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第一部19・職人の就寝が遅いとその分世界は加速する。【全7節】

06笑顔で報告を。

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 嘘でしょ? そんなに容易く……、一応帝国軍魔法使い十人からの魔法による波状攻撃や戦術級魔法も耐える設計なんだけど……。

 考えろ、何かないのか?
 消滅魔法は無色透明、魔力視でしか感知できない。
 どこかに隙間はないの?
 呼吸……、いやダメだ口まで被っている。息も止めているんだ。
 本当に指先まで、ナイフも含めて纏っている。
 消し飛ばせる。

 ――――っ!

 私は気づいたことをそのまま行動に移すべく、地面に向けてありったけの光線を撃ち込む。

 その光線を『魔力操作』によって無理やり捻じ曲げ。

 メリッサの足の裏を狙う。

 足の裏まで消滅魔法を纏っているのなら、接触面から地面を消し去って抵抗なく自重で埋まってしまう。
 故に走って接近するメリッサは、足の裏には消滅を纏えない。

 魔法防御は施されているかもしれないけど、干渉はできるしこの光線の威力も低くはない。

 ここが分水嶺。

 曲がれ曲がれ曲がれ曲がれ曲がれ曲がれ曲がれ曲がれ曲がれ曲がれ曲がれ。

「っ……曲がれええええええ――――ぇえええぇええぇえええええええッ‼」

 私は思いが声に出るほど全開で『魔力操作』で光線の束を捻じ曲げ。

 メリッサの下から突き上げるように光線で撃ち上げ――――。

 

 メリッサは地面から少しだけ浮遊魔法で浮かび、地面との接触を避けていた。
 足の裏まで消滅を纏っていたのだ。

 必死で曲げた光線は、メリッサの足元を照らした程度で消え去った。

 思考更新、もう私にこの状態のメリッサを討つことは出来ない。

 だから、最後に一回。

 私は緊急離脱でモノアイの背部装甲をパージして、吹き飛ぶように外に出る。
 それとほぼ同時に、音もなく削られ消え去るモノアイに内蔵された『予備魔力結晶』を魔力を過剰に流し込んで自爆させる。

 私は爆風を魔法防御で受けながら、そのまま吹き飛んで距離をとる。

 こんなものは目くらましにしかならない。
 だが『予備魔力結晶』に溜めていた私の魔力が爆発したことにより、この辺り一帯は私の魔力で満ちる為に魔力感知が阻害される。

 私の目的は、時間稼ぎだ。

 この『転移阻害転移結晶』さえあれば、クロウ君へ直接跳ぶとは出来ない。
 走って行くには道中の帝国兵との戦闘を余儀なくされる。

 いくら『勇者』でも魔力は無尽蔵ではない。
 クロウ君に辿り着くまでに、かなり消耗するだろう。
 足止めには十分……。

「……はあっ、はあ……っ、ふー……ふー……」

 私は息を整えながら住居の中へと逃げ込む。

 魔法防御をしたとはいえ、単純に爆風のダメージが大きい。

 無茶はしたくなかったけど……、仕方ない。

 ここからは逃走に切り替える。
 私は『転移阻害転移結晶』の効果範囲から出るわけにはいかない。

 このまま息を潜めて逃げ延び――――。

 なんて一息つく間もなく。

 壁をすり抜けるように、自分の型の窓を作りながらメリッサは現れた。

 モノアイも失い、爆発させるのに魔力も使い過ぎて枯渇気味。
 爆風で服もボロボロ。
 もう私にメリッサを止めることは出来ない。

 でも、絶対に負けない。

 ナイフをこちらに向けて浮遊しながら近づくメリッサに、私はおへその下を軽く触りながら笑顔で報告をする。

「…………
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