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第一部番外・だから東に昇って西に沈んだ。【全45節】
06ナンセンスが足りてねえ。
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「……てんめぇ……っ、いい加減にしろ‼ 死にてえのかッ‼」
ミラルドンは俺を怒鳴りつけながら掴みかかろうとするのを、俺は躱す。
「落ち着けミラルドン。だがアカカゲ、おまえもおまえだ……、何故あんな捨て身な攻撃を選ぶんだ? おまえの動きの良さならもっと他にもやりようはあるだろ?」
シードッグはミラルドンを止めつつ、落ち着いて俺に問う。
「同感だ。貴様の機動性であれば、撹乱に徹してヘイトを集めて火力役に回すことが出来るだろう。わざわざ危険を侵す理由がわからん」
テラも眉をひそめながら疑問を投げかける。
「……まあ熱くなって無茶をしちまうのは新米冒険者には、ままある話ではある。俺も勿論、ここにいる奴は大抵そうだった。だからまあ別に仕方ないし、俺たちはそんなよくある話に目くじらを立てたりはしない……」
話を聞いていたジスタは頬杖をつきながら、淡々と語り出す。
「だがアカカゲ。おまえはそういうタイプでもねえ、おまえのはただ自分の生命に無頓着なようにしか思えねえ。なんでそんなことになってんだ? それは直せるもんなのか、それとも、そもそもが死にたがりなのか。聞かせて貰おうか」
そのままジスタは真摯な眼差しで、俺に話すように促した。
流石に言うか……。
実際問題、俺の動きで連携が乱れて迷惑をかけたわけで。
不信感に対する説明責任は確かにある。
…………仕方ないか。
「……俺は暗殺者として生まれて、暗殺者として育った暗殺者だった――――」
俺は語った。
魔物の襲撃で滅んだ里のこと。
殺人用自動人形として造られたこと。
暗殺者として完成してしまっていること。
故に、殺しにおいて手段を選ばず何でも使うこと、自らの命ですら状況のひとつとして扱ってしまうこと。
習性として、殺しを遂行する為に相討ちをいとわないこと。
殺しの状況は時間が短ければ短いほどに良いとされること。
今回のも撹乱中に、つい、今ここで刃を通せば状況が完了される。という相討ち前提の行動をしてしまったこと。
そんな俺を止める者が居ることを想定していなかった為に連携を乱してしまったこと。
それらを語った。
「……なるほど暗殺者、だからおまえちょいちょい俺らの首を狩り取りそうな雰囲気出してたのか……合点がいった」
ジスタは煙草を吹かしながら、俺の話を聞いて平らな声でそう言った。
やはり良いイメージはないか。単純な話、俺は人殺しなわけだし実際俺は十六年の人生で二十六人は殺している。
一応国というか貴族からの依頼なわけだが、非合法な殺人である。だから、俺はただの大量殺人犯でしかない。
俺を捕らえて軍にでも売っぱらうか、正義感で俺を殺すか、まあいずれにしろ逃亡しかない。
山脈を越えてさらに東のライト帝国にでも行くか。
なんて、巡らせていたが。
「……いーや、良かったぁ。じゃあ別に自殺志願者とか、死に場所にトーンを選んだとかじゃねえんだな……」
ジスタは笑顔で、安心したようにそう言った。
「いやたまに居たんだよ。せめて戦いの中で死のうとか考えて山脈の魔物に挑みに来た馬鹿な軍人崩れとか指南役崩れとかが」
「「俺らじゃねーか」」
続くジスタの語りに、テラとシードッグが反応する。
「要するに地域的な風習が染み付いちまってるだけなんだろ? じゃあ直るさ、思ってる以上に人は柔軟だ」
そう言いながらジスタは空間魔法から酒と煙草を取り出して俺に放り投げる。
「まずはそっから始めろ、おまえは少々ナンセンスが足りてねえ」
