347 / 377
第二部14・大義や誇りは必ずしも人を強くするわけではない。【全8節】
07世界最凶の後衛魔法使い。
しおりを挟む
「よし、基本的な動きだけでいい。ライラとウサ耳が前で捌け、ウサ耳は回避盾として自由に翻弄して、ライラが合わせろ。後ろは魔族のあんちゃんが主導で魔力感知、赤青はそれに合わせて火力を出せ。骨折マンは前から抜けてきた奴の迎撃に徹しろ。細かい位置取りと各スキルはわかり次第攻略法を共有するが、お相手さんにも聞かれてるもんだと思え」
淡々と、集まった面々に男は的確な指示を出す。
シンプルな役割……しかも各選手のスタイルに合わせたものだ。
いよいよ何者なんだ? 慣れすぎている……。
「あらら、なんかちゃんとした人来ちゃったな。シロウ君もどっか行っちゃったし……まあいいか、こっちもこっちでそういうの想定した編成だしね。やるよみんな!」
ナナシは陣形を組むこちらを見ながら、そういうと仲間たちも速やかに陣形を組む。
もちろん連携の訓練もしてきているか……、相手は相手でプロだぞ? 出来るのか、こんな寄せ集めで。
「よしわかった。前衛の女は『武闘家』だ。軽業系の職モノスキル、徒手空拳時に一番補正が入るが魔法適正に補正はほとんどない。あっても身体強化くらいしか無詠唱では使ってこないはずだ。あいつが突っ込んでくるのに合わせて後衛が防御魔法を張るのを攻撃魔法で剥がし続けろ、それだけで相手の火力はかなり落ちる」
相手の陣形を見て男が語る淡々とした分析と攻略に、前衛の女は驚きの表情を見せる。
何者かは知らないが【大変革】前の対人戦に明るいようだ、ここまではっきりスキルまで言い当てられるのは凄まじい練度だ。
そこからスキル効果や補正による超人的な【ワンスモア】の攻撃を捌いて潰していく。
うそでしょ……? いや流石に全員が全帝ベスト8以上の成績を取ったことのある選手だからそこそこ動けるし魔力量などもあるのは当然ではあるが。
連携がかたちになっている。
シンプルな役割と指示が、輝きまくっている。
いやマジに何者なんだ? なんでこの男、帝国軍に所属していないんだ。
完全に、私が彼らの連携に目を奪われていたところで。
「……しっ、私は帝国軍附属病院の医師パンドラ・クラックだ。今から治療をする」
戦火に紛れて、一人の女性が私に回復魔法を施す。
パンドラ・クラック……クラック?
ああそうか、クラック家の……!
第三騎兵団でも何度か見たことがある。
会場に来ていたのか……。
「申し訳ないが、私は衛生兵としての訓練は受けてはいるけど素人同然だ。当然君たちの作戦行動も隊員も掌握できていない、君と八極令嬢の回復したら君の仲間の救出に付き合ってもらう」
パンドラ医師は私を迅速に回復させながら、小声ながら堂々と語る。
この人はやはり根っこが帝国軍人だ。ガクラ・クラック閣下のお孫さんに当たるのだから当然なのだが。
「……民間人だけに任せることは出来ないでしょう、特にあの指示を出している男は競技者ですらないのだから」
私は回復を終えて、パンドラ医師に状況を伝える。
「大丈夫だ、あれはバリィ・バルーン。ライラちゃんのパパで…………ガクラじいじとクライス曰く、世界最凶の後衛魔法使いだ。あの親子はその昔、世界最強を泣かしたこともあるらしい」
パンドラ医師は不敵に笑いながら、男について語った。
が、ガクラ閣下はじいじと呼ばれているのか……、それはさておき。
バリィ・バルーン……結局名前と鉄壁天使ライラの父親ということまでしかわからないが。
世界最凶……? 主語が大きすぎる、何を持って世界で最たるとしているんだ?
よくわからんが、この状況で冗談は言わないだろう。
つまり、詳細は語れないがガクラ・クラックが認める実力者だということは理解した。
なんせパンドラ医師に気づいて、こちらに影響が出ないよう立ち回りを調整までしている。とんでもない技量だ。
バリィ氏が作ったこの隙に、私たちは迅速にキャロライン嬢の治療に向かう。
右腕が壊されていて、左の『融合装着型強化魔動左腕』もギリギリだ。『魔法融解結晶』として使うことは出来るが、思いっきり叩くのは厳しいかもしれない。
早急に右腕の『強化魔動義手』を、セカンドに付け替えたいが一人での付け替えが難しい。
何をするにもパンドラ医師の協力は必要不可欠だ。
軍医のパンドラ医師は、私の定義では巻き込んでも良い人間である。特殊任務攻略隊の解放と合流、さらに民間人の救出は急務だ。
援軍が来るまで持ちこたえる。
「……よし、気を失っているが治療は完了した。このまま西側入場口から格技場を出よう」
パンドラ医師はキャロライン嬢を担いで、立ち上がったところで。
「うーん、なかなかやるなぁ。時間稼ぎに注力されるのは面倒だ…………じゃあ、こういうのはどうかな?」
ナナシはそう言って、指を鳴らすと。
一斉に仲間たちが、観客席へと飛び掛かる。
最悪だ……っ!
