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第一部番外・だから東に昇って西に沈んだ。【全45節】
45朝日に溶けていった。
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気がつくと俺は馬車に乗っていた。
ああ寝ていたのか、俺は。
ゆっくり伸びをして、煙草を咥えて火をつける。
「おお、来たかアカカゲ。行くぞ、もう終わった」
ジスタが馬車の御者席でふんぞり返りながら俺に言う。
終わった……? 何が……。
ああ、そうか。
俺は馬車の幌をめくって、後ろの景色を観る。
遠くでキャミィが倒れていたのをボロボロの生存者……、あれはテンプか。
テンプや他の生き残りたちが、キャミィを抱えて撤退する様子が見えた。
良かった、キャミィは無事に生き残ったようだ。
「幸せになってほしいな」
同じく様子を見ていたミラルドンが、穏やかに呟いた。
「ああ、絶対に幸せになってほしい」
テラがそんな俺たちにさらりと言う。
「変な虫にひっかからんか心配だな……クロウとか」
シードッグが眉をひそめて唸るように呟くと。
「クロウは相当遊んでるし節操もねえが、真面目だ。キャミィに手ぇ出したりは……多分しねえよ」
苦笑いしながらジスタは返す。
「だが心配は心配だな……、適当な軟弱者にキャミィを幸せに出来るのか? 最低でも俺らより強くなきゃ駄目だぞ」
ミラルドンは身体を向き直して語る。
「確かに……、それでいてマトモな奴だ。ブライは論外としてバリィみたいな狡猾すぎるのも駄目だな」
シードッグも同意する。
「ちゃんとキャミィを根っこから大事に出来て、誠実でちゃんとした奴か…………つーかアカカゲも死んでんじゃねーよ、馬鹿。てめぇが残れりゃあ解決してたんだぞコラ」
ジスタが急に俺へと矛先を向ける。
「無茶を言うな馬鹿野郎。つーかてめぇらがヘボだから壊滅したんだろ、俺になすりつけんな」
俺は即座に切り返し。
「…………まあ、キャミィは大丈夫だよ。あいつは男を見る目はあるはずだからよ」
にやりと笑って、言ってのける。
「「「「違ぇねえ」」」」
にやりと笑って、野郎共もそう返す。
そこから酒を飲み交わして、馬鹿話を続けた。
やがて、朝日が登って馬車は真っ赤な朝焼けに包まれる。
キャミィを生き残らせられた満足感と少しの喪失感と共に、真っ赤に溶けていく。
ああ、良かった。
後は、頼むから幸せになってくれ。
俺たちはここまでだけど、ここからの長い人生を素敵なものにする出会いをしてくれ。
たまにでいいから、俺を思い出してくれ。
でも、俺なんか忘れるほど幸せになってくれ。
もしキャミィを不幸にしたり傷つけるような奴がいたら、呪う。
最悪のドン底まで追い込んでやる。
怪我や病気はキャミィが治せてしまうか……、そうだなブライに一生付きまとわれるとかが丁度いい最悪か。
まあそのくらいの嫌がらせは許してくれ。
ただただ、キャミィの幸福だけを願いながら。
朝日に溶けていった。
一方。
東の果ての山脈の向こうで。
俺たちの要望通りの屈強な男が、一人。
朝日とともに山を越えようとしていた。
後に世界最速最強から色々と叩き込まれ、帝国最強の軍人となるその男がキャミィの幸せのために尽力することになるのだが。
それは、そいつとキャミィの話だ。
俺の話は、これで終わりだ。
おしまい。
ああ寝ていたのか、俺は。
ゆっくり伸びをして、煙草を咥えて火をつける。
「おお、来たかアカカゲ。行くぞ、もう終わった」
ジスタが馬車の御者席でふんぞり返りながら俺に言う。
終わった……? 何が……。
ああ、そうか。
俺は馬車の幌をめくって、後ろの景色を観る。
遠くでキャミィが倒れていたのをボロボロの生存者……、あれはテンプか。
テンプや他の生き残りたちが、キャミィを抱えて撤退する様子が見えた。
良かった、キャミィは無事に生き残ったようだ。
「幸せになってほしいな」
同じく様子を見ていたミラルドンが、穏やかに呟いた。
「ああ、絶対に幸せになってほしい」
テラがそんな俺たちにさらりと言う。
「変な虫にひっかからんか心配だな……クロウとか」
シードッグが眉をひそめて唸るように呟くと。
「クロウは相当遊んでるし節操もねえが、真面目だ。キャミィに手ぇ出したりは……多分しねえよ」
苦笑いしながらジスタは返す。
「だが心配は心配だな……、適当な軟弱者にキャミィを幸せに出来るのか? 最低でも俺らより強くなきゃ駄目だぞ」
ミラルドンは身体を向き直して語る。
「確かに……、それでいてマトモな奴だ。ブライは論外としてバリィみたいな狡猾すぎるのも駄目だな」
シードッグも同意する。
「ちゃんとキャミィを根っこから大事に出来て、誠実でちゃんとした奴か…………つーかアカカゲも死んでんじゃねーよ、馬鹿。てめぇが残れりゃあ解決してたんだぞコラ」
ジスタが急に俺へと矛先を向ける。
「無茶を言うな馬鹿野郎。つーかてめぇらがヘボだから壊滅したんだろ、俺になすりつけんな」
俺は即座に切り返し。
「…………まあ、キャミィは大丈夫だよ。あいつは男を見る目はあるはずだからよ」
にやりと笑って、言ってのける。
「「「「違ぇねえ」」」」
にやりと笑って、野郎共もそう返す。
そこから酒を飲み交わして、馬鹿話を続けた。
やがて、朝日が登って馬車は真っ赤な朝焼けに包まれる。
キャミィを生き残らせられた満足感と少しの喪失感と共に、真っ赤に溶けていく。
ああ、良かった。
後は、頼むから幸せになってくれ。
俺たちはここまでだけど、ここからの長い人生を素敵なものにする出会いをしてくれ。
たまにでいいから、俺を思い出してくれ。
でも、俺なんか忘れるほど幸せになってくれ。
もしキャミィを不幸にしたり傷つけるような奴がいたら、呪う。
最悪のドン底まで追い込んでやる。
怪我や病気はキャミィが治せてしまうか……、そうだなブライに一生付きまとわれるとかが丁度いい最悪か。
まあそのくらいの嫌がらせは許してくれ。
ただただ、キャミィの幸福だけを願いながら。
朝日に溶けていった。
一方。
東の果ての山脈の向こうで。
俺たちの要望通りの屈強な男が、一人。
朝日とともに山を越えようとしていた。
後に世界最速最強から色々と叩き込まれ、帝国最強の軍人となるその男がキャミィの幸せのために尽力することになるのだが。
それは、そいつとキャミィの話だ。
俺の話は、これで終わりだ。
おしまい。
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