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第二部14・大義や誇りは必ずしも人を強くするわけではない。【全8節】

05かつての時代への憧れに蓋をした。

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 リーダー……? こいつが【ワンスモア】の?

 いや流石に……、ボスがこんな人前に出てくるなんてこと……よほど頭がイカれてないと………………。

 いや、イカれているんだった。
 じゃなきゃそもそもこんなことしていないんだから。

「僕たちは、この世界を在るべき姿に戻す準備がだいぶ整いましたー。それをね、みんなに教えるためにお邪魔しました」

 そのままナナシは語り出す。

「んで、もちろんこの会場も完全に包囲して封鎖しちゃってまーす。とりあえず、まあ正直ついでっちゃあついでなんですけど僕たちのこの場を借りようかなと」

 淡々と、軽薄な口調のままナナシは語り出す。

 ……まさかこいつ……っ、止めさせないと!
 くそ……っ、身体が思うように……っ。



 さらりと。
 私の頭の中にあったを、口にした。

 やられた……っ、最悪だ。
 私たちは【ワンスモア】が人工的なスキル再現をほぼ完成させていることを知っているし。

 それがどんな方法を用いているのかも、知っている。

 そして、何より。

 帝国全土における、の高さを知っている。

 私は子供の頃に『救命士』というスキルを持っていたが、ステータスウィンドウの文字が読めるようになってからすぐに【大変革】が起こった為に特にスキルの恩恵を感じたことがない世代だが。

 三十代以上の人間はスキルがあることを前提に教育も受けていたし、スキルに依存して生活をしていた人間もそれなりにいた。

 帝国は【大変革】以降に起きた魔力革命にフォーカスして魔動結社デイドリームと提携し様々な魔道具や魔動装置を開発しては広めてたり、無詠唱魔法や全系統魔法の使用方法などを教育に組み込んだり、スキルに頼らなくても問題がない生活水準を目指した。

 その甲斐あって、多くの帝国民はスキルなくても全然大丈夫だと結論付けることにした。

 でも、それは存在しないものをぐだぐだいっていても仕方がないから新技術に納得せざるを得なかっただけに過ぎない。

 多くの人間が潜在的にスキルへの憧れを持っている。

 ふとした瞬間に、ああこんな時『○○』があったら……『■■』の補正があれば……なんてことが頭に過ぎってしまう。

 帝国は魔力革命を重要視し、スキルと最悪の災害である魔物を同一のものとしている。
 魔物がいたからスキルがあった、スキルがあるから魔物と戦えた。
 魔物とスキルとステータスウィンドウがあったから、星の魔力は足りなかった。

 今のこの世界こそが、本来のこの世界の姿であると結論付けたんだ。

 だから帝国はスキル再現開発を禁止とした。

 世界をかつての世界にもどさないように。
 かつての世界は全部、神話やおとぎ話になるように。
 不自然で歪んだ理不尽な世界を、過去にした。

 人々はかつての時代への憧れに蓋をした。

 そんな人々が奥底に封じた蓋を……、今目の前のなんか真っ白なやつが外そうとしているのだ。

 全土放送は防げているのか……? 特殊任務攻略隊は動けているのか?

 少なくともこの場の人間には届いてしまった……、これだけの人数の言論統制は不可能だ……。

「ちなみに僕は今『鉄壁』のスキルを用いて、デモンストレーションがてら全帝ベスト8の彼女たちをさくっと畳んだわけだ」

 続けて観客たちの心を盛り上げるように、問いかける。

 プレゼンの材料として見事に使われたわけか……、こいつマジで必ずぶっ殺す。

「あれー? もしかして僕だけが特別だと思ったかい? 違うよ、それは違う――――」

 演技がかった口調で、もったいぶった言い回しから。

「――――僕らはみんな、平等にスキルを得られるんだ」

 気分の悪い満面の笑みでそう言ったのと同時に。

 同じような格好の様々な年齢の男女が、出現する。
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