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第一部番外・だから東に昇って西に沈んだ。【全45節】

12可能であると判断した。

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 そして数ヶ月の後。

「一匹抜けたぞ‼ アカカゲはキャミィをカバーッ‼」

「必要ないわ!」

 ジスタの指示で俺が動こうとしたのをキャミィが拒否する。

 魔物は角の生えた大きめの犬みたいな姿。
 この辺りの魔物ではかなり小さい方だが、それなりに機動力もあり牙も角も脅威な魔物だ。

 噛みつかれたらキャミィの細腕くらいなら食いちぎるくらいには、強い。

 そんな魔物を相手に半身に構え、運足を用いて距離感で躱して常に軸をずらして立ち回る。
 的を絞らせず居着くことをしない、基本通りの動きだ。

 キャミィの動きを見て、カバーに向かわず俺はキャミィに意識を向けつつ撹乱を続ける。

 ここにキャミィの努力を知らない奴はいないし、キャミィの実力を疑う者はいない。

 だが躰道ベースの立ち回りは確かに有用で強いが、それだけで何とかなるなら里は滅んでいないのも事実だ。

 いつでもカバーが出来るようにはしておく、これが連携だ。実際キャミィが一匹引き付けてくれているだけで討伐効率が落ちていない。

 しかして、魔物は狡猾だ。

 直線的な動きから無理やり頭を振って、生物的ではない不自然な動きで軸をずらしたキャミィに牙を向ける。

 カバーに動こうとした瞬間。

 キャミィの大きな瞳から、真っ赤な炎が噴き出したのが見えた。

 その熱が俺の心に火を点けて、同時にカバーに動こうとしていたシードッグもその熱を理解する。

 俺はワイヤーを通した十字手裏剣を投げて、ワイヤーを魔物の上顎に引っ掛ける。

 上顎を支点に返って来た十字手裏剣をシードッグが大剣でワイヤーを絡めるように受け止めて。

 俺とシードッグでワイヤーを引いて、一瞬だけ魔物の動きを止める。

 

 キャミィは魔物の喉元に、運足での推進力を乗せた旋状突きを放つ。

 そのまま構えに戻しながらの足運びのまま更に、突き。
 腕を中心軸に戻しながら、くるりと回って更に旋状突き。
 さらに戻して裏拳。

 旋状突き、突き、中段突き、裏拳、旋状突き、中段突き、突き、突き、裏拳、中段突き、旋状突き。

 くるりくるりと足を運び。
 常に推進力と重さを両の拳に乗せ続け。
 回復魔法を唱えて拳の怪我を常に治しながら。
 魔物の頭蓋骨を砕いて潰し。

 
 

 そこからキャミィを狙う魔物はいなくなり、より迅速に討伐することが出来た。

「……いやはや、まさか魔物を素手で討伐するとは恐れ入った。本当に格闘戦の才能があるな」

「いや、あんたは魔物戦の才能なさ過ぎ! なんで最後の最後でこんな怪我してんのよ! アカカゲの動きなら私なんかよりもっと綺麗に戦えるはずでしょ⁉ 馬鹿過ぎるわよあんた……」

 俺はうつ伏せに倒れてキャミィに回復されながら素直な感想を述べると、間髪入れずにキャミィは捲し立てる。

 いーや……、ぐうの音も出ん。
 かなり魔物戦にも慣れてはきているはずなんだが、どうしてもここぞと言うところで駆け引きを挑んでしまうというか考えてしまう癖が出てしまうな……。
 冒険者になった俺でこれなら、暗殺者なら初手から駆け引きを挑むだろうし相討ちもするだろうし……、そりゃあ里も滅びるか。

「……よし! 全員集合、話がある」

 俺の回復が終わるのを待って、ジスタが号令をかける。

「実はちょっと前から、シードッグには相談していたんだが。そろそろパーティを二つに分けようと思う」

 ジスタはギルドの机を囲むパーティ全員に、そう告げる。

「単純に六人は多いし、前衛過多気味だし、キャミィもアカカゲかなり育った。だから俺、ミラルドン、テラの三人とシードッグ、アカカゲ、キャミィの三人で分ける」

 そのまま具体的な編成を語る。

「上級依頼は俺らの方で受ける、まあバリィたちも上級を受けられるようになってきたし全然回せる。中級以下をシードッグたちの方で受けてもらう。しばらくはバリィたちも中級メインで受けるだろうから、ここも問題なく回せるはずだ」

 続けて淡々と考えを語る。

 流石ベテラン冒険者でパーティリーダーだ。基本は馬鹿だが。
 結構考えてやがる。基本馬鹿だけど。

「俺とミラルドンとテラからすれば元々のパーティからシードッグが抜けるような感覚で、もっと言うなら前衛火力をミラルドンへ一任することになるが……、まあ別になんとかなんだろ」

 後半投げやりになりつつ、編成内容について語る。

「シードッグ、アカカゲ、キャミィからすると、テラの後衛火力がなくなるし、前衛盾はアカカゲの回避盾のみとなり、前衛火力はシードッグ一枚になる。かなり未知な編成ではあるが……俺は可能であると判断した」

 続いて俺らの方の編成について、自身ありげに語る。
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