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第二部8・泣ける時に泣いておく癖が大人の涙腺を弱くする。【全4節】
03鉄壁天使。
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「それでは‼ 第十四試合! 選手入場ですっ‼」
高らかに選手入場が告げられる。
「西側から入場‼ あらゆる攻撃を華麗に無効化するその姿はまさに絶対防御! 誰も彼女に届かない、鉄壁天使ッ‼ ライラアァァ――――――ッ・バッッッルゥゥゥゥ――――~~ンンッ‼」
入場アナウンスと同時に大きな歓声が沸いて、ライラちゃんが客席に手を振りながら入場する。
「ライラー! 可愛いぞー! 既に優勝してるぞぉーっ‼」
バリィさんは立ち上がって、席から身を乗り出す勢いで声を上げる。
「……っ、てめえらも応援しろ馬鹿野郎! 畳むぞコラァ‼」
「いや、別に応援なんかしなくてもライラちゃんは強いし可愛いし勝つんだから落ち着いて見ましょうよ……」
声を荒らげるバリィさんを僕は落ち着いて諭す。
「…………確かに、その通りだ。落ち着いて観ようじゃあないか」
そう言ってバリィさんは腰を下ろす。
「東側から入場‼ その時に近づけば近づくほどに強くなる特異体質! 今回の試合順なら本領発揮可能かも⁉ 五時十七分‼ ファァァァァイブッ・セブウゥゥゥウウ――――ンテイィィィィイ――――――ンンンッ‼」
アナウンスと共に、ファイブ・セブンティーン選手が入場する。
特異体質……? 今は五時……十分くらいか……?
何それ気になるじゃんか。そんな体質あんの? じゃあ朝方めちゃくちゃ弱いってことなのか?
一応、魔力視と魔力感知と観察魔法でざっくりとした魔力量と親和率を見ると。
「おいおい…………あの人、おふくろ級の魔法使いじゃん……」
僕は驚きの事実を口にする。
「そいつぁすげえな。だが、あくまでも魔力量だとか親和率の話だろ? それだけでポピー嬢と同格にはならねえさ。魔力量の差が戦力の決定的差ではないことは教えただろ」
バリィさんは呆れるように僕に語る。
「まあ、そうですね。別にこれでライラちゃんの勝利が揺らいだりすることもないですから」
僕も落ち着いて返して、格技場に目を戻したところで。
「それでは! 第一回戦第十四試合……………………、試合開始ィィ――っ‼」
ちょうど、ライラちゃんの試合が始まった。
開始と同時に、ライラちゃんは武具召喚で大盾を喚び出した。
会場が少し盛り上がる。
それもそうだ。
一枚ではなく、四枚の大盾を同時に喚び出した。
しかも装備するのではなく大盾は宙に浮く。
これはライラちゃんが学生時代に自分で造った『浮遊操作結晶』を盾に組み込んである。
魔力を通すことで浮遊させて操作することの出来るものだが、操作可能距離は最大三メートル程度で操作感もかなり集中しないとまともな操作どころか盾を浮かせることも出来ない。基本的には欠陥品で正直デイドリームには上位互換品があったりする。
ライラちゃんはこれを在学中の課題で造ったはいいけれど使い物にならず、このままでは単位が貰えないことを危惧して。
改良するのではなく、徹底的に操作の練習をした。
その甲斐あって、複数個同時に重い負荷をかけても難なく操作する姿を見せて見事に単位を取得したのだった。
ここがライラちゃんの凄いところだ。僕なら多分、改良することを選んでしまうだろうが根性だけでなんとかしてしまうのがライラちゃんだ。
二枚の盾を自分の前に浮かせて、もう二枚を自分の背後に展開し。
二枚の盾裏から、短剣を抜いて構える。
天使。
盾がまるで翼のように広がり、羽根のようにふわりふわりと華麗に舞う。
鉄壁天使か……、ライラちゃんは気に入ってなかったみたいだけどあながち間違いじゃあないんじゃないか。少なくとも一撃必殺マジカルマッスルより的確だしかっこいい。
対してファイブ選手は、ライラちゃんから距離を取って観察するように身構えている。
盾を出させないように初手から動いてくると思っていたけど……、まあライラちゃんは多少攻撃されようと捌きながら盾を召喚できるから狙ってもしょうがないのだけれど。
「…………?」
ライラちゃんも攻めてこないことを不審がっている。
基本的にライラちゃんの戦闘スタイルは、待ちだ。
相手が攻めてきたのを捌いて捌いて捌ききって、攻めあぐねて雑になったり単純に疲れてきたところで短剣や魔法、大盾による殴打を叩き込んだり。捌いてる最中に置いた設置式の魔法罠に誘導する。
圧倒的な体力と、戦闘分析力の差で相手を無効化する、ライラちゃんじゃなきゃ出来ない戦術だ。
シンプルだけど強い、シンプルだから強い。
バリィさんの思想が見える。バリィさんはシンプルな役割を徹底する戦い方を好む。完全防御のリコーさんとか怪力斧振り男であるうちの親父とか。
後手になりがちではあるけど、実戦で護身として使うなら十分過ぎるしマジの戦闘なら連携を取るので前衛盾役に徹しられる。
競技的にも『纒着結界装置』に致死量ダメージを与えるか、制限時間までにどれだけ多くのダメージを与えるかってものである限り。
ダメージを受けないというのは、最強だ。
高らかに選手入場が告げられる。
「西側から入場‼ あらゆる攻撃を華麗に無効化するその姿はまさに絶対防御! 誰も彼女に届かない、鉄壁天使ッ‼ ライラアァァ――――――ッ・バッッッルゥゥゥゥ――――~~ンンッ‼」
入場アナウンスと同時に大きな歓声が沸いて、ライラちゃんが客席に手を振りながら入場する。
「ライラー! 可愛いぞー! 既に優勝してるぞぉーっ‼」
バリィさんは立ち上がって、席から身を乗り出す勢いで声を上げる。
「……っ、てめえらも応援しろ馬鹿野郎! 畳むぞコラァ‼」
「いや、別に応援なんかしなくてもライラちゃんは強いし可愛いし勝つんだから落ち着いて見ましょうよ……」
声を荒らげるバリィさんを僕は落ち着いて諭す。
「…………確かに、その通りだ。落ち着いて観ようじゃあないか」
そう言ってバリィさんは腰を下ろす。
「東側から入場‼ その時に近づけば近づくほどに強くなる特異体質! 今回の試合順なら本領発揮可能かも⁉ 五時十七分‼ ファァァァァイブッ・セブウゥゥゥウウ――――ンテイィィィィイ――――――ンンンッ‼」
アナウンスと共に、ファイブ・セブンティーン選手が入場する。
特異体質……? 今は五時……十分くらいか……?
