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第一部番外・だから東に昇って西に沈んだ。【全45節】
04善は急げ。
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翌日の朝、男に言われた通りにギルドへと向かった。
簡単な椅子と机が並び、奥にはカウンターと大きな掲示板。
椅子と机で冒険者らしき輩が何かを話し合っている。
「またブライは遅刻か……、なんで酒やらねえあいつが一番寝るんだ。馬鹿だからなのか?」
「いやバリィ、実際集合早いよこれ……。多分昼前集合でも依頼取られないから……ふあ……、ねーむいわ……」
「やっぱそうよね? リコー、これ早いよね? 私も朝弱いからギリギリなのよね……、もうちょい朝に余裕欲しいんだけど」
「……確かに、ジスタたちは朝来ねえから先に良い依頼受けちまおうと思ったが、そもそも朝イチは美味い依頼もそんなねえしな……やめとくか次から」
そんな話が耳に入りつつ、ギルドの受付に進むと。
「冒険者登録かい?」
受付に座る、黒髪に黒い瞳で垂れ目の恐らくギルド職員の男に声をかけられる。
「登録……そうだな。仕事を受けた……っ⁉」
俺はギルド職員にそう返そうとしたところで、残像を置いて職員が消えた。
「ああごめん、僕はクロウ・クロス。なんか凄い速い職員だと思ってくれ」
カウンターから離れた棚から何かの書類を取りながら、なんか凄い速いギルド職員のクロウ・クロスはそう言って。
「じゃあこれに名前とスキル、もし以前に武術経験や何か戦闘職経験があれば使用武器なんかも書くんだけど。まあ、全然偽装してもいいよ。でもスキルとかは隠しすぎるとパーティ組んだ時に連携に支障が出るから、少なくとも仲間になる人たちには教えた方がいいよ」
棚の前に残像を置いて、突然目の前で記入用紙を広げながらクロウは淡々と説明をする。
……いや、もうこの速さに驚くのはやめよう。なんか凄い速いでいい。
それより偽装有りって、なんていい加減な登録なんだ……。
名前とスキル…………まあ別に隠す必要もないか。
里はないし、既に俺は暗殺者ではない。
世の中に存在を隠す必要もない……が。
流石に元暗殺者は書かなくていいだろう。
人殺しは一般的にはあまり良いイメージがない。こんなことで食いっぱぐれるのは面倒だ。
「アカカゲ・ブラッドムーン……スキルは『忍者』で、魔法系統は火と無属性の二つ……空間魔法と身体強化が得意で使用武器は何でも……、武道武術の心得は有り……主に躰道と家に伝わる古武術……冒険者経験は無し……ふむふむ」
俺が記入した内容をクロウは咀嚼するようにぶつぶつと読み上げる。
「この町で依頼を受けるということでいいのかな?」
クロウは書類にサインをして、登録証を発行しながら俺に問う。
「ああ、そのつもりだが……問題があるのか?」
俺は問いに答えつつ、意図が読めなかったので確認をする。
「いやいや、当ギルドは常に新人大歓迎だよ。でも、このギルドの主な依頼は魔物討伐。もちろん対人や採取系もあるけど、基本的に山から湧く魔物を減らしに行ったついでに採取をしたり隙間に商人護衛などをやったり、野盗を捕まえに行ったりって感じになる」
クロウは丁寧に説明をする。
「君は対人戦の心得はそれなりにあるように見えるし身体も鍛えているが、魔物討伐には明るくない。でもここで冒険者をやるからには魔物討伐、魔物戦闘においての立ち回りが要求される」
続けて俺の中にもある懸念点に触れる。
「だからとりあえず数日は基礎講習から始めて、ある程度かたちになったらどこかのパーティに混ざって依頼をこなす感じになるから……すぐには稼げないけど、それでいいならって感じかな」
淡々とそんな説明をしてくれる。
「問題ない。こちらとしても基礎を習えるのは非常に助かる」
俺は説明に対して簡潔に答える。
「よし、善は急げだ。とりあえずさくっと今ある仕事終わらせて講習用の部屋を抑えてくるから十分待ってくれ。講習は頼りなくて申し訳ないが僕が担当しよう」
そう言ってクロウは残像を置いて消える。
流石に慣れたが……、頼りないってのは謙遜が嫌味に化けているぞ。
今の状況じゃあ殺す方法が見つからない。
寝込みを襲うとかもっと完全に暗殺を成立させないと不可能だ。
俺がとりあえず講習を待とうと思ったその時。
