お嬢様たちは、過激に世界を回していく。

ラディ

文字の大きさ
114 / 132
30・聖女は教会に入った泥棒に、盗まれてみることにしました。【全4話】

04こんな言葉に価値はない。

しおりを挟む
 いびつに痛々しい傷跡きずあとが、不自然な直線で造られた十字の形に突き出している。

 狂っている。

 こんなもの埋め込んでも、痛いだけだろ。
 下手したら死んでしまう。

 ちょっと考えればわかるだろ、神なんかいやしないんだから。

 これは教会の人間が、使

 いや実際に信仰心しんこうしんからこれを行っている人間も居るんだろう。

 そうじてイカれている。

 ティーンエイジャーを徹底的に隔離かくりし、知識をあたえず常識じょうしきうざい、信仰心というくさで教会にしばり、無知な少女を生きた金庫にする。

 泥棒野郎が自分を棚に上げて、適当にぶっこいてた十人十色だとかそうだとか相対的だとかティーンエイジャーをけむに巻くだけの与太話よたばなしも全部無視して言わせてもらう。つーかあれは嘘だ、嘘つきは泥棒の始まりだからな。

「……そもそもここに普通なんか一個もねえ、この国の信仰心はゴミクズ以下だ」

「…………?」

 俺のつぶやきに、聖女は疑問符ぎもんふを浮かべる。

 がらにもなく、いきどおりをあらわにしてしまう。
 この国になんの関係もない泥棒風情ふぜいが、聖女に同情してしまう。

 いや関係ないからこそ思えたことなのかもしれない。

 しかして俺は革命家でもましてや正義の味方なんてものではない、ただの泥棒だ。

 俺が出来るのは侵入と盗みと逃亡、そして嘘をつくことだ。

 目の前に目的のお宝がある。
 やることはひとつだ。

「実は俺は神の使いだ。ホープ・ロックハート、おまえに神の啓示けいじを伝えに来た」

 ふてぶてしく、不敵ふてきに言い放つ。

「俺と来い。おまえの普通はこんなところにない」

 俺はこうして教会から、この国の信仰を盗み出すことに成功した。

 さて、俺が彼女を抱きこの国からさっさとトンズラこいたところで黄金のロザリオを盗んだ話とこの国から聖女が消えた話はおおよそおしまいである。

 その後のことをいて語るなら、俺は俺が知りうる最高の腕を持つ医者にホープから黄金のロザリオを取り出してもらうようにたのんだ。

 その医者は変わり者で、何年も旅をして魔女を自称じしょうしているようなやつだが、自称じしょうするだけあってまるで魔法のような腕前をもつ。

 旅をしているのでなかなかつかまらない上になかなか仕事をけ負わないのだがたまたま隣の国でばったり出くわし事情を話したら珍しく引き受けてくれた。

 流石の腕前であっという間にロザリオを取り出しただけではなく、傷跡きずあとまで綺麗に無くしてみせた。医学には全く精通せいつうしていないので神も仏も全く信じない俺だが魔法は信じたくなった。

 まあ馬鹿みたいな代金を請求せいきゅうされたが、丁度ロザリオをさばいたがくで相殺されたので良しとしておこう。

 マイナスにならないのならプラスだ。

 文字通り、胸のつっかえが取れたホープは今や普通のティーンエイジャーだ。

 普通。
 ここで言うところの普通は普通の泥棒としての普通だ。

「空っぽだった私は、ポールに盗まれて初めて心が生まれたんだよ。盗まれたことによった貴方が私に価値を付けた。ありがとうポール、愛してるよ」

 なんてことも笑顔で言うようになる。

 俺はその言葉に少し笑い。

「俺もだよホープ、愛してるよ」

 俺は泥棒だ、嘘つきから始まるあの泥棒だ。

 だからこんな言葉に価値はない。

 俺は信仰を盗んだだけであり、俺はホープに心をうばわれただけなのだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

まず、後宮に入れませんっ! ~悪役令嬢として他の国に嫁がされましたが、何故か荷物から勇者の剣が出てきたので、魔王を倒しに行くことになりました

菱沼あゆ
ファンタジー
 妹の婚約者を狙う悪女だと罵られ、国を追い出された王女フェリシア。  残忍で好色だと評判のトレラント王のもとに嫁ぐことになるが。  何故か、輿入れの荷物の中には、勇者の剣が入っていた。  後宮にも入れず、魔王を倒しに行くことになったフェリシアは――。 (小説家になろうでも掲載しています)

【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない

あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。 王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。 だがある日、 誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。 奇跡は、止まった。 城は動揺し、事実を隠し、 責任を聖女ひとりに押しつけようとする。 民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。 一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、 奇跡が失われる“その日”に備え、 治癒に頼らない世界を着々と整えていた。 聖女は象徴となり、城は主導権を失う。 奇跡に縋った者たちは、 何も奪われず、ただ立場を失った。 選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。 ――これは、 聖女でも、英雄でもない 「悪役令嬢」が勝ち残る物語。

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

王女様は聖女様?おてんば姫の大冒険~ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しに行きます!~

しましまにゃんこ
ファンタジー
アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。 それは自分が全属性の魔力を持ち、最強のチート能力を持っていた「建国の賢者アリシア」の生まれ変わりであること! 8才の誕生日を境に前世の記憶を取り戻したものの、500年後に転生したことを知って慌てる。なぜなら死の直前、パートナーのドラゴンに必ず生まれ変わって会いにいくと約束したから。 どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ! 「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」  かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。 しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。 「今度こそ、私が世界を救って見せる!」 失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!   剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。 イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。 小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。

処理中です...