メルレールの英雄-クオン編-前編

朱璃 翼

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2部 二刀流の魔剣士編

船上の仕事2

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 話を聞いたシュレは苦笑いを浮かべている。聞いた話だと、彼の友人となる英雄は感情的になりやすそうだと思えたのだ。

『あのな、今思ったのは間違ってないぜ。シオンは本当にダメだよな』

「感情的になるからな。親になって落ち着いた……と思いたかったんだが」

「ダメだったのかよ」

 呆れたようにシュレが言えば、一人と一匹が同時に頷く。

『仕方ない。身体の成長が止まったと同時に、精神年齢も止まったらしいから』

 済ましたように言えば、そういう問題なのかと怪訝そうな表情を浮かべるシュレ。

 精神年齢は止まらないだろうと言いたいのだ。グレンも気持ちはわかるだけに、苦笑いを浮かべる。

「だが、安心はした。長生き以外は普通なんだな」

「あぁ、普通だ。だからやっていけるんだろうが」

 そうでなければやっていけなかったかもしれない。

 不死となった今だから思うことでもある。

「ヴィル、ご飯の時間だって……」

 上機嫌に近寄ってきたアイカは、シュレを見た瞬間に表情が変わる。

 あからさまに邪魔だと言うように彼女の視線が鋭く向けられた。

「一人で食ってろよ」

「こっちの台詞なんだけど。あんたが一人で食べなさいよ」

 傭兵などやっているだけあって、性格はかなり強気だったりする。

 だから尚更にシュレと衝突してしまうのだろう。それはわかっているのだが、ならばシュレが相手をしなければいいとグレンは思っていた。

「三人で食えばいいだろ。めんどくさい」

 とりあえず、食事まで喧嘩はやめてくれと無言で言えば二人とも渋々頷く。

『でも喧嘩すんだろ』

「だろうな」

 この二人に関しては、食事中とか関係なく喧嘩をする。些細なことがきっかけなだけに、もはや注意したところで無駄だと学習していた。

 グレンが気にしたところでどうにもならないのだから。

 船内へ向けて一歩を踏み出した瞬間、その歩みは止まる。背後から気配を感じたからだ。

「食事の前に運動らしいな」

「相変わらず、察知が早いね」

 不敵な笑みを浮かべながら空を見上げる姿に、アイカはまだ見えないと同じように空を見る。

 どれぐらいの距離から察知できるのか。アイカだけではなく、シュレもその辺りは気になっていた。

「空となると、シュレが主力だな。魔法はかったるい」

「お前な…」

 あっさりと言われれば、呆れたように見たあと了承の意味で頷く。

「アイカ、風は使えるか?」

「もちろん」

 ならば問題はないと笑った。さくりと終わらせて食事にしようと。

 そんな姿を見ながら、それがいけないのだとシュレはため息を吐く。

 彼は自覚がないようだが、その笑みにどれだけの女性がときめいているのか。わかっていないんだよな、とぼやきたくなるほどだ。

 魔物の姿が見えてきたのを確認し、シュレは弓を構える。

 おそらく自分がいなくても、英雄王はどうにでもできるとわかっていた。けれど自分へ任せてきたのは、信頼の証だろう。

 そこまで考えて、自分でなにを考えているんだと笑った。信頼されたいと思っているのか。

(バカだな……)

 彼に信頼されてどうするのかと。そうすればなにかが変わると思っている自分に呆れるしかない。

(重ねてるんだ。フィフィリスに…)

 目の前で剣を抜くグレンを見て、かつて組んでいた女傭兵と重ねていると自覚した。

 彼に信頼されるということは、彼女に認めてもらえたも同然だと思いたかったのだ。

(いつも、こうやって見ているだけだったからな…)

 常に背中を見ているだけ。なにがあっても自分にはこれしかない。弓で援護するしかできないのだ。

(違う…あのときとは、違う)

 風で一ヶ所に集められている魔物を見ながら、グレンの考えに笑うことしかできなかった。

 なぜ気付いていたのかと思いながら、シュレは矢を放っていた。

「魔弓…」

 逆に、なにも知らないアイカは驚いている。

 魔剣は有名だが、魔弓を持つ者はほとんどいない。魔力を込められた弓の扱いが一番難しいと言われていたからだ。

「なんでわかったんだ、ヴィル」

「見ればわかるだろ。普通の弓じゃないって」

 当たり前のように言えば、普通わからないだろとシュレが言い、アイカは頷いて同意する。

 なにせ、シュレが持つ魔弓には属性がない。魔力の気配など、本人の魔力と混ざってしまって読み取るのは難しいのだ。

「昔、それと似た魔剣を持っていた知り合いがいてな」

「それでわかるものなの? ヴィルって、ほんと不思議だよ」

 普通だとは言いきれないだけに、苦笑いで聞き流すグレン。

 さすがに長く生きてきた経験でわかるのだろう、ということぐらいはわかっている。

(なにせ、フォーラン・シリウスの記憶もあるしな……)

 その記憶が彼の感覚を一段と鋭くさせているのだろう。




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