お嬢様たちは、過激に世界を回していく。

ラディ

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31・妹が婚約破棄されたので、大笑いしてやりました。【全4話】

01堪えられるでしょうか。

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 私、アンナ・バルカードは昨年バルカード侯爵家次期当主であるシェル・バルカードに嫁いだ次期侯爵夫人でございます。

 旧姓きゅうせいはバンフィールド、子爵家の生まれです。

 バルカード家もバンフィールド家も騎士の家系で、そのつながりにより婚姻にいたりました。

 まあ政略結婚といえばそうですがシェルとの仲は悪くはないというか上手くいっていて、不満はありません。恥ずかしながら新婚ということもあり夫婦仲は円満です。

 しかし、どうも妹は違ったようでした。

 つい先日妹であるコニー・バンフィールドは婚約者であるトニー・グライムスに婚約破棄はきを言い渡されたと母上より聞かされました。

 コニーは昔から品行方正で、良い子だとめられ優等生にじゅんじてきました。

 まあ実際は悪い子とまでは言いませんが、そんなに良い子でもないのです。

 姉はそんをしがちみたいな話でしかないのでしょうか。コニーは面倒事を私に押し付けるのが上手く、お姉ちゃんなんだからと面倒をかけられ続けてきました。

 仲が良い姉妹、では無かったように思います。
 私も私で良い姉を演じようとしていたので、そうは見えなかったでしょうが。

 そんな妹が婚約者に捨てられたと。

 流石の私もこれを聞いてすぐに実家へ顔を出すことにしました。

 傷ついていることでしょう。
 なげかわしい。

 さあ、その落ち込んだ顔をおがんでひとしきり笑い飛ばしてやりましょう。

 私はルンルン気分で実家をおとずれる。

 久しぶりというほど離れていたわけではないのですが、実家の空気は陰鬱いんうつとしていました。

 侍女たちにコニーの様子を聞いても口をにごす。

 母上も「とにかく会ってやってくれ」としか言いません。

 なんでしょうか……? 思った以上に落ち込んでいて笑っちゃいけないような雰囲気ふんいきなのでしょうか。

 ……こらえられるでしょうか。

 コニーは自室にこもっているとのことなので、私はドアを軽くノックし、返事は聞こえなかったが気にせずドアを開く。

 落ち込んだ顔を見て、茶化ちゃかして、嫌味を言って笑い飛ばしてやろうと思っていたのですが。

 私の目に飛び込んで来たのは、物が散乱さんらんし家具は倒され破かれたクッションの羽が舞う、てた部屋のベッドにうずくまるコニーの姿でした。

 私はおどろきのあまり声を失い、部屋の入口で立ちすくんでしまう。

 すると、ゆっくりとコニーがこちらを向いて私を見つける。

 こちらを向いたコニーの姿に息を飲む。

 髪はまばらに切られ、顔の形が変わるほどのあざれ、れの隙間からこちらを覗き、切れた唇で。

「……っ、出てけぇえ‼ 出ていってぇぇえええ‼」

 と、叫びながら、手当り次第に私に向かって物を投げつける。

 私はそのいきおいに押され、部屋をあとにしました。

 全く想像だにしていなかった状況に、一体何があったのか侍女たちを問い詰めた。
 それでも侍女たちは口を重くしていましたが、やがて次々に口を開いた。
 様々な角度から入ってくる情報を私は頭の中でまとめた。

 婚約者であったトニー・グライムスは侯爵家の嫡男ちゃくなんであり、グライムス家もまた騎士の家系です。

 しかし騎士だからと言って、騎士道にじゅんじた正義の人というわけではない、これはそういう話なのでしょう。

 トニー・グライムスは婚約者がいるのにも関わらず、女遊びがひどく常に貴族令嬢や平民や娼婦をはべらしているような男らしい。

 それに対してコニーは結婚するまでの遊びだと割り切っていたようでした。

 しかし、トニー・グライモスはコニーの逆鱗げきりんに触れました。

 コニーの愛用している洋服や装飾品そうしょくひんや化粧品を勝手に持ち出し女たちに使わせたのです。

 激怒したコニーはトニー・グライムスをとがめ、そこから口論に発展したようです。

 鬱憤うっぷんも溜まっていたコニーは、口が達者なのも相まってかなりの罵詈雑言ばりぞうごんびせたのでしょう。

 それに激情したトニー・グライムスはコニーのことを、殴った。

 髪をつかみ、首をめ、何度も殴った。
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