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第二部7・小さな誤差がそのまま失敗に繋がった時は実質成功と同じ。【全4節】
03殺意と破壊の塊みたいな武器。
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同時に二人が動くが、俺の方がやや早かった。
初手。
俺は土魔法で地形を変化して格技場中に大小様々な遮蔽物を作る。
チャコールは、多重魔力動線と物理障壁を展開し一瞬遅れて十三個の光球を展開させる。
セオリーでいうなら初手は魔法防御の展開だが、俺はその初手を遮蔽物設置に使った。
何か攻撃魔法を撃つなら二手目だと読んで、魔法防御より地形効果のプレッシャーで実質的な防御を行った。
そして二手目。
俺は地形変化とほぼ同時に光学迷彩魔法で姿を消して十五体の魔力分身を展開させて縦横無尽に動かす。
チャコールは光球を陣形を組むように並べて、遠隔誘導にて展開して遮蔽を掻い潜るように光球を同時に操作して、光球から光線を発射して魔力分身や本体を撃ち抜いていく。
やはり、光学迷彩には当然のように対応してくるか。魔力操作も魔力感知も完璧なようだ。
だが魔力分身は実体がない、撃ち抜いたとて避けられたのか魔力分身を撃ったのかの判断が、これだけ遮蔽があって目視できないとなると付けづらいはず。
本体の俺は魔力分身に混ざりながら、魔力感知と身体操作のみで光球からの光線魔法を躱す。
三手目。
俺は姿を消したまま格技場内を走り回り、遮蔽物として出した障害物に設置型の灼熱線魔法を置いていく。
チャコールは光球を操作しつつ思った以上に捕捉しきれないことから、接近されての近接格闘を想定して空間魔法から大斧を取り出して構える。
悪くない動きだ。
あんな殺意と破壊の塊みたいな武器を構えられた時の心理的なプレッシャーったるや凄まじい。つーかあんなもので人を叩く訓練をしてきたのか……? 過剰も過剰だ、何を倒すことを想定した武器なんだそりゃあ。
だがここまでは俺も策略通り、むしろこの段階で近接格闘を警戒して大斧を装備したのは僥倖といえる。
四手目。
俺は設置型灼熱線魔法を順次発動し、中心から動かないチャコールへ向けて撃ちまくる。
チャコールは展開していた魔力導線で灼熱線魔法を散らす。
まあ通るとは思っていない、これは魔力感知や魔力操作の集中を削ぐ為の撹乱の意味合いが大きい。
設置型が故に、狙いも正確ではないためそもそも当たらないものもあるし灼熱線は光線魔法ほどは速くない、反応が良ければ避けられもする。
だが、火系統魔法の本質は攻撃力じゃあないのさ。
チャコールが魔力導線で散らした灼熱線が燃え広がる。
火の本質は、延焼による二次被害だ。
燃え広がった炎には俺の魔力が練り込まれている、これで魔力感知の精度は下がる。
それに『纒着結界装置』があるので熱自体は遮断されるが、ダメージ自体は通っているので結界は削れる。
そして何より、燃え広がった炎は急速にチャコールの周りの酸素を燃やし尽くす。
酸欠。
これは『纒着結界装置』でも防ぐことは出来ない。
一応、競技ルールで毒物などを霧散させて経口させる行為は禁じられている。故にこれはギリギリの戦法だ。
あくまでも酸欠や一酸化炭素中毒を狙った火系統魔法ではなく熱によるダメージを狙ったものとしなくてはならない。
つまり酸欠で倒すことはないのだが……実戦向け訓練を積んでいると、もしかしてこのまま? って危機感が脳裏をチラつく。
俺だってそうなる。
競技ルールや優秀な防具があっても、魔法を使った模擬戦に完全な安全性などない。
マヌケじゃなけりゃあ焦りは出る。
五手目。
「――――――――ッ‼」
先に動いたのはチャコール、燃え盛る火炎を対策する為に水魔法で格技場全体に雨のように水を撒く。
俺はそれに合わせて、風魔法で酸素を送り込んで瞬間的に火力を上げる。
水蒸気爆発、これが狙いだった。
二択だった。
浮遊魔法や転移魔法で空に逃げるか、なんかしらの方法で火を消すか。
チャコールは後者を選んだ。
そりゃあそうだ、あんな馬鹿な重武器を持って宙に浮くなんてことするわけがない。地に足つけることを前提とした武器なはずだ。
しかし流石と言わざる得ない、この爆発でもチャコールの『纒着結界装置』から試合終了のブザーは鳴っていない。
