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28・可愛いだけの妹が、ついに追放されるみたいですよ。【全3話】
02私は今幸せよ。
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別に私たちは剣術はおろか格闘技のような、そういった技術を一度も学んだこともなければ興味を持ったことすらない。
例えあんなに大きな剣があったとして、人を殺す狂気を持っていたとして、あんなに大きな金属製の刃物を持ち上げることすら出来ないはずなのだ。
「……マリシュカ、あなたその剣どうしたの?」
私は疑問をそのまま口にしていた。
「ああこれ? いいでしょ。うちの倉庫に眠ってたのをたまたま見つけたのよ、触った途端に刀の記憶が頭に流れ込んできてね、使い方というか斬り方とか全部理解できて、力持ちになったの。それにこれこんなに小さくなるのよ! すごいでしょ!」
嬉々としてそう言うと、背丈を優に超えるほどの長さだった刀剣が、手のひらに乗るほど鍵のように小さくなった。
超常現象、いや怪奇現象だ。
そんなとんでもないものがずっとうちの倉庫にあったのか。
私は今完全に冷静な思考が失われている。
目の前で妹が、父や母や婚約者を含む大勢の命を奪い。
大きな刀剣が現れ、振られ、縮み。
血溜まりの中でへたれこんでいるこの状態で、冷静な思考能力など維持出来る方がどうかしている。
悲しみや恐怖や怒り、様々な感情がひとつのドアに詰まって出て来れなくなったように。まだ表に出て来れないのだ。
だからだろうか、私は今の状況に普段なら思いつかないような荒唐無稽すぎる仮説を立ててしまった。
「マリシュカ、あなたその剣に操られてない?」
いやだって、それしかないでしょうこれ。
おかしなことになり過ぎてる。
さっきの説明も、可愛い可愛い言われるのが嫌だったのはわかったけど、それで大量殺人を行う理由には一個もならない。
どこまで追い詰められていたとしても、もっとやり方はあったはずだ。
この子は頭が悪くない、頭がおかしくなったところでこんなに頭が悪くなるとは思えないのだ。
「どうなんだろ、そうなのかもね。でもなんかもうどうでもいいじゃない、これがあれば私を強制するものは何も無くなるのよ」
マリシュカは目を鈍く輝かせて笑う。
変わり果てた妹の姿に私はこれ以上かける言葉が見つからなかった。
その時。
「……なっ! なんだこれは! 一体何が起こったんだ!」
「ひ、酷すぎる……、人の仕業なのか……?」
「生存者二名確認!」
パーティー会場に次々と兵士が入って来る。
逃げ出した人々が助けを求め呼んだのだろう。
「君たち怪我はないか? すぐにこんなところ出よう、一体何が起こったんだ……? こんな可愛い子を巻き込んで――」
あ。
気づいた時には兵士の首は跳んでいた。
その光景に一瞬全員が目を奪われたが。
「…………抜刀ッ! 戦闘態勢! 必ず捕らえろ!」
と、すぐに兵士の方々は剣を抜き、マリシュカに対峙する。
流石兵士だ。
切り替えが早い。
「あははははははははははははは‼ ははははは‼ ははは――――――――――――――っはははあはははははははは‼」
マリシュカはその様子を見て大笑いする。
「見て! 姉さん! 彼らの顔を! 私のことが怖くて堪らないんだ! こんなに幸せなことはないわ!」
嬉々としてマリシュカは私に伝える。
「……ふざけおって、総員油断するな! 全力で行くぞ!」
兵士の隊長さんらしき人が、部下を鼓舞する。
「あー、笑った。もういいや、姉さん私行くね」
マリシュカは兵士たちをまるで気にすることなく、学園内でばったり顔を合わせて立ち話に花が咲いた時のように、さらりと別れを告げる。
「姉さんは、ただの一度も私に可愛いって言わなかったよね。姉さんがどう思ってたのかは知らないけど、私はそれにとても救われてたの、ありがとうね。でも、もうお別れみたい」
マリシュカは血だらけの手で私の頬を撫でて。
「姉さん、私は今幸せよ」
そう言った。
