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第一部8・馬鹿なガキに微笑むのは勿体ない。【全16節】
10こんな意地が悪くて性格も悪い俺を信用も信頼もするわけがない。
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エネミーシステムのデザインと動作テストも終わり、世界に魔物が放たれた。
同時にサポートシステムも実装され、ビリーバーたちが研究開発した攻撃魔法を用いて異世界人類と魔物との戦いが始まった。
しかし、エネミーシステムとサポートシステムの稼働に近似値地球の魔力を使いすぎて、異世界人類の魔力との親和率は下がり発声を用いなくては魔法が使えなくなっていた。
魔法族、この頃にはもう魔族と呼ばれるようになっていた新人類もやや魔力との親和率が落ちて多種多様な魔法を使うことが困難になっていた。
後は相互GISと安全装置の完成を待つばかりというところで。
次は自分が実験に使われるんじゃないかという恐怖でサプライズモア社員から告発が起こり。
旧デイドリームの研究者やエンジニアたちによる過去類を見ないカルト的な大量殺人事件として検挙され。
約百年にも渡るパラレルワールド研究は幕を閉じた。
まあその寸前で、俺たちは異世界を悪用されないように研究所や研究データを物理破壊するべくC4、プラスチック爆弾で吹き飛ばした。
重要なデータを持つ研究者やエンジニアも自ら命を絶った。
俺もそうした。
俺もみんなと同じく、もうこれしかなかったから。
生きていられるだけの理由が俺たちにはなかったから。
自殺には未完成の相互GISを使った。
片道切符のビリーバーとして、異世界へ渡ることで終わることにした。
こうして俺は異世界転生を果たした。
俺たちのせいで、この世界は変わってしまった。
魔物被害対策の為に、人々は少し愚かになった。
俺たちが研究所を爆破するまで時間加速は続いていたはずなので、魔物が実装されてからかなりの年月が経っているはずなのにそこまで文明は発展していなかった。
スキルやステータスウインドウなんてサポートシステムがあっても、攻撃的で学習AIも積んで無限湧きする魔物のせいで人類の発展は止まってしまったのだ。
俺は最終世代のビリーバー、異世界転生者としてどうするか考えたが。
相互GIS担当だった俺には、エネミーシステムやサポートシステムの詳しい仕組みはわかっていなかった。
わかっていたとしても、これ以上この世界を引っ掻き回すのは嫌だった。
申し訳なかった。
そこから俺はなるべく定住しないように世界を渡り歩いた。
この世界の法やモラルに則り、なるべく適当にダラダラと、のらりくらりと過ごした。
デイドリーム時代に、魔力の特性に関する資料を読み漁っていたおかげで魔法に対する理解度も高かったしスキルやらの仕様も把握していたので日銭稼ぎに家庭教師を始めたのだった。
「……っていう、まあ与太話だ。俺はガキが嫌いだからな、まともに答える気がねえんだよ」
俺は真っ直ぐに視線をそらさず真摯に話を聞いていたガキにそう締めくくる。
長く話しすぎた。
最後ので誤魔化せたとは思わないが、まあ信じるわけもねえ。
そこからはガキからしたら魔力も魔法も魔物もスキルもない異世界の文明や文化や歴史や人の話を、適当に覚えていることを正誤判定皆無に並べて話した。
今まで何人か行きずりの女にも話したこともあるが、誰一人まともに信じた奴はいなかった。
ガキから見て、こんな意地が悪くて性格も悪い俺を信用も信頼もするわけがない。
本気でそう思っていた。
だがこれは間違いだった。
俺は気づいていなかった。
このガキは想像以上に俺に恩を感じていて。
想定外の尊敬を向けており。
予想外に懐いてしまっていたことに。
気づけていなかったんだ。
同時にサポートシステムも実装され、ビリーバーたちが研究開発した攻撃魔法を用いて異世界人類と魔物との戦いが始まった。
しかし、エネミーシステムとサポートシステムの稼働に近似値地球の魔力を使いすぎて、異世界人類の魔力との親和率は下がり発声を用いなくては魔法が使えなくなっていた。
魔法族、この頃にはもう魔族と呼ばれるようになっていた新人類もやや魔力との親和率が落ちて多種多様な魔法を使うことが困難になっていた。
後は相互GISと安全装置の完成を待つばかりというところで。
次は自分が実験に使われるんじゃないかという恐怖でサプライズモア社員から告発が起こり。
旧デイドリームの研究者やエンジニアたちによる過去類を見ないカルト的な大量殺人事件として検挙され。
約百年にも渡るパラレルワールド研究は幕を閉じた。
まあその寸前で、俺たちは異世界を悪用されないように研究所や研究データを物理破壊するべくC4、プラスチック爆弾で吹き飛ばした。
重要なデータを持つ研究者やエンジニアも自ら命を絶った。
俺もそうした。
俺もみんなと同じく、もうこれしかなかったから。
生きていられるだけの理由が俺たちにはなかったから。
自殺には未完成の相互GISを使った。
片道切符のビリーバーとして、異世界へ渡ることで終わることにした。
こうして俺は異世界転生を果たした。
俺たちのせいで、この世界は変わってしまった。
魔物被害対策の為に、人々は少し愚かになった。
俺たちが研究所を爆破するまで時間加速は続いていたはずなので、魔物が実装されてからかなりの年月が経っているはずなのにそこまで文明は発展していなかった。
スキルやステータスウインドウなんてサポートシステムがあっても、攻撃的で学習AIも積んで無限湧きする魔物のせいで人類の発展は止まってしまったのだ。
俺は最終世代のビリーバー、異世界転生者としてどうするか考えたが。
相互GIS担当だった俺には、エネミーシステムやサポートシステムの詳しい仕組みはわかっていなかった。
わかっていたとしても、これ以上この世界を引っ掻き回すのは嫌だった。
申し訳なかった。
そこから俺はなるべく定住しないように世界を渡り歩いた。
この世界の法やモラルに則り、なるべく適当にダラダラと、のらりくらりと過ごした。
デイドリーム時代に、魔力の特性に関する資料を読み漁っていたおかげで魔法に対する理解度も高かったしスキルやらの仕様も把握していたので日銭稼ぎに家庭教師を始めたのだった。
「……っていう、まあ与太話だ。俺はガキが嫌いだからな、まともに答える気がねえんだよ」
俺は真っ直ぐに視線をそらさず真摯に話を聞いていたガキにそう締めくくる。
長く話しすぎた。
最後ので誤魔化せたとは思わないが、まあ信じるわけもねえ。
そこからはガキからしたら魔力も魔法も魔物もスキルもない異世界の文明や文化や歴史や人の話を、適当に覚えていることを正誤判定皆無に並べて話した。
今まで何人か行きずりの女にも話したこともあるが、誰一人まともに信じた奴はいなかった。
ガキから見て、こんな意地が悪くて性格も悪い俺を信用も信頼もするわけがない。
本気でそう思っていた。
だがこれは間違いだった。
俺は気づいていなかった。
このガキは想像以上に俺に恩を感じていて。
想定外の尊敬を向けており。
予想外に懐いてしまっていたことに。
気づけていなかったんだ。
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