何それ気になるじゃんか。そんな体質あんの? じゃあ朝方めちゃくちゃ弱いってことなのか?
一応、魔力視と魔力感知と観察魔法でざっくりとした魔力量と親和率を見ると。
「おいおい…………あの人、おふくろ級の魔法使いじゃん……」
僕は驚きの事実を口にする。
「そいつぁすげえな。だが、あくまでも魔力量だとか親和率の話だろ? それだけでポピー嬢と同格にはならねえさ。魔力量の差が戦力の決定的差ではないことは教えただろ」
バリィさんは呆れるように僕に語る。
「まあ、そうですね。別にこれでライラちゃんの勝利が揺らいだりすることもないですから」
僕も落ち着いて返して、格技場に目を戻したところで。
「それでは! 第一回戦第十四試合……………………、試合開始ィィ――っ‼」
ちょうど、ライラちゃんの試合が始まった。
開始と同時に、ライラちゃんは武具召喚で大盾を喚び出した。
会場が少し盛り上がる。
それもそうだ。
一枚ではなく、四枚の大盾を同時に喚び出した。
しかも装備するのではなく大盾は宙に浮く。
これはライラちゃんが学生時代に自分で造った『浮遊操作結晶』を盾に組み込んである。
魔力を通すことで浮遊させて操作することの出来るものだが、操作可能距離は最大三メートル程度で操作感もかなり集中しないとまともな操作どころか盾を浮かせることも出来ない。基本的には欠陥品で正直デイドリームには上位互換品があったりする。
ライラちゃんはこれを在学中の課題で造ったはいいけれど使い物にならず、このままでは単位が貰えないことを危惧して。
改良するのではなく、徹底的に操作の練習をした。
その甲斐あって、複数個同時に重い負荷をかけても難なく操作する姿を見せて見事に単位を取得したのだった。
ここがライラちゃんの凄いところだ。僕なら多分、改良することを選んでしまうだろうが根性だけでなんとかしてしまうのがライラちゃんだ。
二枚の盾を自分の前に浮かせて、もう二枚を自分の背後に展開し。
二枚の盾裏から、短剣を抜いて構える。
天使。
盾がまるで翼のように広がり、羽根のようにふわりふわりと華麗に舞う。
鉄壁天使か……、ライラちゃんは気に入ってなかったみたいだけどあながち間違いじゃあないんじゃないか。少なくとも一撃必殺マジカルマッスルより的確だしかっこいい。
対してファイブ選手は、ライラちゃんから距離を取って観察するように身構えている。
盾を出させないように初手から動いてくると思っていたけど……、まあライラちゃんは多少攻撃されようと捌きながら盾を召喚できるから狙ってもしょうがないのだけれど。
「…………?」
ライラちゃんも攻めてこないことを不審がっている。
基本的にライラちゃんの戦闘スタイルは、待ちだ。
相手が攻めてきたのを捌いて捌いて捌ききって、攻めあぐねて雑になったり単純に疲れてきたところで短剣や魔法、大盾による殴打を叩き込んだり。捌いてる最中に置いた設置式の魔法罠に誘導する。
圧倒的な体力と、戦闘分析力の差で相手を無効化する、ライラちゃんじゃなきゃ出来ない戦術だ。
シンプルだけど強い、シンプルだから強い。
バリィさんの思想が見える。バリィさんはシンプルな役割を徹底する戦い方を好む。完全防御のリコーさんとか怪力斧振り男であるうちの親父とか。
後手になりがちではあるけど、実戦で護身として使うなら十分過ぎるしマジの戦闘なら連携を取るので前衛盾役に徹しられる。
競技的にも『纒着結界装置』に致死量ダメージを与えるか、制限時間までにどれだけ多くのダメージを与えるかってものである限り。
ダメージを受けないというのは、最強だ。
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