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第二部11・世界は顧みないが家族は顧みる。【全9節】

07五枚目。

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 これは俺を苛立たせて、攻めを雑にする意味が込められている。

 トーナメント発表会でも、伝言まで使って徹底して挑発してきたのはその為だ。

 ブライさん曰く、ライラ・バルーンの両親もまた父に鍛えられた凄腕の冒険者だったという。

 特にバリィ・バルーンは目的遂行のためなら手段を選ばない、異常な分析と攻略を行う狂人だったらしい。

 彼女の脅威は防御力だけではない。
 手段の選ばない攻略も同じくらい脅威だ。

 だから落ち着いて、心を乱すな。

 この挑発は裏を返せば。
 

 今日こそは、勝つ。

「それでは! 第二回戦第七試合………………、試合開始イィィィ――――――~~っっ‼」

 さあ、俺をまた一つ世界最強に近づけてくれ。

 ライラ・バルーンの戦法は、
 徹底的に捌いて、相手を無効化し続けての封殺を得意とする。

 防御性能は間違いなく帝国トップ、無闇に攻めても逆に遠回りだ。今まではそれで、攻めあぐねて時間を稼がれた。

 挑発には乗らない。
 まずは冷静に観察を――――。

 なんて、開幕は落ち着いて距離を取ろうとしたところで。

 

 ライラ・バルーンは盾を展開して凄まじい勢いで、突っ込んできた。

 速すぎる……! なんだこの機動力は……っ。

 そうか盾……、高速で操作した『四枚羽根』に掴まって機動力を得ているのか。

 俺は身体強化と防御魔法を同時に展開して、運足にて回避行動をとる。

 後手に回らされた……っ、予想してなかった。
 ライラ・バルーンが先手奇襲なんて……、こいつ今までの試合や試合前の挑発も含めて冷静にさせて観察させることを狙ってやがったんだ。

 想像以上に高機動でピタリとついてくる、こんなに動けたのかこの女……。

 面は食らった。だが、この距離は俺の距離だ。

 空間魔法から剣を射出して取り出す。
 予め空間領域にぶん投げて入れて、慣性ごと保存しておいた。

 勢いの流れのまま剣を振り、迎撃をする。

 ライラは剣に臆することなく、盾で上手く遮蔽を作りながらさらに入身で距離を潰してくる。

 ちっか、おまえこの距離で戦うやつじゃねぇだろ……っ、格闘戦で俺に挑むのは無謀過ぎる。

 好都合、ここで終わらす。

 一回剣を手放して、徒手格闘に切り替える。
 前手のリードジャブ、避けた先への肘打ち、飛び膝蹴りから身体を反転させながら手を着いてセンチャイキック。

 ライラは器用に避けたりブロッキングで捌きながら距離を保つ。

 甘くねえ、流石の防御性能だ。
 だが俺も甘くないぞ、超えさせてもらう。

 センチャイキック後の逆立ち状態から、その場目視転移で身体を正位置に戻しながら踏み込んでスマッシュ気味の右フックを振り抜く。

 それに合わせてライラは、合気的な理合で右フックを引っ掛けるように背負い投げをする。

 うっめぇ……っ、こんなこと出来たのか。

 見事に投げ飛ばされながら目視転移の着地点を探すが、滞空する盾をいい位置に配置してやがる。

 だがこの盾は俺にも利用できてしまうのさ。

 一番近い盾に手を着いて、吸着魔法で勢いを止める。

 そのまま盾を腕力で投げつけてやろうとした時に気付く。

 あれ……? 
 五枚目を出し――――。

 

 吸着魔法で吸い付けていた五枚目の盾が、爆発して巻き込まれる。

 くっそ…………。
 防御魔法で致命的な負傷は防げたがそれでも『纒着結界装置』が相当削られた。

 爆風の勢いのまま、上手く距離をとって立て直す。
 まさかこんな至近距離で爆裂系魔法を使うとは……、ライラ自身も巻き込まれただろ。

 体勢を立て直し爆煙を見ると。

 煙の中から、盾を展開して構えつつ人差し指をくいくいと曲げて無傷で俺を煽る。

 鉄壁天使、ライラ・バルーンの姿があった。
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