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第一部7・家族の問題における一番の解決策は離別。【全6節】
03やはりこいつは変わっていない。
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私より二つ下のクロウは、私の出した二年前の成果をことごとく下回った。ステータスの伸びも、見込みも、才能もなかった。
稽古の為に教師役や父上などから毎日手酷くやられていた。
回復魔法を覚えさせるために、手当すらしなかった。
私も何度もクロウを打ちのめした。
飯を食いたければ強くなれ。
眠りたければ強くなれ。
人として扱ってほしければ強くなれ。
クローバー家の厳しい訓練の日々が続いたが。
私が十四、クロウが十二の時に、父はクロウを諦めた。
見限ったのだ。
こいつは騎士にはなれない、クローバー侯爵家の恥だと。
それでもあの時まで、父はクロウを追い出すことはしなかった。
適当な家庭教師をつけて、最低限の教育は行った。
そんな落伍者であるクロウが。
この完璧で誇り高き騎士であるこの私を。
圧倒的に上回り、何もさせずに。
徹底して執拗に、かつて虐げ続けたクローバー家への憂さを晴らすかのごとく。
私はズタボロに、体中の骨を折られて、伏せられた。
魔力も尽きて回復も出来ない。
治癒力が損傷に追いつかない。
私が取調室から飛ばされて、たった三十秒ほどの出来事だった。
「さて、そろそろいいか。結構耐えたね、最強のババアだわ。他の方々が来るまで少し話そうか」
倒れる私の背に雑に座りながら、クロウは全く疲れた様子もなく語り出す。
「ぎざっ、ゲブ……ッ、貴様、何を……、どうすれば、こんな……」
私は血反吐を吐きながら、クロウに問いかける。
こいつに気持ちよく話をさせたくないのもあるが、回復までの時間を稼ぎたい。
「ああ、どうして僕みたいな雑魚が誇り高きクローバー侯爵家の姉さんをボコボコに出来たかってのは、スキルやステータスってシステムの理解度が姉さんよりも上なだけだよ。僕らは人間なんだ。数値には反映されない見えない強さや技術に目を向けずにわかりやすい耳障りの良いことだけに囚われた姉さんじゃあ多分理解すらできないんじゃないかな」
淡々とクロウは答える。
答える気はないが、それなりに返事はするのか。
本当に話をしにきたってことか、その割には暴れすぎだこいつ。
「……目的、は……何だ。町を帝国に売り……、冒険者ギルドを……捨て、貴様は、町民と冒険者を犠牲に――ぎあ……っ!」
話を引き出そうと語るも回復を悟られ、途中で脚をへし折られる。
「だから売ってねえって、任せたんだよ。あの町には軍も冒険者一人も居なかったんだから。姉さんたちが馬鹿みたいに西の大討伐で人を死なせたせいで、あの町はどんどん困窮していって僕一人で町を守ってたんだから」
脚をへし折ったことをまるで気に止めることもなく、淡々とクロウは語る。
いや、待て、今なんて言った? 町に軍も冒険者もいない……?
