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第一部9・いつだって大事な話を知らされるのは終わり間際。【全10節】

10本質は。

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 これも確かに、あれをやられると俺たちじゃあ合わし切れない。あの戦い方を全力全開でやるのなら一人の方が良い、俺の力量不足でもあるんだろうが難しいものは難しい。

「言っとくが今のテメーは、昔より雑だからな。刃筋を通そうと集中したり連携を試みるダイルの方が基礎的な技量はまだマシなくらいだ。まあ片手の俺に畳まれるクソ雑魚野郎だが。テメーはただ膨大な量の魔力を持って糞強い魔法を無詠唱で使えて馬鹿みてえな上昇量の補正がかかって近所のお兄さんに憧れていれるだけの雑魚の小娘だ」

 勇者に対して厳し過ぎる評価を言ってのける。

 ついでに俺に対しても。
 まあ確かに基礎を学んで丁寧に戦うようになったが、双剣士の片手剣に仲間の手を借りながら一撃与えるのがやっとな雑魚ではある……。

 辛辣で冷酷で激烈に的確な説教により、俺たちは意気消沈する。空気が重くなる。

 確かにこんなんじゃ、あの速すぎる怪物を捕らえることなんて出来やしない。

 俺たちは、弱い。

「はあ………………ちっ…………いや…………ぐう…………あー…………」

 重くなった空気を察し、頭を抱えて葛藤の末に。

「強くなりたいんなら、俺がおまえらの面倒見てやるよ……はあ」

 ブライさんはとても面倒くさそうに、そう言った。

「言った! 言ったよね! 聞いた? うっわーこいつちょれえー! 昔からブライってだごあ――ッ⁉」

 ブライさんの言葉に大喜びするメリッサは、当然の如くゲンコツで黙らさられる。

「金は貰うぞ。俺はおまえらで公都に庭付きの家を建てることにしたんだ」

 メリッサに呆れながら、淡白にブライさんは告げる。

「もちろん! これでも私お金はあるんだから! これで私たちは強くなれる! ブライから教わればクロウさんにも勝てるはずよ!」

 殴られた頭を擦りながらメリッサは変わらず嬉々として話す。

 そんな様子を見て。

「ああ? おまえらクロウとやり合うのか……? 俺は近接しか教えらんねえぞ?」

 ブライさんは眉をひそめてそんな疑問を投げかける。

「え、クロウさんは近接火力特化でしょ? そのクロウさんに剣で勝ったブライに習うのは当然でしょ」

 メリッサはブライさんの問いに当たり前のことを答える。

 その答えにブライさんは。

使

 さらりと、とんでもない事実を告げた。

「高速詠唱とか言って誤魔化してるが、完全な無詠唱で全系統の魔法を使えて魔力回復速度を上げてるから魔力に底がない。しかも消滅魔法やら系統分類が出来ないようなもんまで当たり前のように使う」

 さらにブライさんは次々と衝撃的な事実を話す。

「確かにあいつは近接格闘も馬鹿ほど強いが、喧嘩が強いだけの凄腕魔法使いだ。俺は魔法なしで使い慣れていない木剣を握ったクロウに千回やって九回勝っただけだぞ」

 想定外のタイミングで告げられた予想外のクロウ・クロスの正体。

 俺たちの中に、驚愕や畏怖や絶望感など様々な思いが巡る中。

 やっぱり、一番最初に思ったのは。 

「「「「……最初に言ええええええええええええええええええええええ――――っ‼」」」」

 四人同時に、そう叫んだ。

 それでも結局俺たちはブライさんを相手にパーティ連携を磨き。

 さらにどっから現れたんだかブライさんやメリッサと同じ町で冒険者をしていた、これまた怪物みてえなキレッキレの後衛魔法使いと一撃必殺の前衛火力が合流し、この三人の連携をもって仮想クロウ・クロスとしてさらに鍛えた。

 メリッサは指示出しや、ここぞというタイミングの奇襲を覚え。
 クライスは毎回全員死にかけ状態なので必然的に回復速度が鍛えられ、あとちょっと身のこなしも良くなった。
 ポピーは元々誰よりも魔法が得意ではあったが、戦術的に設置発動や時間差発動や幻影による魔法発動の隠蔽など、かなりいやらしい魔法の使い方ができるようになった。

 俺はまあ、双剣士に戻ったブライさんには届かないにしてもパーティ連携についていける程度には動けるようにはなった。

 まあ、そんな感じでさらに鍛えたが。

 この先にもちろん起こる、実戦には。

 やはり不十分ではあった。
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