なにか返事をしようとすると。
間髪入れずに。
「かかれぇ――――――――――――――――――ッ‼」
と、兵士たちが一斉にマリシュカに襲いかかる。
例えあんなに大きな剣があったとして、人を殺す狂気を持っていたとして、あんなに大きな金属製の刃物を持ち上げることすら出来ないはずなのだ。
「……マリシュカ、あなたその剣どうしたの?」
私は疑問をそのまま口にしていた。
「ああこれ? いいでしょ。うちの倉庫に眠ってたのをたまたま見つけたのよ、触った途端に刀の記憶が頭に流れ込んできてね、使い方というか斬り方とか全部理解できて、力持ちになったの。それにこれこんなに小さくなるのよ! すごいでしょ!」
嬉々としてそう言うと、背丈を優に超えるほどの長さだった刀剣が、手のひらに乗るほど鍵のように小さくなった。
超常現象、いや怪奇現象だ。
そんなとんでもないものがずっとうちの倉庫にあったのか。
私は今完全に冷静な思考が失われている。
目の前で妹が、父や母や婚約者を含む大勢の命を奪い。
大きな刀剣が現れ、振られ、縮み。
血溜まりの中でへたれこんでいるこの状態で、冷静な思考能力など維持出来る方がどうかしている。
悲しみや恐怖や怒り、様々な感情がひとつのドアに詰まって出て来れなくなったように。まだ表に出て来れないのだ。
だからだろうか、私は今の状況に普段なら思いつかないような荒唐無稽すぎる仮説を立ててしまった。
「マリシュカ、あなたその剣に操られてない?」
いやだって、それしかないでしょうこれ。
おかしなことになり過ぎてる。
さっきの説明も、可愛い可愛い言われるのが嫌だったのはわかったけど、それで大量殺人を行う理由には一個もならない。
どこまで追い詰められていたとしても、もっとやり方はあったはずだ。
この子は頭が悪くない、頭がおかしくなったところでこんなに頭が悪くなるとは思えないのだ。
「どうなんだろ、そうなのかもね。でもなんかもうどうでもいいじゃない、これがあれば私を強制するものは何も無くなるのよ」
マリシュカは目を鈍く輝かせて笑う。
変わり果てた妹の姿に私はこれ以上かける言葉が見つからなかった。
その時。
「……なっ! なんだこれは! 一体何が起こったんだ!」
「ひ、酷すぎる……、人の仕業なのか……?」
「生存者二名確認!」
パーティー会場に次々と兵士が入って来る。
逃げ出した人々が助けを求め呼んだのだろう。
「君たち怪我はないか? すぐにこんなところ出よう、一体何が起こったんだ……? こんな可愛い子を巻き込んで――」
あ。
気づいた時には兵士の首は跳んでいた。
その光景に一瞬全員が目を奪われたが。
「…………抜刀ッ! 戦闘態勢! 必ず捕らえろ!」
と、すぐに兵士の方々は剣を抜き、マリシュカに対峙する。
流石兵士だ。
切り替えが早い。
「あははははははははははははは‼ ははははは‼ ははは――――――――――――――っはははあはははははははは‼」
マリシュカはその様子を見て大笑いする。
「見て! 姉さん! 彼らの顔を! 私のことが怖くて堪らないんだ! こんなに幸せなことはないわ!」
嬉々としてマリシュカは私に伝える。
「……ふざけおって、総員油断するな! 全力で行くぞ!」
兵士の隊長さんらしき人が、部下を鼓舞する。
「あー、笑った。もういいや、姉さん私行くね」
マリシュカは兵士たちをまるで気にすることなく、学園内でばったり顔を合わせて立ち話に花が咲いた時のように、さらりと別れを告げる。
「姉さんは、ただの一度も私に可愛いって言わなかったよね。姉さんがどう思ってたのかは知らないけど、私はそれにとても救われてたの、ありがとうね。でも、もうお別れみたい」
マリシュカは血だらけの手で私の頬を撫でて。
「姉さん、私は今幸せよ」
そう言った。
なにか返事をしようとすると。
間髪入れずに。
「かかれぇ――――――――――――――――――ッ‼」
と、兵士たちが一斉にマリシュカに襲いかかる。
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