こいつら、観客を狙って……っ。
私が身体強化をかけて『風爆半長靴』で飛び上がろうとした。
その時。
観客席に飛びかかった【ワンスモア】の連中が全員、叩き落とされる。
淡々と、集まった面々に男は的確な指示を出す。
シンプルな役割……しかも各選手のスタイルに合わせたものだ。
いよいよ何者なんだ? 慣れすぎている……。
「あらら、なんかちゃんとした人来ちゃったな。シロウ君もどっか行っちゃったし……まあいいか、こっちもこっちでそういうの想定した編成だしね。やるよみんな!」
ナナシは陣形を組むこちらを見ながら、そういうと仲間たちも速やかに陣形を組む。
もちろん連携の訓練もしてきているか……、相手は相手でプロだぞ? 出来るのか、こんな寄せ集めで。
「よしわかった。前衛の女は『武闘家』だ。軽業系の職モノスキル、徒手空拳時に一番補正が入るが魔法適正に補正はほとんどない。あっても身体強化くらいしか無詠唱では使ってこないはずだ。あいつが突っ込んでくるのに合わせて後衛が防御魔法を張るのを攻撃魔法で剥がし続けろ、それだけで相手の火力はかなり落ちる」
相手の陣形を見て男が語る淡々とした分析と攻略に、前衛の女は驚きの表情を見せる。
何者かは知らないが【大変革】前の対人戦に明るいようだ、ここまではっきりスキルまで言い当てられるのは凄まじい練度だ。
そこからスキル効果や補正による超人的な【ワンスモア】の攻撃を捌いて潰していく。
うそでしょ……? いや流石に全員が全帝ベスト8以上の成績を取ったことのある選手だからそこそこ動けるし魔力量などもあるのは当然ではあるが。
連携がかたちになっている。
シンプルな役割と指示が、輝きまくっている。
いやマジに何者なんだ? なんでこの男、帝国軍に所属していないんだ。
完全に、私が彼らの連携に目を奪われていたところで。
「……しっ、私は帝国軍附属病院の医師パンドラ・クラックだ。今から治療をする」
戦火に紛れて、一人の女性が私に回復魔法を施す。
パンドラ・クラック……クラック?
ああそうか、クラック家の……!
第三騎兵団でも何度か見たことがある。
会場に来ていたのか……。
「申し訳ないが、私は衛生兵としての訓練は受けてはいるけど素人同然だ。当然君たちの作戦行動も隊員も掌握できていない、君と八極令嬢の回復したら君の仲間の救出に付き合ってもらう」
パンドラ医師は私を迅速に回復させながら、小声ながら堂々と語る。
この人はやはり根っこが帝国軍人だ。ガクラ・クラック閣下のお孫さんに当たるのだから当然なのだが。
「……民間人だけに任せることは出来ないでしょう、特にあの指示を出している男は競技者ですらないのだから」
私は回復を終えて、パンドラ医師に状況を伝える。
「大丈夫だ、あれはバリィ・バルーン。ライラちゃんのパパで…………ガクラじいじとクライス曰く、世界最凶の後衛魔法使いだ。あの親子はその昔、世界最強を泣かしたこともあるらしい」
パンドラ医師は不敵に笑いながら、男について語った。
が、ガクラ閣下はじいじと呼ばれているのか……、それはさておき。
バリィ・バルーン……結局名前と鉄壁天使ライラの父親ということまでしかわからないが。
世界最凶……? 主語が大きすぎる、何を持って世界で最たるとしているんだ?
よくわからんが、この状況で冗談は言わないだろう。
つまり、詳細は語れないがガクラ・クラックが認める実力者だということは理解した。
なんせパンドラ医師に気づいて、こちらに影響が出ないよう立ち回りを調整までしている。とんでもない技量だ。
バリィ氏が作ったこの隙に、私たちは迅速にキャロライン嬢の治療に向かう。
右腕が壊されていて、左の『融合装着型強化魔動左腕』もギリギリだ。『魔法融解結晶』として使うことは出来るが、思いっきり叩くのは厳しいかもしれない。
早急に右腕の『強化魔動義手』を、セカンドに付け替えたいが一人での付け替えが難しい。
何をするにもパンドラ医師の協力は必要不可欠だ。
軍医のパンドラ医師は、私の定義では巻き込んでも良い人間である。特殊任務攻略隊の解放と合流、さらに民間人の救出は急務だ。
援軍が来るまで持ちこたえる。
「……よし、気を失っているが治療は完了した。このまま西側入場口から格技場を出よう」
パンドラ医師はキャロライン嬢を担いで、立ち上がったところで。
「うーん、なかなかやるなぁ。時間稼ぎに注力されるのは面倒だ…………じゃあ、こういうのはどうかな?」
ナナシはそう言って、指を鳴らすと。
一斉に仲間たちが、観客席へと飛び掛かる。
最悪だ……っ!
こいつら、観客を狙って……っ。
私が身体強化をかけて『風爆半長靴』で飛び上がろうとした。
その時。
観客席に飛びかかった【ワンスモア】の連中が全員、叩き落とされる。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
571
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる