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第二部13・本質的に間違ってなくても悪行は悪行でしかない。【全10節】
10僕の物語における重要事項ではない。
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「え? ソフィアさん……?」
「あら、知り合い? このお嬢ちゃんを守るために私たちはこんな馬鹿田舎に跳ばされてきたのよ」
驚く僕にメリッサさんはあっけらかんと言う。
「え、ええ。さっき全帝の二回戦で戦った人です……なんかめちゃくちゃ強い人形を使って戦う研究者の人です」
「へえ、まあ私たちも正直全然よくわかってないのよね。ただあの子がヤバいもん造ってヤバい奴らに狙われるから、ほとぼりが冷めるまで田舎で匿って守れみたいな話しか聞いてないのよね」
メリッサさんは僕の話に淡々と返して。
「こんにちは、ソフィア・ブルームさん。私はメリッサ、この男の妻でこの子の母親。とりあえずは貴女の味方と考えてくれていいわよ」
笑顔でソフィアさんに自己紹介をする。
「は、はあ……あの私なにか不味いことしちゃったのでしょうか……? 私の研究に問題があったのでしょうか」
不安そうな顔でソフィアさんはメリッサさんとダイルさんに尋ねる。
「さあな、マジに俺らは割と帝国の言いなりだから全然詳細もわかってねーんだよ。ちょっと知りたいから見せてみろよ、問題なさげなら多分さっさと日常に戻れるだろうし」
あっけらかんと肩車したメルちゃんを揺らしながら、ダイルさんは言う。
不味いものって、あの人形のこと……だよな?
確かにめちゃくちゃ不自然ではあったし、人過ぎて奇妙だったけど……。
「はい……わかりました。でも先の試合で簡単な故障箇所があるのでちょっと修理してからですけど」
そう言ってソフィアさんは、試合でも見せた箱を武具召喚で喚び出して人形を取り出す。
壊れた脚を引っこ抜いて、新しい脚をはめ込んでいくつかの線を繋いだり調整を行って『予備魔力結晶』に魔力を注いでいく。
「よし、できた。起動シーケンスに入りますよ」
手際よく修理を終えて、ソフィアさんがそう言って三十秒の準備に入る。
「…………ねえ、あれって――」
人形の姿を見て、メリッサさんは少し考え込んで何かを言おうとしたところで。
「……? ギルドの訓練場か……? 場面が飛んでる……なんなんだ、わからん」
人形は血色の良い顔で、まるで人間のような流暢さで口を開いた。
「えー、これが残留思念魔力変換機構搭載型半自律行動戦闘用『自動人形』通称『赤』で――」
と、ソフィアさんが紹介をしようとしたところで。
「アカカゲ……よね、あんた」
「……? メリッサか? 髪が伸び……いや大人びたのか? ……ダメだ全然わからん。状況の説明を頼みたい」
メリッサさんは目を丸くして、人形……もといアカカゲ氏に呼びかけると。アカカゲ氏は無い眉毛を潜めてメリッサさんへと尋ね返した。
ここからメリッサさんは、アカカゲ氏にこの二十年のことをゆっくりと語った。
その後、烈火のごとく勢いでソフィアさんに殴りかかろうとするメリッサさんを僕とダイルさんとアカカゲ氏で止めたり。
落ち着きを取り戻したメリッサさんによる、ソフィアさん号泣のガチ説教だったり。
まあ色々あるが。
ぶっちゃけ僕にはピンとこないし関係がない。
どうにも、これはかなり衝撃的な出来事らしい。
でもこの出来事はきっと、メリッサさんたちの物語の延長線上にあるなんかしらの奇跡なんだろう。
僕の物語における重要事項ではない。
どちらかと言えばこの後、僕は準々決勝ギリギリまでメリッサさんとダイルさんとアカカゲ氏によって徒手空拳戦闘を仕込まれることになる方が重要なことだ。
ボッコボコに殴られて、こっちの打撃はメリッサさんやアカカゲ氏にかすりもしなかったが。
新魔法、負荷耐性硬化に関しては及第点を得られた。
まずは準々決勝。
地獄兎のラビット・ヒット選手との試合で、実用に足りえるかを試そうと思っていたが。
残念ながら、そんな機会は訪れず。