「ちょーっと待てクロウ! その坊主はうちで預かる!」
背後から昨日聞いた声が飛ぶ。
振り向くと男が四人、内二人は昨晩会った酔っ払いだった。
簡単な椅子と机が並び、奥にはカウンターと大きな掲示板。
椅子と机で冒険者らしき輩が何かを話し合っている。
「またブライは遅刻か……、なんで酒やらねえあいつが一番寝るんだ。馬鹿だからなのか?」
「いやバリィ、実際集合早いよこれ……。多分昼前集合でも依頼取られないから……ふあ……、ねーむいわ……」
「やっぱそうよね? リコー、これ早いよね? 私も朝弱いからギリギリなのよね……、もうちょい朝に余裕欲しいんだけど」
「……確かに、ジスタたちは朝来ねえから先に良い依頼受けちまおうと思ったが、そもそも朝イチは美味い依頼もそんなねえしな……やめとくか次から」
そんな話が耳に入りつつ、ギルドの受付に進むと。
「冒険者登録かい?」
受付に座る、黒髪に黒い瞳で垂れ目の恐らくギルド職員の男に声をかけられる。
「登録……そうだな。仕事を受けた……っ⁉」
俺はギルド職員にそう返そうとしたところで、残像を置いて職員が消えた。
「ああごめん、僕はクロウ・クロス。なんか凄い速い職員だと思ってくれ」
カウンターから離れた棚から何かの書類を取りながら、なんか凄い速いギルド職員のクロウ・クロスはそう言って。
「じゃあこれに名前とスキル、もし以前に武術経験や何か戦闘職経験があれば使用武器なんかも書くんだけど。まあ、全然偽装してもいいよ。でもスキルとかは隠しすぎるとパーティ組んだ時に連携に支障が出るから、少なくとも仲間になる人たちには教えた方がいいよ」
棚の前に残像を置いて、突然目の前で記入用紙を広げながらクロウは淡々と説明をする。
……いや、もうこの速さに驚くのはやめよう。なんか凄い速いでいい。
それより偽装有りって、なんていい加減な登録なんだ……。
名前とスキル…………まあ別に隠す必要もないか。
里はないし、既に俺は暗殺者ではない。
世の中に存在を隠す必要もない……が。
流石に元暗殺者は書かなくていいだろう。
人殺しは一般的にはあまり良いイメージがない。こんなことで食いっぱぐれるのは面倒だ。
「アカカゲ・ブラッドムーン……スキルは『忍者』で、魔法系統は火と無属性の二つ……空間魔法と身体強化が得意で使用武器は何でも……、武道武術の心得は有り……主に躰道と家に伝わる古武術……冒険者経験は無し……ふむふむ」
俺が記入した内容をクロウは咀嚼するようにぶつぶつと読み上げる。
「この町で依頼を受けるということでいいのかな?」
クロウは書類にサインをして、登録証を発行しながら俺に問う。
「ああ、そのつもりだが……問題があるのか?」
俺は問いに答えつつ、意図が読めなかったので確認をする。
「いやいや、当ギルドは常に新人大歓迎だよ。でも、このギルドの主な依頼は魔物討伐。もちろん対人や採取系もあるけど、基本的に山から湧く魔物を減らしに行ったついでに採取をしたり隙間に商人護衛などをやったり、野盗を捕まえに行ったりって感じになる」
クロウは丁寧に説明をする。
「君は対人戦の心得はそれなりにあるように見えるし身体も鍛えているが、魔物討伐には明るくない。でもここで冒険者をやるからには魔物討伐、魔物戦闘においての立ち回りが要求される」
続けて俺の中にもある懸念点に触れる。
「だからとりあえず数日は基礎講習から始めて、ある程度かたちになったらどこかのパーティに混ざって依頼をこなす感じになるから……すぐには稼げないけど、それでいいならって感じかな」
淡々とそんな説明をしてくれる。
「問題ない。こちらとしても基礎を習えるのは非常に助かる」
俺は説明に対して簡潔に答える。
「よし、善は急げだ。とりあえずさくっと今ある仕事終わらせて講習用の部屋を抑えてくるから十分待ってくれ。講習は頼りなくて申し訳ないが僕が担当しよう」
そう言ってクロウは残像を置いて消える。
流石に慣れたが……、頼りないってのは謙遜が嫌味に化けているぞ。
今の状況じゃあ殺す方法が見つからない。
寝込みを襲うとかもっと完全に暗殺を成立させないと不可能だ。
俺がとりあえず講習を待とうと思ったその時。
「ちょーっと待てクロウ! その坊主はうちで預かる!」
背後から昨日聞いた声が飛ぶ。
振り向くと男が四人、内二人は昨晩会った酔っ払いだった。
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