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第二部12・思いもよらない出来事は思いもよらない結果を生む。【全6節】

04これが私の必勝パターンであり基本戦法。

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 理解が追いつかないが回復する時間が欲しい、私は無言で頷く。

「なるほど、じゃあ二つ目の質問だ。お嬢ちゃんは、この世界……いや、? 更なる強さ……?」

 続けて、二つ目と言いつつ複数の質問を私に投げかける。

「……していない。興味はある」

 私は特に何も考えず素直に答える。

 現状に満足していたら、休みの日までひとりサンドバッグを叩いてはいない。
 強さに興味がないのなら【総合戦闘競技】なんてやってない。

 そろそろ視点が定まってきた……。呼吸を整えろ、相手は『纒着結界装置』を貫通する装備を持っているらしい……、完全に違法な武器だ。

「……そうか、では最後の質問だ――」

 侵入者はゆっくりとこちらに手を伸ばしながら。

「――我々【ワンスモア】と共に、世界を正しい姿に戻す気はあるか?」

 不敵な笑みを浮かべながら、侵入者はそう言った。

 わ、【ワンスモア】って……。
 流石の私でも知っている、【大変革】より前の世界に焦がれる懐古主義者たちからなる過激派テロ組織だ。
 帝国法で禁止されているスキル再現や、人造魔物の研究を行い。
 軍事拠点の襲撃や監獄襲撃から囚人たちの脱獄幇助、郊外の町や村からも人々を誘拐拉致をしている。

 今一番、帝国で頭のおかしい犯罪組織だ。

 そんな【ワンスモア】に勧誘を受けている……?
 
 本当の強さ……つまり私にスキルを与えるということか……、この侵入者たちの身のこなしもスキルによるものなのか。

 【大変革】が起こったのは私が赤ん坊の頃。つまり私にも何かしらのスキルはあったらしいが自覚する前に【大変革】で消え去った。

 私は世代的にスキルや魔物やステータスってものを知らない。

 でも、私は父からスキルというものがどんなものだったかを聞いている。旧セブン公国貴族だった父は、活動したり発信したりするほどではないにしろ根っこの部分はスキル至上主義者だった。

 だから私は――――。



 素直な気持ちを、侵入者に答える。

 スキルなんかなくても鍛えれば大抵の事はどうにでもなる、父も今はそういう思想を持っているし私も同じだ。

「このセブンスバーナーのリーシャ・ハッピーデイが、あなたたちのような無い物ねだりの落伍者どもと一緒に活動するなんて恥を晒せるわけがないでしょう。お馬鹿が過ぎますことよ。そんな頭の悪い活動の前に、もう少しお勉強をした方が良いですわよ」
 
 頭が回るようになってきて、調子よく煽りの言葉が出てくる。

 多少なりとも回復が出来た……けど。

「そうかいお嬢ちゃん、残念だ……。殺しはなしだ! このまま連れ去って使う! 頭以外は潰しても構わねえ!」

「「アイアイ、サー」」

 そう言って侵入者たちは構える。

 かなりまずい……、私は競技者であって軍人や傭兵や冒険者のような実戦を想定した訓練を行っていない。

 そりゃあ一般的な方々と比べれば、身体も鍛えているし攻撃手段なども持ち合わせてはいるけれど……実戦を想定して訓練を行っている者を実戦で相手にするほどの技量はない。競技の中なら半ベソかくまでボッコボコに出来るけど。

 だから、目標は逃げること。

 通報したいけど『携帯通信結晶』は更衣室に置いてきているし『置型通信結晶』のある事務室や休憩室に行くには階段を上ったりしなくてはならないので難しい。

 このままトレーニング場を出て、一番近い警察署か軍施設に保護を求めるのが一番現実的なはず。

 私は身体強化を用いて一目散に、トレーニング場の出口へと駆け出す。

 毎日二十キロ走ってんのよ。足の速さには自信がある。

「『御庭番』の機動力補正をなめんなってぇの!」

 そう言いながら凄まじい速さで、侵入者の一人が私の進行方向に回り込む。

 来たわね。

 私は獄炎魔法で魔法拳を作って、思いっきり殴り抜ける。

 魔法拳は魔力を拳に宿して、殴ったのと同時に魔法を発動させる。
 発動した魔法は対象物の内部へと浸透勁の要領で流し込むものだが『纒着結界装置』を発動していると、対象物の内部ではなく結界に沿って表面に流し込まれる。

 つまり全身が発火する。

 さらに獄炎魔法は、一度着火すると中々消えない。
 炎は結界を削り続ける。
 これが私の必勝パターンであり基本戦法。

 私が爆熱パンチャーたる所以である。
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