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第二部16・世界では同時多発的に人生が動き続けているらしい。【全17節】
06勇者パーティの回復役だった男。
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キャミィも妊娠中だったので乱暴に取り押さえることが出来ずに、ジャンポールさんとブライさんと騒ぎに駆けつけたうちの父ガクラとクライスも素手で叩きふせられた。
その後、スノウさんは無事にユキノちゃんを出産してキャミィが育てつつ定期的にスノウさんにも会わせてすくすくと育って今に至る。
あれから十七年か……、二人とも私が取り上げた。
私は発育不全が祟って子供が出来なかったしパンドラがいるから出産を経験することのない人生だったから、産まれるべき生命が産まれてしっかりと育っているのが嬉しくてたまらない。
閑話休題。
『無効化』の私とパンドラ。
『聖域』のクライス。
『完全復元』のキャミィ。
それに付き添うかたちで父と母とジャンポールさんの七人は軍施設内に身を隠しました。
だが、しかし。
「カガッ――施設内に【ワンスモア】と思われ、ガガガッ、侵入者‼ 数五十以上! 総員戦闘、ガガッ! 各隊指揮に従い行動、ガガッ、よ‼ これは訓練ではない、繰り返、ガガガガッ、訓練ではない‼」
その日のうちに、施設内のスピーカーからそんな乱れた声で周知がされる。
軍施設に直接襲撃……? どれだけ自信があるのよ……。
「早いな。それと通信系に干渉を受けている。有線のスピーカーでこれなら『通信結晶』は使えんか……全体での連携はほぼ死んでいる状態……、なかなかやるじゃあないか」
父が冷静にぽつりと漏らしたところで。
爆音。
屋根が吹き飛んで瓦礫が降り注ぐが、父が身体強化で的確に跳ね除けたところで。
「――どうも【ワンスモア】です」
屋根が吹き飛んだことによって現れた夜空に浮かぶ、不届き者はそう言った。
ほぼ同時にジャンポールさんとシロウ君が飛び上がる。
「ははっ、俺のスキルは『鳥人』だ! 空中戦で俺に勝るわっきゃねえだろうが‼」
そう言いながら【ワンスモア】の男は高速飛行で二人を翻弄する。
確かに凄まじい動きだ。
浮遊魔法に風系統魔法を併用しても、ああはならない。
二人もやや手こずっている様子――――。
「クリア! パンドラ! 周りを警戒しろ‼ 囲まれているぞッ‼」
私たちが空中戦に目を奪われていたところを父が一括する。
慌てて視ると、微かだが人の姿が視える。
観察魔法と診察魔法と視力強化をしてギリギリ見える程度……、クロウさんが使う光学迷彩魔法とかよりも気配そのものを消しているような……。
間違いなく何かのスキル効果だ。本来なら視るだけでスキル特定まで出来るのだけれどそれも見えない……。
「見えないということが見えている、これは『隠蔽』や『透明』などのスキル効果だ。我々なら捉えられる、警戒を――」
「やあ、私がクライス・カイル=クラック。元々は『聖域』を持っていた」
父が説明していたところに、クライスがそう言いながら前に出る。
「く、クライス⁉ 何やってんのよ!」
私は驚きながらクライスに言うと。
「……大丈夫、これが私の戦い方、だぁっ⁉」
クライスは棍を構えながら返していたところに、ローキックを当てられる。
全く見えてないじゃない!
