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32・恋人に棄てられたお嬢様は、凍える聖夜に暖かさを求める。【全6話】
06良いお年を。
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それなら、納得ができる。
優しい彼なら、優しい彼が抱くかっこいいがそういうものなんだと、確かに合点がいった。
君だけを選べなくてごめん、か。
「なるほどね……、そっか、そういう話だったんだ」
私はしんみりしながら、彼の語りにぽつりと漏らす。
確かに、別れも愛の一つだと昔の歌も歌っていた。
まさか自分が体験することになるとは思ってなかったけれど。
私の中にあった、芋焼酎でもワインでも動かなかった硬くて刺々しい塊が砕けて流れる。
彼の優しさに、決定的に私とは違うその美しい価値観に、涙がこぼれ落ちる。
ああ、私は振られたんだ。
どうしようもない、一緒に歩いて行ける道はここまでだったのだから、仕方ない。
そんな、涙が止まらない私の頬に暖かい手のひらが触れる。
私の顔をまつ毛が長くて綺麗な顔の前に向けて、手袋の指で涙を優しく拭ってくれる。
そこで私は。
ああ、完全にすっぴんで、寒さで鼻も真っ赤で、お酒と涙でぐずぐずなのに――。
さて、そんなことを考えながら目を閉じたところで、私の二十代最後のクリスマスと、二十代最後の恋の話はおおよそおしまいである。
その後のことを強いて語るなら、私は二日酔いの頭痛で悶えながらアラーム音で目を覚ました。
普段あまり飲まない癖に、芋焼酎とワインを一本ずつ空けるなんて飲み方は絶対にやらない方がいい。
そして、ベッドの隣には、美しい寝顔のまつ毛が長い無愛想な執事くん――――……は、おらず。
あの後、別になんにもなく。
ちょうどいいタイミングで会社から彼に連絡が入り迎えが来たので。
「メリークリスマス、良いお年を」
そう言って彼は去っていった。
私もそのまま帰宅して、服を脱ぎ散らかして布団にくるまって酩酊状態の気の向くままに泥のように眠った。
しかし寝る前にちゃんとアラームを掛けておくところは我ながら真面目さが出てしまっている。
頭を抱えながら冷蔵庫から水を取り出して飲んで、洗面所にて鏡を見る。
うーわこれは酷い、急いで洗顔フォームを泡立て顔を洗う。
まあ何も無くて良かった。
彼は彼の中のかっこいいに従って私の涙を拭ったのだろうけど、そのかっこよさを受け止めてあげるのは私じゃなくてお嬢様なのだろう。
顔を洗い流し、化粧水と乳液でとりあえずの応急処置を行い。
「…………、よし。片付けよ」
私はとりあえず大家さんの手配したエアコン修理業者さんが来る前に脱ぎ散らかされた防寒着たちを片付けていく。
変な執事と出会い、まあチューくらいはしといてよかったかな? なんて思わなくはないけれども、彼のおかげでクリスマスを凍えずに乗り切れただけでも御の字だ。
酔いが覚めてしまった今、彼が話してくれたことの全てを受け入れられるわけじゃあないけど。
きっと彼なら、お嬢様を見つけ出して幸せにすることが出来て、さらに幸せになることも出来るだろう。
彼氏に振られてエアコンが壊れて私と彼が出会ったのだ、世の中何が起こるか分かったものじゃない。
だってこの後、訪れるエアコン修理業者さんに一目惚れされてしまい、熱烈なアプローチを受けて交際に発展し、二年後に結婚して幸せな家庭を築くなんて。
私も含めて誰も、予想だにしていないのだから。
偶然ってのは重なるのが、これまたどうしてなかなか面白い。
優しい彼なら、優しい彼が抱くかっこいいがそういうものなんだと、確かに合点がいった。
君だけを選べなくてごめん、か。
「なるほどね……、そっか、そういう話だったんだ」
私はしんみりしながら、彼の語りにぽつりと漏らす。
確かに、別れも愛の一つだと昔の歌も歌っていた。
まさか自分が体験することになるとは思ってなかったけれど。
私の中にあった、芋焼酎でもワインでも動かなかった硬くて刺々しい塊が砕けて流れる。
彼の優しさに、決定的に私とは違うその美しい価値観に、涙がこぼれ落ちる。
ああ、私は振られたんだ。
どうしようもない、一緒に歩いて行ける道はここまでだったのだから、仕方ない。
そんな、涙が止まらない私の頬に暖かい手のひらが触れる。
私の顔をまつ毛が長くて綺麗な顔の前に向けて、手袋の指で涙を優しく拭ってくれる。
そこで私は。
ああ、完全にすっぴんで、寒さで鼻も真っ赤で、お酒と涙でぐずぐずなのに――。
さて、そんなことを考えながら目を閉じたところで、私の二十代最後のクリスマスと、二十代最後の恋の話はおおよそおしまいである。
その後のことを強いて語るなら、私は二日酔いの頭痛で悶えながらアラーム音で目を覚ました。
普段あまり飲まない癖に、芋焼酎とワインを一本ずつ空けるなんて飲み方は絶対にやらない方がいい。
そして、ベッドの隣には、美しい寝顔のまつ毛が長い無愛想な執事くん――――……は、おらず。
あの後、別になんにもなく。
ちょうどいいタイミングで会社から彼に連絡が入り迎えが来たので。
「メリークリスマス、良いお年を」
そう言って彼は去っていった。
私もそのまま帰宅して、服を脱ぎ散らかして布団にくるまって酩酊状態の気の向くままに泥のように眠った。
しかし寝る前にちゃんとアラームを掛けておくところは我ながら真面目さが出てしまっている。
頭を抱えながら冷蔵庫から水を取り出して飲んで、洗面所にて鏡を見る。
うーわこれは酷い、急いで洗顔フォームを泡立て顔を洗う。
まあ何も無くて良かった。
彼は彼の中のかっこいいに従って私の涙を拭ったのだろうけど、そのかっこよさを受け止めてあげるのは私じゃなくてお嬢様なのだろう。
顔を洗い流し、化粧水と乳液でとりあえずの応急処置を行い。
「…………、よし。片付けよ」
私はとりあえず大家さんの手配したエアコン修理業者さんが来る前に脱ぎ散らかされた防寒着たちを片付けていく。
変な執事と出会い、まあチューくらいはしといてよかったかな? なんて思わなくはないけれども、彼のおかげでクリスマスを凍えずに乗り切れただけでも御の字だ。
酔いが覚めてしまった今、彼が話してくれたことの全てを受け入れられるわけじゃあないけど。
きっと彼なら、お嬢様を見つけ出して幸せにすることが出来て、さらに幸せになることも出来るだろう。
彼氏に振られてエアコンが壊れて私と彼が出会ったのだ、世の中何が起こるか分かったものじゃない。
だってこの後、訪れるエアコン修理業者さんに一目惚れされてしまい、熱烈なアプローチを受けて交際に発展し、二年後に結婚して幸せな家庭を築くなんて。
私も含めて誰も、予想だにしていないのだから。
偶然ってのは重なるのが、これまたどうしてなかなか面白い。
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