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第一部20・家族だからといって愛が生まれるとは限らない。【全6節】

01恥ずかしい。

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 私、スノウ・クローバーは騎士である。

 

 これは大局的に国境線付近で小競り合いが起こっているとかそういう話ではく。

 現在とは今、本当に現在進行形の話。
 なんと帝国軍はセブン公国の中心地である公都に、転移魔法を用いて超大規模な強襲制圧作戦を実行した。

 確認できているだけで、帝国兵の数約三万。
 しかも負傷や補給をする度に転移を使って入れ替わって勢力を維持している。
 待機兵も合わせれば推定四万……いや五万は居てもおかしくない。

 それをこの国の中心部に跳ばして、公都を強襲制圧など……そんなふざけた策を想定が出来るか。

 帝国からの攻撃が始まりまだ一時間も経っていないが、既に公都内の公国軍拠点の八割が制圧され大多数の主要貴族も捕らえられている。

 残り二割の軍拠点も劣勢であり、緊急で各方面支部からの援軍を公都へ向かわせてはいるが到着する頃には公都は落とされているだろう。

 西の大討伐で減った兵を埋めるべく徴兵によって、なんとか数は合わせたがまだまだ練度はかなり低い。
 帝国軍は個人の技量も連携の練度も高い……、せめて五年、いや三年あればもう少し戦えたはずだったが……タイミングが悪過ぎる。

 我が騎士団二番隊は、副隊長のサンド・ハヴィーラに指揮を預け勇者パーティの援護に向かわせた。

 間違いなく、このまま公都は占領される。
 だが『勇者』のスキルがあればまだ公国は戦える。

 帝国は大陸一の大国、人口も多く民の幸福度も高い。
 それが故に『勇者』の一都市を消し飛ばす戦略級消滅魔法によって、交渉の余地が生まれる。
 地方貴族と各方面支部の兵を集め、再度戦力を立て直す。

 まだ戦える。
 戦いは数ではあるが、時に圧倒的なスキルはそんな常識すらひっくり返す。
 『勇者』があれば公国はまだ十年戦えるってやつだよ。

 故に『勇者』の死守はマストで行う。
 あの小娘は気に入らないどころか、嫌悪感しか抱かぬが『勇者』のスキルはこの国に必要だ。

 我が騎士団二番隊は優秀なスキル持ちで構成された部隊である。
 さらに今回は試作段階である『箱』を携行させている。
 どんな卓越した戦力であろうと、人である以上『無効化』には抗えん。

 スキルを消すなど、忌々しいスキルではあるが背に腹はかえられぬ。
 それにまだ試作段階ではあるが全ての『無効化』持ちを『箱』にしてしまえるなら、完全な対人兵器となる。
 忌み子として生まれながら、兵器として国家防衛に参加できるのだ。『無効化』持ちも本望であろう。

 しかし、まあ……。
 現実的なところで言うなら、敗戦は前提だ。

 だが敗戦後に『勇者』をちらつかせて公国軍や貴族による独立自治権をねじ込む。
 そこから再びセブン公国を再建すれば良い。

 騎士団として、そしてクローバー侯爵家としてなんとかしてみせる。
 不可能ではない……、公国のスキル選別は完璧だ。

 だが、が一つ。

 私の『能力向上』によって向上された魔法適正により、精度を上げ拡大した魔力感知に覚えのある魔力が反応する。

 これは、クローバー侯爵家……いやこの国最大の汚点。

 売国奴にして落伍者で、狂人。
 最凶最悪の犯罪者である、クロウ・クロスのもだった。

 数ヶ月間に町をひとつ帝国に売り渡し。
 軍本部の破壊。
 騎士である私への殺人未遂。
 勇者パーティへの暴行傷害。

 そんな一連の犯行の後、逃亡を続けていた男がこの混乱に乗じて公都に戻ってきている……?

 いや、そもそもあいつは帝国と通じている。
 この公都への強襲にもあいつが絡んでいるのか……?

 確かに狙う先が的確過ぎる。公国民からの情報提供があって然りだ。
 内通して公都強襲に協力……、外患誘致で国家転覆を……。

 同じ血が流れていることが、恥ずかしい。

 もう既にあいつがクローバー家の血を引いているという書類上の情報は全て抹消させている。
 最早あいつはクローバー家に縁のある人間ではない。
 ただの下劣な凶悪犯罪者だ。

 それでも虫唾が走る。
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