お嬢様たちは、過激に世界を回していく。

ラディ

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29・大嫌いな婚約者がなかなか婚約破棄をしないので、困らせてやることにしました。【全4話】

01私は彼が嫌いだ。

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 私、タンディ・ドイルはドイル侯爵家のいわゆる侯爵令嬢でございます。

 幼き頃より勉学だけではなく音楽や芸術なども学び、侯爵令嬢として教養きょうようと社交性を身につけてきました。

 侯爵家は五爵の中でも公爵家に次いでくらいが高い。
 ゆえに私は、侯爵家の名に恥じぬよう努力をみ重ねて参りました。

 私には兄がおりますので、侯爵の位をぐのは兄上となります。
 そうなると私は他の貴族、もしくは王族に嫁ぐことになるのです。

 侯爵家に見合う家柄の殿方とのがたの元へ嫁ぐこととなる。

 

 ですが、去年父上が私の婚約者となる殿方とのがたを連れてきました。
 その殿方とのがたは、王族でも公爵家でも侯爵家でも伯爵家ですらなく子爵ですらない、だったのです。

 彼はその年に男爵の位を得たばかりの新米貴族である、ジョー・ワタナベ男爵であった。

 私はおどろいてしまいました。

 私はその時十七歳、彼は二十代も半ばで年齢もやや離れていたし、なによりドイル侯爵家の人間が、男爵家に嫁ぐのは爵位に違いがありすぎる。

 彼の前では出来るだけ顔には出さないようにつとめ、その晩に私は父上にどういうことなのか問いました。

 すると父は嬉々ききとして語り出す。

 彼は天才だ。
 これからの文明開化や技術発展は彼を筆頭ひっとうに行われるだろう。
 彼の発明が評価され文明開化派筆頭ひっとうであるエンデスヘルツ公爵の推薦すいせんで爵位を得た超新星だ。
 彼はこれからの時代を作る、その為に力を貸してやってくれ。

 と、力説に押され私はジョー・ワタナベ男爵の婚約者になったのでした。

 そこから月に何度か、多い時は週に一度程度ていど、私は彼と逢瀬おうせを重ねました。
 実際に彼と話して、彼と時間を共有して、私は確信しました。

 

 ここまで言うからには理由があります。

 なんといいますか、彼には貴族としての教養きょうようといいますか、マナーを知らないといいますか。

 例えば食事の席で私との会話よりも頭の中の設計図に夢中で、上の空であったり。

 突然紙とペンを広げて計算を始めてしまったり。

 技術者としては優秀なのかもしれませんが、貴族としてはありえない行動です。

 それだけではなく、彼は頭が良いはずなのに、一般的な常識にうとすぎるのです。

 貴族の派閥はばつや自国の王族、歴史などに関して、ほとんど何も知らないのです。

 数年前まで異世界で暮らしていて突然この世界に現れたとかでないと説明がつかないくらいに、話が噛み合わない。

 婚約者というのに逢瀬おうせを重ねても指一本触れてこない、それはまあ有難ありがた反面はんめんまるで私に魅力がないと馬鹿にされているようでした。
 なんといいますか彼は私を淑女しゅくじょではなく子供あつかいしているふしがあります。年齢もやや離れているとはいえ、私は子供ではありません。

 名前も変だし。
 何、ワタナベって。どこの生まれなのよ。
 それ私が嫁いだら私もワタナベになるってことじゃない。変な名前になってしまうじゃない。

 非常識で、無知で、変な名前。

 嫌う理由は十分なのです。
 正直、嫁ぎたくはないというのが本音です。タンディ・ワタナベにはなりたくありません。

 ですが、父上のワタナベ男爵への入れ込みようやエンデスヘルツ公爵のお墨付きもあり、私から婚約の破棄はきを持ち出すのは難しい。

 なので私は。

 

 無茶な要求を繰り返して、困らせて、向こうから私をあきらめてもらうのです。

 さて今日の逢瀬おうせも、早速困らせてやろうと思います。

 男爵が馬車でむかえに来た際に、必ずこう聞きます。

「さあタンディ嬢、今日はどうしますか?」

 逢瀬おうせの際に殿方とのがたがある程度ていどプランニングしてくるというマナーなど彼にはないので、必ず私に何をしたいか聞いてくるのです。

 私はここで無茶なリクエストをする。
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