確かに軍は帝国が山脈を越えてくるとは考えておらず、あの辺には兵を多くは置いていなかったが……。
冒険者も不足はしたと聞いていたが、ギルドが上手く調整して問題はないと報告を受けていた。
こいつの与太話通りであるなら軍やギルドの報告に齟齬がある……? いやあるのは虚偽か、人が人を動かす以上愚か者が挟まれば起こりうることだ。私のように気高い生まれでもない限り、誰もが自分の手元で時間を使いたがる、そのしわ寄せは優秀な者が片付けるか劣等者を殺すだけだ。
そして一人で防衛……、いやこいつのこの力量なら可能か……。
「もう限界だったけど、丁度よく山脈を越えられられる技量を持った彼らが来てくれたので軽く畳んだら要求飲んでくれたんで町を譲ったんだ。本当に限界だったんだよ。毎日毎日魔物だなんだって、煩わしい。人が相手ならこうやって話し合うことも出来るのに、魔物の相手は不毛が過ぎる。全てを魔物のせいにするこの世界が我慢ならない。……限界だった、いやマジに」
クロウの続く語りで、ようやく感情が滲む。
ああ、やはりこいつは変わっていない。
どれだけ人の域から外れた存在になろうとも、その思想はそのままか。
稽古の為に教師役や父上などから毎日手酷くやられていた。
回復魔法を覚えさせるために、手当すらしなかった。
私も何度もクロウを打ちのめした。
飯を食いたければ強くなれ。
眠りたければ強くなれ。
人として扱ってほしければ強くなれ。
クローバー家の厳しい訓練の日々が続いたが。
私が十四、クロウが十二の時に、父はクロウを諦めた。
見限ったのだ。
こいつは騎士にはなれない、クローバー侯爵家の恥だと。
それでもあの時まで、父はクロウを追い出すことはしなかった。
適当な家庭教師をつけて、最低限の教育は行った。
そんな落伍者であるクロウが。
この完璧で誇り高き騎士であるこの私を。
圧倒的に上回り、何もさせずに。
徹底して執拗に、かつて虐げ続けたクローバー家への憂さを晴らすかのごとく。
私はズタボロに、体中の骨を折られて、伏せられた。
魔力も尽きて回復も出来ない。
治癒力が損傷に追いつかない。
私が取調室から飛ばされて、たった三十秒ほどの出来事だった。
「さて、そろそろいいか。結構耐えたね、最強のババアだわ。他の方々が来るまで少し話そうか」
倒れる私の背に雑に座りながら、クロウは全く疲れた様子もなく語り出す。
「ぎざっ、ゲブ……ッ、貴様、何を……、どうすれば、こんな……」
私は血反吐を吐きながら、クロウに問いかける。
こいつに気持ちよく話をさせたくないのもあるが、回復までの時間を稼ぎたい。
「ああ、どうして僕みたいな雑魚が誇り高きクローバー侯爵家の姉さんをボコボコに出来たかってのは、スキルやステータスってシステムの理解度が姉さんよりも上なだけだよ。僕らは人間なんだ。数値には反映されない見えない強さや技術に目を向けずにわかりやすい耳障りの良いことだけに囚われた姉さんじゃあ多分理解すらできないんじゃないかな」
淡々とクロウは答える。
答える気はないが、それなりに返事はするのか。
本当に話をしにきたってことか、その割には暴れすぎだこいつ。
「……目的、は……何だ。町を帝国に売り……、冒険者ギルドを……捨て、貴様は、町民と冒険者を犠牲に――ぎあ……っ!」
話を引き出そうと語るも回復を悟られ、途中で脚をへし折られる。
「だから売ってねえって、任せたんだよ。あの町には軍も冒険者一人も居なかったんだから。姉さんたちが馬鹿みたいに西の大討伐で人を死なせたせいで、あの町はどんどん困窮していって僕一人で町を守ってたんだから」
脚をへし折ったことをまるで気に止めることもなく、淡々とクロウは語る。
いや、待て、今なんて言った? 町に軍も冒険者もいない……?
確かに軍は帝国が山脈を越えてくるとは考えておらず、あの辺には兵を多くは置いていなかったが……。
冒険者も不足はしたと聞いていたが、ギルドが上手く調整して問題はないと報告を受けていた。
こいつの与太話通りであるなら軍やギルドの報告に齟齬がある……? いやあるのは虚偽か、人が人を動かす以上愚か者が挟まれば起こりうることだ。私のように気高い生まれでもない限り、誰もが自分の手元で時間を使いたがる、そのしわ寄せは優秀な者が片付けるか劣等者を殺すだけだ。
そして一人で防衛……、いやこいつのこの力量なら可能か……。
「もう限界だったけど、丁度よく山脈を越えられられる技量を持った彼らが来てくれたので軽く畳んだら要求飲んでくれたんで町を譲ったんだ。本当に限界だったんだよ。毎日毎日魔物だなんだって、煩わしい。人が相手ならこうやって話し合うことも出来るのに、魔物の相手は不毛が過ぎる。全てを魔物のせいにするこの世界が我慢ならない。……限界だった、いやマジに」
クロウの続く語りで、ようやく感情が滲む。
ああ、やはりこいつは変わっていない。
どれだけ人の域から外れた存在になろうとも、その思想はそのままか。
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