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第二部16・世界では同時多発的に人生が動き続けているらしい。【全17節】
14三十人。
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勇者パーティに武術指南をした元冒険者の魔法学校の教員である、バリィ・バルーンさん。
それと大盾を持って一緒に乱入したのは娘のライラちゃんだ。
「バリィがいるなら、とりあえず選手から死人は出なさそうね」
淡々とお茶をすすりながらメリッサは言う。
確かに。
バリィさんは、世界で唯一あの極悪非道世界最強糞野郎に一矢報いた男だ。
単純な戦闘能力は決して最強とはいえない、多分格闘戦だけで言うなら俺の方が強い。
でも、勝利条件を達成する為の攻略能力は世界で一番だ。
多分やろうと思えば帝国すら落とせる、世界最強に一矢報いるのはそのくらいの偉業だと思う。
そんな分析と攻略の鬼が、選手たちを上手く使って【ワンスモア】の人工スキル持ちを捌いていく。
寄せ集めで……、やっぱすげえな。
だが、業を煮やした【ワンスモア】は観客への攻撃に移った瞬間に。
軍が到着して、一気に形勢が逆転する。
しかし。
【ワンスモア】の白い奴は『無効化』を攫うと言って、ライラちゃんを連れ去り消えた。
ゾッとした。
いや、もちろん赤ん坊の頃から知っている女の子がテロリストに拉致された危機感も覚えたが。
あいつら……、マジで誰の子に手を出したと思ってるんだ?
バリィさんのライラちゃん愛は凄まじい。
昔からとんでもなく愛していて命をかけていたが、第二子が妊娠中にタチの悪い感染症で流れてしまってから。
さらにバリィさんはライラちゃんを大事にするようになった。
ライラちゃんはバリィさんとリコーさんの全てだ。
あいつらは、世界最凶に一番売っちゃならない喧嘩の売り方をした。
もう【ワンスモア】は終わりだ。おつかれ。
「これで【ワンスモア】は、結構ガチ目に動いてくるってのがわかったし。ソフィアちゃんの護衛も気合い入れないとね。とりあえず、また山に遊び行ってるらしいから連れ戻してくるね」
飲み終わった湯呑みを置きながらメリッサはそう言って、転移魔法で跳んだ。
「気を引き締めるのはおまえらもだぞ……【ワンスモア】は有用だったり稀少なスキルを持っていた人間を狙っている。おまえらの『万能武装』と『勇者』は確実に狙われるぞ」
メリッサが消えてから、老兵の一人が静かに言う。
「心配ご無用だよ。強いぜ? うちの女房は」
俺はにやりと笑いながら返した。
そこから、ソフィア嬢を部屋に押し込んで俺とメリッサで交互に付きっきりで護衛をした。
老兵部隊も俺たちの護衛に付いた。
そしてメルがぐっすり眠る、真夜中。
「来た……、囲まれてるよ」
メリッサはメルを起こさないよう静かな声で言った。
俺は何も言わずに駐在所の外に出る。
「おお? おいおいこれ『万能武装』じゃね? まさか人形遣いを攫いに来たら、とんでもねえ当たりを引いたぞ!」
部隊長っぽいやつが、俺を見て嬉々として言う。
見事に『映像通信結晶』で見たのと同じ格好。
こいつらが【ワンスモア】だ。
もっと隠密行動で、こっそり攫いに来ると思ったが堂々と来たな……いや陽動か? どちらにしろ中にはメリッサがいるので問題はないが。
まあ人工スキルを用いて派手に暴れるってことも目的の一つなのだろう。
スキルや魔物との戦いの日々に追憶する人々は少なくない。
少なくともメルに意地悪をしかけてきたような奴らも、根本的にはこいつらと同じ。
今に不満があるから、そんなクソみてえなことをするんだ。
そんな馬鹿に、俺が負けるわけがねえ。
全員ぶっ飛ばす。
俺の目から炎が揺れるが、心は平らに、冷静に状況を把握する。流れを汲む。