防御魔法の練度の高さ、それともあの頑強な筋肉からくる屈強さ……どちらもあるのだろう。
関心はあるし感心もするが、それはそれだ。
この機は逃さない。
初手。
俺は土魔法で地形を変化して格技場中に大小様々な遮蔽物を作る。
チャコールは、多重魔力動線と物理障壁を展開し一瞬遅れて十三個の光球を展開させる。
セオリーでいうなら初手は魔法防御の展開だが、俺はその初手を遮蔽物設置に使った。
何か攻撃魔法を撃つなら二手目だと読んで、魔法防御より地形効果のプレッシャーで実質的な防御を行った。
そして二手目。
俺は地形変化とほぼ同時に光学迷彩魔法で姿を消して十五体の魔力分身を展開させて縦横無尽に動かす。
チャコールは光球を陣形を組むように並べて、遠隔誘導にて展開して遮蔽を掻い潜るように光球を同時に操作して、光球から光線を発射して魔力分身や本体を撃ち抜いていく。
やはり、光学迷彩には当然のように対応してくるか。魔力操作も魔力感知も完璧なようだ。
だが魔力分身は実体がない、撃ち抜いたとて避けられたのか魔力分身を撃ったのかの判断が、これだけ遮蔽があって目視できないとなると付けづらいはず。
本体の俺は魔力分身に混ざりながら、魔力感知と身体操作のみで光球からの光線魔法を躱す。
三手目。
俺は姿を消したまま格技場内を走り回り、遮蔽物として出した障害物に設置型の灼熱線魔法を置いていく。
チャコールは光球を操作しつつ思った以上に捕捉しきれないことから、接近されての近接格闘を想定して空間魔法から大斧を取り出して構える。
悪くない動きだ。
あんな殺意と破壊の塊みたいな武器を構えられた時の心理的なプレッシャーったるや凄まじい。つーかあんなもので人を叩く訓練をしてきたのか……? 過剰も過剰だ、何を倒すことを想定した武器なんだそりゃあ。
だがここまでは俺も策略通り、むしろこの段階で近接格闘を警戒して大斧を装備したのは僥倖といえる。
四手目。
俺は設置型灼熱線魔法を順次発動し、中心から動かないチャコールへ向けて撃ちまくる。
チャコールは展開していた魔力導線で灼熱線魔法を散らす。
まあ通るとは思っていない、これは魔力感知や魔力操作の集中を削ぐ為の撹乱の意味合いが大きい。
設置型が故に、狙いも正確ではないためそもそも当たらないものもあるし灼熱線は光線魔法ほどは速くない、反応が良ければ避けられもする。
だが、火系統魔法の本質は攻撃力じゃあないのさ。
チャコールが魔力導線で散らした灼熱線が燃え広がる。
火の本質は、延焼による二次被害だ。
燃え広がった炎には俺の魔力が練り込まれている、これで魔力感知の精度は下がる。
それに『纒着結界装置』があるので熱自体は遮断されるが、ダメージ自体は通っているので結界は削れる。
そして何より、燃え広がった炎は急速にチャコールの周りの酸素を燃やし尽くす。
酸欠。
これは『纒着結界装置』でも防ぐことは出来ない。
一応、競技ルールで毒物などを霧散させて経口させる行為は禁じられている。故にこれはギリギリの戦法だ。
あくまでも酸欠や一酸化炭素中毒を狙った火系統魔法ではなく熱によるダメージを狙ったものとしなくてはならない。
つまり酸欠で倒すことはないのだが……実戦向け訓練を積んでいると、もしかしてこのまま? って危機感が脳裏をチラつく。
俺だってそうなる。
競技ルールや優秀な防具があっても、魔法を使った模擬戦に完全な安全性などない。
マヌケじゃなけりゃあ焦りは出る。
五手目。
「――――――――ッ‼」
先に動いたのはチャコール、燃え盛る火炎を対策する為に水魔法で格技場全体に雨のように水を撒く。
俺はそれに合わせて、風魔法で酸素を送り込んで瞬間的に火力を上げる。
水蒸気爆発、これが狙いだった。
二択だった。
浮遊魔法や転移魔法で空に逃げるか、なんかしらの方法で火を消すか。
チャコールは後者を選んだ。
そりゃあそうだ、あんな馬鹿な重武器を持って宙に浮くなんてことするわけがない。地に足つけることを前提とした武器なはずだ。
しかし流石と言わざる得ない、この爆発でもチャコールの『纒着結界装置』から試合終了のブザーは鳴っていない。
防御魔法の練度の高さ、それともあの頑強な筋肉からくる屈強さ……どちらもあるのだろう。
関心はあるし感心もするが、それはそれだ。
この機は逃さない。
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