【完結】白雪くんはりんごアレルギー〜家政夫だと思っていたら嫁入りでした!

墨済

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7章 幸せに暮らしましたとさ

7-(2)

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由起也は事件の翌日は隆平と話して以降、一日のほとんどを眠って過ごした。
隆平も、由起也が目覚めたことで安心して、一旦家に帰ったようだ。だが、個室なのをいいことに、ほとんどずっと由起也のそばにいたらしい。
夜になってそれに気づいた由起也が、家に帰って体を休めるように言い聞かせると、しゅんとしょげた様子で帰っていった。病室を出るまで何度も振り返って由起也の方を見る様子が、また犬のように見えてきて、由起也は笑い出さないよう、厳しい顔を作っているのが大変だった。

次の日、入院3日目となる日は、朝にシャワーを浴びさせてもらえた。
入院患者用の前開きの服を脱ぐだけでも、全身に軋むような痛みがあって、由起也は顔をしかめた。ふと、鏡に映った自分の身体が目に入った。身体中にアザができていて、特に背中がとんでもない状態になっていた。赤黒いアザが背中全部にいくつもついている。
由起也はあの時の恐怖が蘇ってきて、少し吐き気がした。

昼前になると、パパさんが高木を連れて見舞いに来てくれた。
パパさんも高木も、由起也が一日しっかり休んで、顔色もかなり良くなっているのを、とても喜んだ。

そこで、高木から今回の事件に至るまでの、花城エステートの動き――櫛田守信との取引や、守信が本社で暴れたことなどを聞かされた。

「うちが櫛田の土地を購入したことで、君が誘拐される事態にまでなってしまったことについては、心からお詫びする。本当に申し訳なかった」
そう言って、パパさんが椅子から立ち上がり、深々と頭を下げた。隣の高木も立ち上がり、同じように深々と頭を下げる。ああ、これは社長さんの立場できちんと謝ってくれているんだと、由起也は受け止めた。
だから、こう答えた。

「花城社長、その……、それについては、わかりました。それから、あの……、パパさん。心配をおかけして、すみませんでした」
その由起也の言葉を聞いたパパさんは、スッと姿勢を起こし、とても嬉しそうな顔をしながら、由起也の包帯を巻いた頭を撫でてきた。
「由起也くん、本当に悪かった。無事で、……本当に良かった」
そんなことをちょっぴり涙声で言うので、由起也も泣きそうになった。

二人が落ち着いたところで、高木が居住まいを正し、今日は午後から警察が事情聴取に来る、と教えてくれた。
「由起也くん。事情聴取には、弁護士が立ち会うことが可能です。警察の事情聴取は、かなり事細かに聞き取ろうとします。そのため、由起也くんが事件の時のことを思い出して、苦しくなったり、混乱したりする可能性もあります。そんな時に警察官との間のクッションとして、弁護士を立ち会わせることができるんです。由起也くん、私の同席を希望してもらえますか?」
高木は、真剣かつ丁寧にそう説明した。

「高木さん、ありがとうございます。ぜひ、お願いしたいです」
由起也がお願いすると、高木は軽い笑顔で請け負ってくれた。

***

午後になって病室に2人の刑事が来た。自己紹介で由起也の救出の場にもいたと告げられたが、由起也はまったく覚えていない。
簡単なお見舞いの言葉の後、早速、事情聴取が始まった。もちろん、高木は同席してくれた。
刑事のうち一人が聞き役になり、もう一人はノートPCを広げて記録係を務めるようだ。

由起也の氏名、生年月日、住所、大学名、そして花城家との関係性などまでは良かった。しかし、櫛田との関係についての話になった時、刑事の顔が難しそうにしかめられた。
「なるほど、戸籍上は繋がってはいない、と」
「はい。オレ、父さんが櫛田っていう名字なのを、つい最近知ったんです」
「うーん。そうですか……。これについては、警察の方でも確認することにします」

そして聞き取りは、事件の最初――守信に拉致されるところへと移った。
しかし、初っ端から由起也はまともに答えることができなかった。あまりにもいろんなことがあったので、どれも必死だったことしか思い出せない。刑事からは、いろんな角度で事細かに尋ねられて、頭が混乱してくる。体よりも心が疲れていくのを感じた。

そんな時、高木が「落ち着いて」「思い出せることだけで、まずは大丈夫」と声をかけてくれるので、その度に由起也は息ができるような心地がした。

もちろん刑事もけして厳しいわけではなく、由起也の状態にとても気を配ってくれていた。だからこそ、由起也はまともに思い出せないのが苦しくなってきた。

2時間ほど過ぎたところで、「今日はここまでにしましょう」と刑事から言われて、由起也はカチコチにこわばっていた体からようやく力を抜け、ぐったりしてしまった。予想以上に疲れている自分に、少し驚いた。
「体調が戻っていないところ申し訳ないですが、明日もまたよろしくお願いします」
と刑事が言った時には、ため息を必死で我慢した。

「由起也くん、お疲れ様でした。初日にしては順調ですし、しっかり答えてられていましたよ」
そう高木に言ってもらい、由起也はほんの少しだけ救われたような気がした。

高木が帰った後、一人になった由起也は、病室の天井を見つめながら考えた。
自分は暴力を振るわれて、確かにとても痛かったし、怖かった。けれど、自分が一番覚えているのは何か。それは、怒りだ。

おばあちゃんは守信に暴力を振るわれたから、脚を悪くした。そして、父さんは健臣にりんごを食べさせられて、苦しみながら死んだ。そう聞かれされたのを思い出すと、また怒りが湧いてくる。健臣が歪んだ笑顔でそう言った時の怒りと悲しみが……。

そのことを――父さんとおばあちゃんの真実を、オレは絶対に伝えなきゃいけない。

そう心の整理ができ、由起也は事情聴取を最後まで頑張ろうと、決意した。


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