にやりと笑いながらジスタはそう言って鼻と口から煙を吐いた。
俺はこうして、暗殺者から新米冒険者で喫煙者になった。
ミラルドンは俺を怒鳴りつけながら掴みかかろうとするのを、俺は躱す。
「落ち着けミラルドン。だがアカカゲ、おまえもおまえだ……、何故あんな捨て身な攻撃を選ぶんだ? おまえの動きの良さならもっと他にもやりようはあるだろ?」
シードッグはミラルドンを止めつつ、落ち着いて俺に問う。
「同感だ。貴様の機動性であれば、撹乱に徹してヘイトを集めて火力役に回すことが出来るだろう。わざわざ危険を侵す理由がわからん」
テラも眉をひそめながら疑問を投げかける。
「……まあ熱くなって無茶をしちまうのは新米冒険者には、ままある話ではある。俺も勿論、ここにいる奴は大抵そうだった。だからまあ別に仕方ないし、俺たちはそんなよくある話に目くじらを立てたりはしない……」
話を聞いていたジスタは頬杖をつきながら、淡々と語り出す。
「だがアカカゲ。おまえはそういうタイプでもねえ、おまえのはただ自分の生命に無頓着なようにしか思えねえ。なんでそんなことになってんだ? それは直せるもんなのか、それとも、そもそもが死にたがりなのか。聞かせて貰おうか」
そのままジスタは真摯な眼差しで、俺に話すように促した。
流石に言うか……。
実際問題、俺の動きで連携が乱れて迷惑をかけたわけで。
不信感に対する説明責任は確かにある。
…………仕方ないか。
「……俺は暗殺者として生まれて、暗殺者として育った暗殺者だった――――」
俺は語った。
魔物の襲撃で滅んだ里のこと。
殺人用自動人形として造られたこと。
暗殺者として完成してしまっていること。
故に、殺しにおいて手段を選ばず何でも使うこと、自らの命ですら状況のひとつとして扱ってしまうこと。
習性として、殺しを遂行する為に相討ちをいとわないこと。
殺しの状況は時間が短ければ短いほどに良いとされること。
今回のも撹乱中に、つい、今ここで刃を通せば状況が完了される。という相討ち前提の行動をしてしまったこと。
そんな俺を止める者が居ることを想定していなかった為に連携を乱してしまったこと。
それらを語った。
「……なるほど暗殺者、だからおまえちょいちょい俺らの首を狩り取りそうな雰囲気出してたのか……合点がいった」
ジスタは煙草を吹かしながら、俺の話を聞いて平らな声でそう言った。
やはり良いイメージはないか。単純な話、俺は人殺しなわけだし実際俺は十六年の人生で二十六人は殺している。
一応国というか貴族からの依頼なわけだが、非合法な殺人である。だから、俺はただの大量殺人犯でしかない。
俺を捕らえて軍にでも売っぱらうか、正義感で俺を殺すか、まあいずれにしろ逃亡しかない。
山脈を越えてさらに東のライト帝国にでも行くか。
なんて、巡らせていたが。
「……いーや、良かったぁ。じゃあ別に自殺志願者とか、死に場所にトーンを選んだとかじゃねえんだな……」
ジスタは笑顔で、安心したようにそう言った。
「いやたまに居たんだよ。せめて戦いの中で死のうとか考えて山脈の魔物に挑みに来た馬鹿な軍人崩れとか指南役崩れとかが」
「「俺らじゃねーか」」
続くジスタの語りに、テラとシードッグが反応する。
「要するに地域的な風習が染み付いちまってるだけなんだろ? じゃあ直るさ、思ってる以上に人は柔軟だ」
そう言いながらジスタは空間魔法から酒と煙草を取り出して俺に放り投げる。
「まずはそっから始めろ、おまえは少々ナンセンスが足りてねえ」
にやりと笑いながらジスタはそう言って鼻と口から煙を吐いた。
俺はこうして、暗殺者から新米冒険者で喫煙者になった。
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