全帝国総合戦闘競技選手権大会は、過激派テロ組織【ワンスモア】によって襲撃を受け。
それどころじゃあなくなってしまったのだった。
「あら、知り合い? このお嬢ちゃんを守るために私たちはこんな馬鹿田舎に跳ばされてきたのよ」
驚く僕にメリッサさんはあっけらかんと言う。
「え、ええ。さっき全帝の二回戦で戦った人です……なんかめちゃくちゃ強い人形を使って戦う研究者の人です」
「へえ、まあ私たちも正直全然よくわかってないのよね。ただあの子がヤバいもん造ってヤバい奴らに狙われるから、ほとぼりが冷めるまで田舎で匿って守れみたいな話しか聞いてないのよね」
メリッサさんは僕の話に淡々と返して。
「こんにちは、ソフィア・ブルームさん。私はメリッサ、この男の妻でこの子の母親。とりあえずは貴女の味方と考えてくれていいわよ」
笑顔でソフィアさんに自己紹介をする。
「は、はあ……あの私なにか不味いことしちゃったのでしょうか……? 私の研究に問題があったのでしょうか」
不安そうな顔でソフィアさんはメリッサさんとダイルさんに尋ねる。
「さあな、マジに俺らは割と帝国の言いなりだから全然詳細もわかってねーんだよ。ちょっと知りたいから見せてみろよ、問題なさげなら多分さっさと日常に戻れるだろうし」
あっけらかんと肩車したメルちゃんを揺らしながら、ダイルさんは言う。
不味いものって、あの人形のこと……だよな?
確かにめちゃくちゃ不自然ではあったし、人過ぎて奇妙だったけど……。
「はい……わかりました。でも先の試合で簡単な故障箇所があるのでちょっと修理してからですけど」
そう言ってソフィアさんは、試合でも見せた箱を武具召喚で喚び出して人形を取り出す。
壊れた脚を引っこ抜いて、新しい脚をはめ込んでいくつかの線を繋いだり調整を行って『予備魔力結晶』に魔力を注いでいく。
「よし、できた。起動シーケンスに入りますよ」
手際よく修理を終えて、ソフィアさんがそう言って三十秒の準備に入る。
「…………ねえ、あれって――」
人形の姿を見て、メリッサさんは少し考え込んで何かを言おうとしたところで。
「……? ギルドの訓練場か……? 場面が飛んでる……なんなんだ、わからん」
人形は血色の良い顔で、まるで人間のような流暢さで口を開いた。
「えー、これが残留思念魔力変換機構搭載型半自律行動戦闘用『自動人形』通称『赤』で――」
と、ソフィアさんが紹介をしようとしたところで。
「アカカゲ……よね、あんた」
「……? メリッサか? 髪が伸び……いや大人びたのか? ……ダメだ全然わからん。状況の説明を頼みたい」
メリッサさんは目を丸くして、人形……もといアカカゲ氏に呼びかけると。アカカゲ氏は無い眉毛を潜めてメリッサさんへと尋ね返した。
ここからメリッサさんは、アカカゲ氏にこの二十年のことをゆっくりと語った。
その後、烈火のごとく勢いでソフィアさんに殴りかかろうとするメリッサさんを僕とダイルさんとアカカゲ氏で止めたり。
落ち着きを取り戻したメリッサさんによる、ソフィアさん号泣のガチ説教だったり。
まあ色々あるが。
ぶっちゃけ僕にはピンとこないし関係がない。
どうにも、これはかなり衝撃的な出来事らしい。
でもこの出来事はきっと、メリッサさんたちの物語の延長線上にあるなんかしらの奇跡なんだろう。
僕の物語における重要事項ではない。
どちらかと言えばこの後、僕は準々決勝ギリギリまでメリッサさんとダイルさんとアカカゲ氏によって徒手空拳戦闘を仕込まれることになる方が重要なことだ。
ボッコボコに殴られて、こっちの打撃はメリッサさんやアカカゲ氏にかすりもしなかったが。
新魔法、負荷耐性硬化に関しては及第点を得られた。
まずは準々決勝。
地獄兎のラビット・ヒット選手との試合で、実用に足りえるかを試そうと思っていたが。
残念ながら、そんな機会は訪れず。
全帝国総合戦闘競技選手権大会は、過激派テロ組織【ワンスモア】によって襲撃を受け。
それどころじゃあなくなってしまったのだった。
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