私は咄嗟に駆け寄ろうとしてしまったところを父に掴まれ。
「見ていろ、そして安心しろ。クライスは勇者パーティの回復役だった男だ、二十年前の段階でいえば徒手格闘だけならジャンポール以上だったんだぞ」
「「え?」」
父の言葉に私とパンドラがまぬけな声を上げたところで。
「がっ⁉」
ローキックを放った男が地面に叩きつけられる。
しかも接触と同時に麻酔魔法で眠らされて受け身も取れていない。
更に他の角度からの攻撃も一度受け、相手の場所を確認してから合気杖術の動きで麻酔魔法をかけて地面に叩きつける。
受けたダメージは同時進行で、自ら即時回復させている。
クライスがちゃんと戦っているところを出会ってから二十年で初めて見た。
こんなに強かったんだ……、クライスって。優秀な医師としての側面しか知らなかった。
その後、スノウさんは無事にユキノちゃんを出産してキャミィが育てつつ定期的にスノウさんにも会わせてすくすくと育って今に至る。
あれから十七年か……、二人とも私が取り上げた。
私は発育不全が祟って子供が出来なかったしパンドラがいるから出産を経験することのない人生だったから、産まれるべき生命が産まれてしっかりと育っているのが嬉しくてたまらない。
閑話休題。
『無効化』の私とパンドラ。
『聖域』のクライス。
『完全復元』のキャミィ。
それに付き添うかたちで父と母とジャンポールさんの七人は軍施設内に身を隠しました。
だが、しかし。
「カガッ――施設内に【ワンスモア】と思われ、ガガガッ、侵入者‼ 数五十以上! 総員戦闘、ガガッ! 各隊指揮に従い行動、ガガッ、よ‼ これは訓練ではない、繰り返、ガガガガッ、訓練ではない‼」
その日のうちに、施設内のスピーカーからそんな乱れた声で周知がされる。
軍施設に直接襲撃……? どれだけ自信があるのよ……。
「早いな。それと通信系に干渉を受けている。有線のスピーカーでこれなら『通信結晶』は使えんか……全体での連携はほぼ死んでいる状態……、なかなかやるじゃあないか」
父が冷静にぽつりと漏らしたところで。
爆音。
屋根が吹き飛んで瓦礫が降り注ぐが、父が身体強化で的確に跳ね除けたところで。
「――どうも【ワンスモア】です」
屋根が吹き飛んだことによって現れた夜空に浮かぶ、不届き者はそう言った。
ほぼ同時にジャンポールさんとシロウ君が飛び上がる。
「ははっ、俺のスキルは『鳥人』だ! 空中戦で俺に勝るわっきゃねえだろうが‼」
そう言いながら【ワンスモア】の男は高速飛行で二人を翻弄する。
確かに凄まじい動きだ。
浮遊魔法に風系統魔法を併用しても、ああはならない。
二人もやや手こずっている様子――――。
「クリア! パンドラ! 周りを警戒しろ‼ 囲まれているぞッ‼」
私たちが空中戦に目を奪われていたところを父が一括する。
慌てて視ると、微かだが人の姿が視える。
観察魔法と診察魔法と視力強化をしてギリギリ見える程度……、クロウさんが使う光学迷彩魔法とかよりも気配そのものを消しているような……。
間違いなく何かのスキル効果だ。本来なら視るだけでスキル特定まで出来るのだけれどそれも見えない……。
「見えないということが見えている、これは『隠蔽』や『透明』などのスキル効果だ。我々なら捉えられる、警戒を――」
「やあ、私がクライス・カイル=クラック。元々は『聖域』を持っていた」
父が説明していたところに、クライスがそう言いながら前に出る。
「く、クライス⁉ 何やってんのよ!」
私は驚きながらクライスに言うと。
「……大丈夫、これが私の戦い方、だぁっ⁉」
クライスは棍を構えながら返していたところに、ローキックを当てられる。
全く見えてないじゃない!
私は咄嗟に駆け寄ろうとしてしまったところを父に掴まれ。
「見ていろ、そして安心しろ。クライスは勇者パーティの回復役だった男だ、二十年前の段階でいえば徒手格闘だけならジャンポール以上だったんだぞ」
「「え?」」
父の言葉に私とパンドラがまぬけな声を上げたところで。
「がっ⁉」
ローキックを放った男が地面に叩きつけられる。
しかも接触と同時に麻酔魔法で眠らされて受け身も取れていない。
更に他の角度からの攻撃も一度受け、相手の場所を確認してから合気杖術の動きで麻酔魔法をかけて地面に叩きつける。
受けたダメージは同時進行で、自ら即時回復させている。
クライスがちゃんと戦っているところを出会ってから二十年で初めて見た。
こんなに強かったんだ……、クライスって。優秀な医師としての側面しか知らなかった。
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