0.3%未満の悪魔~Why are you here?~

ラディ

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0.3%未満の悪評

7:伝播する

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 一応、俺の中にある完璧では作れたが……どうだろう。俺も食って確かめるか……。

「…………っう……………………っまあ……! なんすかこれ……え、これ祭りで出すんすか?」

 一気に焼きそばをかき込んだロメオが目を輝かせながら感想を述べる。

「そりゃ出すだろ、全部この船の中で作られた食材だからコスト的にも問題ねえし…………。お、うめーな。久しぶりに作ったが」

 俺はロメオに答えつつ麺をすすり、味を確かめる。

 うん、全然問題ないな。オートマトンよりまずいってことはなさそうで安心した。

「すんませんもう一皿貰っていいですか……?」

「ああ食え食え、つーかまだまだ焼くから持って帰って家族にも食わせろ。とりあえず今は麺四百五十グラムに肉と野菜合わせて計七百五十グラム……大体三人前でこんな感じならプレートの大きさ的に十人前は行けるな」

 催促するロメオの皿に焼きそばを盛り付けながら、おおよそ目測を立てる。

 一回最大キャパでも回して置きたいからな、十人前くらいなら食えるだろ。若いのもいるし。

「祭りが十七時半から二十時半まで三時間だから…………最低六百食か」

 俺はどんぶり勘定で仕入れの量を出す。

「え、ずるずる、いや師匠流石にそんな出ないですよ。ずるずる、三時間で六百って三分半で一個のペースで売り続けることになるんすよ? ずるずる、神社の祭りにそんな来場者もいないですし多く見積もって半分……いや百も出ないんじゃないすか……? ずるずるずるずる」

 めちゃくちゃ焼きそばをすすりながらロメオが冷静に語る。

 確かに……、マザーにハマった後くらいの稼働率を想定していたがあんな忙しくはならんと考えるのが普通か。

 でもまあ全然足りないってのは避けたい。
 突発というか思いつきでの参加だが、遊びではない。
 料理人として本気で店を出す以上、こっちも全力で行く。

「まあ余ったら俺らの覚醒期間が三食焼きそばになるだけだ。とりあえず六百は準備しとくぞ」

 俺はそう言って、追加で十人前の焼きそばを作り始めた。

 ウスターソースの調合の意図やら焼きや蒸しの時間やお茶の風味やらの効果をロメオに説明したり。
 食材と当日使うであろう大型のクーラーボックスや無人支払い端末やカラトリー類を注文しておく。
 調理専用のオートマトンも買うか迷ったが、まだ次の店の物件も決まってねえし出店のために買うのも面倒くさい。

 メニューが焼きそば一品だけだし別にオートマトン使うまでもないだろ。
 基本的に俺が焼き場についてロメオが仕上げて提供の流れで、いい感じのところで交代してロメオにも焼きそばを作らせる感じを想定している。

 これで料理人という仕事をざっくりと体験させられる。

 ロメオのやる気は報われていい。
 船のシステムエラーなんてイレギュラーで折れる必要はない。

 決断は納得の先で行われるべきだ。
 辞めるにしても続けるにしても、納得が必要。
 俺は形式上、師匠だ。
 これも俺の役割ではある。

 そして数日の後、祭り当日。

 電熱プレートと無人支払い端末を運んで屋台に設置して、クーラーボックスにぶち込んだ下拵えした材料も運んだ。

 俺の所有するオートマトンは全部焼けたので人力で行った。
 オートマトンをレンタルしても良かったが、俺もロメオも操作技術なんてないし調理専用じゃないオートマトンに食材や調理器具を触らせたくなかった。
 ロメオが隠れマッチョなのと、俺が最近ちょっと運動していたので何とかなった……。

 ステージで神主やら町内会長の挨拶やらが行われて祭りが始まる。

 太鼓の音と共に、スピーカーからは『炭坑節』やら『火の国太鼓』やら『二十一世紀音頭』とやらの盆踊り楽曲が流れてステージ周りをこの辺のガキンチョたちが踊っている。

 すんげえジャパンっぽいな……、神主がジャパンの人間なんだろうな。ジャパンの言葉は流石にちょっとしかわからんから歌詞の意味は全然わからんがかなり雰囲気は出ている。

 他の出店からも焼き鳥やら焼きとうもろこしやらの匂いが漂っている。
 匂いからするに……俺のレシピは使われてないみたいだな、確かに俺のレシピだとタレやらに若干制作コストがかかるし調理専用のオートマトンが必要だからな。市販のタレや肉をそのまま提供した方が楽だし、十分美味しい。

 でもそうか…………ふむ。

「届けてきましたよ。いやー暇……っすね、やっぱ火事の悪評が響いてるのかな……」

 自治会テントに焼きそばの差し入れを十人前届けてきたロメオが帰ってきて、屋台の様子を見て言う。

「…………やばいなこれ」

 思案していた俺は、端的にロメオへと返す。

「やっぱり六百は多かったんじゃないですか……? こんなに良い機会をいただいたのに……やっぱり俺が火事を起こしたせいで……」

 大型クーラーボックスを軽く叩きながら眉をひそめてロメオが言うが。

「いや……こりゃあフル稼働になるぞ」

「へ?」

 俺の答えに、ロメオがマヌケな声を漏らしたところで。

「あれ、人が作ってんの? へー! 一皿貰おうかな」

 本日の客第一号がやってくる。

 俺は即座に電熱プレートで野菜を炒め始める。

「ありがとうございます! 少々お待ち下さい!」

 ロメオは嬉しそうに客に返す。

 接客に関してロメオは最低限学校で習っている、まあ今回は祭りだ。元気な若者がハキハキ答えていりゃあ問題はない。

 数分で焼きそばを炒めて、一皿盛ってロメオに渡す。
 ロメオは削り節と青のりをまぶしてカラトリーと共に手渡す。

 とりあえず一人……、ぼちぼち始まるな。

「……っ! うま……っ、は? なんだこれ……」

 手渡された焼きそばをすすったところで、驚愕して呟く。

「焼きそば二つ…………あれ? もしかしてエルバンの……?」

 焼きそばを食べている客を尻目に客第二号となる一組のカップルがやってくる。

「はい! エルバンの焼きそばですよ! ありがとうございます!」

 ロメオは元気よくそう返しながら、焼きそばの仕上げを行って手渡す。

「――――うんんんん………………っまぁぁ! これ……っ、え? 美味すぎるぞ……」

「は――――――…………うますぎる……語彙が……とぶ」

 カップルが焼きそばを食って、大喜びする。

 やっぱそうか……そうなるわな。
 一旦、喜んでもらえて嬉しいとか有り難いとか料理人冥利に尽きるとかは置いておく。

 今はそれどころじゃあない。

「おい焼きそばがヤバいらしいぞ、自治会テントで大騒ぎになってる」

「エリック・エルバン……? はぁ? 教科書の……? なんで縁日に?」

「やべぇ……美味すぎて涙出てきた」

「マジかよ……昔は店の予約が人類滅亡後まで埋まってたって話だったのが……縁日で……?」

「焼きそばってこうなんのかよ……嘘だろ?」

「やっべえ! ちょっと弟にも知らせるわ!」

「もしもし? 祭り! 焼きそばがすげぇんだよ!」

 なんて、大好評による大盛況が起こる。

 美味いものは伝播する。
 発見されたら、一気に広がっていく。
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