。
まあ、そういうのを気にする奴じゃないことも知っているのだけど。
リップと眉とアイラインだけ簡単に整えて、クロウ君の待つ応接室へと向かった。
「…………ええ……、そんなことになってたの……?」
私はクロウ君から、私が公都に来てからの話を聞いて驚愕する。
バリィとリコーは、ちゃんとくっついて子供が出来て町を出て、サウシスで魔法学校の教員をしながら家族で暮らしているとのこと。
キャミィたち西の討伐へ行ったパーティは、キャミィを残して全滅し心が壊れかけていたが、何とか今はみんなの願い通りに幸せになるために旅に出たとのこと。
ブラキスは、田舎に帰って父親の仇である魔物を粉微塵にして木こりとしてやっているとのこと。
メリッサは、スキルの『盗賊』が『勇者』に覚醒したので公都にて勇者パーティとして国に属しているとのこと。
まあバリィとリコーのことは元々知ってたし、それは良い。子供が出来て家庭を持ったのなら何よりだ。
ジスタさんやシードッグさんたちも、もしもの時にはキャミィを生かすと言うことは聞いていたので本懐を遂げたのだろう。後はキャミィが幸せになってくれたら、きっとあの人たちら本望だと思う。機会を見て私も西の慰霊碑に花を手向けに行こう。
ブラキスも心配ではあったけど、なんとかやっているのなら良かった。彼はもう少し自分に自信を持っていいと思うけど、スキルや武器を過信せず仲間を信じるその姿勢は尊敬が出来る子だ。
あの長い棒を見つけたらとりあえず窓を割る悪童のメリッサが勇者……、西の大討伐を終わらせて今や国防の要と言われているなんて……。いやでも最近、勇者が公都に戦略級の魔法を展開して裁判にかけられているみたいな話をきいたけど、メリッサが勇者なら納得だわ……。
正直これにも驚いたけど、何より。
ギルド本部や軍から補充要員が一切送られてこないで、たった一人であの山脈で発生した屈強な魔物からトーンの町を守っていたことに、驚いた。
嘘でしょ……、何やってんのよこの国は。
事実上、この国はトーンの町を見捨てたんだ。
それを一人で……、ライト帝国軍が来なかったら流石のクロウ君でも限界は近かっただろう。
というか本来私たちが抜けた段階でギルド職員が冒険者の仕事をしなくてはならない時点で破綻している。
もしかして、怪我した私とブライに色々な手を尽くした時にギルド本部と揉めたのが原因……?
……いや、全くない話じゃないとは思うけど流石にそんなことで町ひとつ見捨てるようなことをギルドや軍がするなんて……ええ……。
困惑する私をよそに、クロウ君は左手をそっと伸ばして。
「……消えて良かった、傷痕。治しきれなくて、ごめん」
私の右頬を撫でながら、申し訳なさそうにそう言った。
ああ、もう。
本当に相変わらずだ。
私たちは付き合っていたことがある。
仕事場来るならアポくれよ、私ほぼノーメイクなんだけどって感想が頭を駆け巡り。
さっさと応接室で待たせて、化粧を直した。
化粧室の鏡に写る、私の顔で存在感を放つ眼帯と野暮ったい眼鏡を触る。
………………取らなくてもいいか、義眼を入れてはあるけどさっき眼帯姿も眼鏡も見られてしまっているし。
本当に来るなら来るって事前に教えとけよ……こいつマジに。髪ももう少しどうにかしたってのに。
まあ、そういうのを気にする奴じゃないことも知っているのだけど。
リップと眉とアイラインだけ簡単に整えて、クロウ君の待つ応接室へと向かった。
「…………ええ……、そんなことになってたの……?」
私はクロウ君から、私が公都に来てからの話を聞いて驚愕する。
バリィとリコーは、ちゃんとくっついて子供が出来て町を出て、サウシスで魔法学校の教員をしながら家族で暮らしているとのこと。
キャミィたち西の討伐へ行ったパーティは、キャミィを残して全滅し心が壊れかけていたが、何とか今はみんなの願い通りに幸せになるために旅に出たとのこと。
ブラキスは、田舎に帰って父親の仇である魔物を粉微塵にして木こりとしてやっているとのこと。
メリッサは、スキルの『盗賊』が『勇者』に覚醒したので公都にて勇者パーティとして国に属しているとのこと。
まあバリィとリコーのことは元々知ってたし、それは良い。子供が出来て家庭を持ったのなら何よりだ。
ジスタさんやシードッグさんたちも、もしもの時にはキャミィを生かすと言うことは聞いていたので本懐を遂げたのだろう。後はキャミィが幸せになってくれたら、きっとあの人たちら本望だと思う。機会を見て私も西の慰霊碑に花を手向けに行こう。
ブラキスも心配ではあったけど、なんとかやっているのなら良かった。彼はもう少し自分に自信を持っていいと思うけど、スキルや武器を過信せず仲間を信じるその姿勢は尊敬が出来る子だ。
あの長い棒を見つけたらとりあえず窓を割る悪童のメリッサが勇者……、西の大討伐を終わらせて今や国防の要と言われているなんて……。いやでも最近、勇者が公都に戦略級の魔法を展開して裁判にかけられているみたいな話をきいたけど、メリッサが勇者なら納得だわ……。
正直これにも驚いたけど、何より。
ギルド本部や軍から補充要員が一切送られてこないで、たった一人であの山脈で発生した屈強な魔物からトーンの町を守っていたことに、驚いた。
嘘でしょ……、何やってんのよこの国は。
事実上、この国はトーンの町を見捨てたんだ。
それを一人で……、ライト帝国軍が来なかったら流石のクロウ君でも限界は近かっただろう。
というか本来私たちが抜けた段階でギルド職員が冒険者の仕事をしなくてはならない時点で破綻している。
もしかして、怪我した私とブライに色々な手を尽くした時にギルド本部と揉めたのが原因……?
……いや、全くない話じゃないとは思うけど流石にそんなことで町ひとつ見捨てるようなことをギルドや軍がするなんて……ええ……。
困惑する私をよそに、クロウ君は左手をそっと伸ばして。
「……消えて良かった、傷痕。治しきれなくて、ごめん」
私の右頬を撫でながら、申し訳なさそうにそう言った。
ああ、もう。
本当に相変わらずだ。
私たちは付き合っていたことがある。
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