目視で十一人……建物の陰に四人の気配、駐在所の裏手にも同じくらい居るんだろう。
ざっくり見積もって、三十人。
さあ、久しぶりに暴れ散らかすか。
それと大盾を持って一緒に乱入したのは娘のライラちゃんだ。
「バリィがいるなら、とりあえず選手から死人は出なさそうね」
淡々とお茶をすすりながらメリッサは言う。
確かに。
バリィさんは、世界で唯一あの極悪非道世界最強糞野郎に一矢報いた男だ。
単純な戦闘能力は決して最強とはいえない、多分格闘戦だけで言うなら俺の方が強い。
でも、勝利条件を達成する為の攻略能力は世界で一番だ。
多分やろうと思えば帝国すら落とせる、世界最強に一矢報いるのはそのくらいの偉業だと思う。
そんな分析と攻略の鬼が、選手たちを上手く使って【ワンスモア】の人工スキル持ちを捌いていく。
寄せ集めで……、やっぱすげえな。
だが、業を煮やした【ワンスモア】は観客への攻撃に移った瞬間に。
軍が到着して、一気に形勢が逆転する。
しかし。
【ワンスモア】の白い奴は『無効化』を攫うと言って、ライラちゃんを連れ去り消えた。
ゾッとした。
いや、もちろん赤ん坊の頃から知っている女の子がテロリストに拉致された危機感も覚えたが。
あいつら……、マジで誰の子に手を出したと思ってるんだ?
バリィさんのライラちゃん愛は凄まじい。
昔からとんでもなく愛していて命をかけていたが、第二子が妊娠中にタチの悪い感染症で流れてしまってから。
さらにバリィさんはライラちゃんを大事にするようになった。
ライラちゃんはバリィさんとリコーさんの全てだ。
あいつらは、世界最凶に一番売っちゃならない喧嘩の売り方をした。
もう【ワンスモア】は終わりだ。おつかれ。
「これで【ワンスモア】は、結構ガチ目に動いてくるってのがわかったし。ソフィアちゃんの護衛も気合い入れないとね。とりあえず、また山に遊び行ってるらしいから連れ戻してくるね」
飲み終わった湯呑みを置きながらメリッサはそう言って、転移魔法で跳んだ。
「気を引き締めるのはおまえらもだぞ……【ワンスモア】は有用だったり稀少なスキルを持っていた人間を狙っている。おまえらの『万能武装』と『勇者』は確実に狙われるぞ」
メリッサが消えてから、老兵の一人が静かに言う。
「心配ご無用だよ。強いぜ? うちの女房は」
俺はにやりと笑いながら返した。
そこから、ソフィア嬢を部屋に押し込んで俺とメリッサで交互に付きっきりで護衛をした。
老兵部隊も俺たちの護衛に付いた。
そしてメルがぐっすり眠る、真夜中。
「来た……、囲まれてるよ」
メリッサはメルを起こさないよう静かな声で言った。
俺は何も言わずに駐在所の外に出る。
「おお? おいおいこれ『万能武装』じゃね? まさか人形遣いを攫いに来たら、とんでもねえ当たりを引いたぞ!」
部隊長っぽいやつが、俺を見て嬉々として言う。
見事に『映像通信結晶』で見たのと同じ格好。
こいつらが【ワンスモア】だ。
もっと隠密行動で、こっそり攫いに来ると思ったが堂々と来たな……いや陽動か? どちらにしろ中にはメリッサがいるので問題はないが。
まあ人工スキルを用いて派手に暴れるってことも目的の一つなのだろう。
スキルや魔物との戦いの日々に追憶する人々は少なくない。
少なくともメルに意地悪をしかけてきたような奴らも、根本的にはこいつらと同じ。
今に不満があるから、そんなクソみてえなことをするんだ。
そんな馬鹿に、俺が負けるわけがねえ。
全員ぶっ飛ばす。
俺の目から炎が揺れるが、心は平らに、冷静に状況を把握する。流れを汲む。
目視で十一人……建物の陰に四人の気配、駐在所の裏手にも同じくらい居るんだろう。
ざっくり見積もって、三十人。
さあ、久しぶりに暴れ散らかすか。
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