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第一部13・会いたい人に会ったことある人には会えたりする。【全6節】

03一つだけ。

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 時間がかかればかかるほど、兵は糧食などを消費するし交戦の機会が増えれば増えるほど兵は消耗するし、何より民も疲弊する。最悪の場合民間人にも犠牲者が出てしまう。

 

 傲慢なほどに、シンプルな世界平和の実現を根底に掲げている。

 故に敵国の軍部や政治的な影響力のある者たちは別として、この世界における全ての民間人に関しては未来の帝国民になると考えなくてはならない。

 故に、敵国だろうと民間人を必要以上に虐げたりはしない。
 無論、過激な反乱などを起こすなら法に則って制圧はするが。
 極端な話、帝国による統治になって良かったと思ってもらわなくては意味がない。

 帝国は別に国土を広げたい訳じゃない。人々を、人類を、世界そのものを発展させて安寧に導きたいだけだ。

 だからこの一瞬で国の中心地を落とせる戦略は、革命的だ。

 だが、しかし。

「…………、確かに不可能では無くなりましたが…………、問題はまだあります」

 ガクラ隊長はクロウさんの話を落ち着いて落とし込んでから、口を開く。

「あまりにも迅速過ぎる。民間人の避難が間に合わない、そのまま市街戦を行えば公都に住まう民を否が応でも巻き込んでしまう。それは帝国の望むところではありません」

 隊長は帝国世界統一論から見た懸念点を伝える。

 確かに。
 外から攻めるのであれば民間人を逃がす猶予は与えられる。迅速すぎる故の弊害か。

「だったら転移先を直接、貴族の屋敷や軍施設や騎士団や冒険者ギルドにして最初に落としてから…………まあ後でやり方教えるけど、映像投影とか音声周知の魔法とかで避難勧告をして軍の残党とか他の街からの援軍が来る前に安全な場所に移してやりゃあいい」

 さらりとクロウさんは回答する。

 そうか別に転移先の安全性が担保できるなら、直接そういう場所を狙えばいい話なのか。

 それに映像投影? 音声周知? そんな魔法があるのか……?

「しかしながら、公国には『無効化』持ちが我々が知る限り四枚と勇者パーティがいます。これらを攻略出来なければ――」

「ああもうそんなん通信網の連携で対『無効化』編成のスキル無しでも戦える部隊をぶつければいいし、勇者パーティにはこちら側の『無効化』をぶつければいいだけだし、最悪僕が『無効化』対策用の疑似加速やらの魔法を教えるよ」

 ガクラ隊長の懸念に対してクロウさんは被せるように回答する。

「後はこの話の核となる『小型範囲長距離転移結晶』や『携帯通信結晶』とかの実証と量産についてだろ? それについては実物もあるしセツナは既に設計図だけじゃなくて製造指示書まで纏めている、すぐにでも帝国軍が抱えてる魔道具メーカーや技術部門で検証して貰えばいい」

 そう言って魚の燻製を食べ終えてお茶をすすり。

「んで? どうするんだい」

 クロウさんはガクラ隊長に、やや真剣な面持ちで問う。

「…………。早急に本部へ上告を行い、話を進めます」

 少し何かを考えたが、これ以上手札がないガクラ隊長は潔くクロウさんの問いに答えた。

「よし、じゃあさっさと動こうか。僕は『善は急げ』で出来ている」

 納得の一言と共に、クロウさんは立ち上がった。

「あ、そうだ。君たちはさっきの話に出たビリーバー……異世界転生者に心当たりというか思い当たる節はないかい? 恐らく帝国の発展に貢献というか影響を与えた人物だと思うんだけど」

 部屋を出るところで振り返り、クロウさんは我々に問う。

 いやはや……。

 そもそも存在自体が懐疑的である魔力が無くて文明がとても発達している異世界という荒唐無稽なものに対して我々が知るわけがない。

 しかも我々は帝国軍人であり、不確な情報や可能性が低いようなことは安易に報告したりはしない。ある程度、最低限の確信がないとむやみやたらな提言は出来ない。

 のだが。

「「」」

 我々は同時にそう返す。

 まあ、これがまた偶然というか帝国民なら先程の話を聞いて誰でもうっすらと過ぎるワードがあった。

 それが。

……

 クロウさんは持ち込んだ魔道具の検証と量産交渉のために訪れた帝国トップの魔道具メーカー本社前でしみじみと社名を読み上げる。
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