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三部 神具編
覚醒した炎
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宿屋の窓から見える目的地。砂漠の中にそびえ立つ山こそ、次の目的地であった。
火炎山――過去の世界でも行った山。次元を繋ぐと言われており、その原理について発見したのは一人の火竜であった。
魔法の天才と言われた白秋。彼が発見したと、伝えられているのは一部だけ。さすがに、次元が繋がっているなど公開できない。
「すごい人だったんだね」
――はい。知識だけではありません。実力も尋常ではない。主殿が戦った飛朱殿より、はるかに強いです。白秋殿は、この戦いの中でも難所のひとつとなるでしょう――
夜には火炎山へ行き、火の神具を取り戻す戦いが始まる。それはどれほど大変になるか、想像もつかない。
すべてを知っている黒欧が、難所のひとつと言うだけで大変さは想像がつく。
「それでも、やるしかない。幸いにも、腕のいい魔法の使い手がいる」
「ふふっ。どれほどのものか、楽しみね」
対抗できる魔法の使い手がいるからこそ、今回は二手に分かれることができた。
彼女がいなければ、琅悸に対応してもらうしか手がない。結界でどれほど防げるかはわからず、切ってもらうのが確実だから。
――柏羅殿は、前に出ない方がいいでしょう――
「はい」
腕が悪いからではない。力押しになれば、柏羅の細い腕では確実に負けてしまう。攻撃は柊稀と黒耀の二人で受け止めるしかないのだ。
時間まで休むべきとわかっていても、四人は休めなかった。この先のことを考えたら、とてもじゃないが気持ちは落ち着かない。
特に柊稀は、あの人と戦うのかと考えただけで不安になる。
過去で白秋という人物と会ってきた柊稀。実力は対面するだけでもわかってしまった。自分よりも強く、おそらく黒耀よりも強い。
――前線を二人でやっても、正直どうなるかはわかりません――
「接近戦も可能なのか?」
――可能です――
魔法専門として有名なだけに、瑚蝶のようなタイプだと思っていた。
黒耀の表情は険しいものへ変わる。魔法使用の際に呪文を使わないなら、攻撃しながら魔法も放つということ。
味方なら心強いが、敵ならこれほど手強いものはない。
「やれると、信じるしかないな」
「うん。信じて、みんなもダリウスへ向かったんだし」
氷穂が自分を評価した。過去の世界で、白秋本人と交わした約束がある。それらに応えるため、力一杯やるしかない。
「負けないわよ。だって、造られただけで本人じゃないもの」
本人なら勝てないだろうけど、と瑚蝶は小さく呟いた。
自信家の瑚蝶でも、魔法の天才と呼ばれている彼に勝てる気はしなかったのだ。それは魔道書などを見てわかっていたこと。
これだけの技術を作り上げ、使いこなしていた天才。勝つためには、もっと月日が必要だと思っていた。
さらに、実戦経験もないに等しい。相手はかなりの実戦を積んでいると思われた。戦場では判断能力の差もあるだろう。
自分の能力も、目指していた先である白秋の能力も、瑚蝶はしっかりと理解していた。
夜になっても、気温はあまり変わらない。本来は下がるのだが、今は神具の影響もあって気温が下がらないようだ。
さすがにこのような状態が長く続けば、住み慣れた者でも耐えられないかもしれない。
現に町は活気を失い、暑さに慣れているはずの町民は疲弊していた。
「行こう」
それも今日で終わる。終わらせるのだと、柊稀は中へ進んだ。神具を取り戻せば、町民を救うことにもなるのだ。
薄暗い洞窟は一本道で、真っ直ぐに歩いていく。道を踏み外せば、そこはマグマ。見ただけでもやばいとわかるだけに、柊稀は細い道を通るときは気を付けた。
「中は一人だといいが」
今までのことを考えれば、ここにも邪教集団の末端がいる可能性もある。
「雑魚なら、みんな吹き飛ばしてあげるわよ」
強気な態度を崩さない瑚蝶だが、さすがに今回は緊張しているのか。杖を握る手には力が込められている。
「心強いよ」
「そうだな」
彼女の強がりには気付いていた。だからこそ、こんなときにも自分を崩さない彼女に、勇気づけられる。
意を決し、柊稀は神具への道を進んだ。
一見ではわかりづらい神具への道を通れば、辺り一帯に広がる強い魔力を感じる。それだけで相手の強さを感じ取ることができた。
柊稀は背筋に冷や汗が流れるのを感じる。
(強い……)
この人とこれから戦う。考えただけでも、手足が震えてくる。
広い空間へ入るのと、炎が飛んでくるのが同時。ワンテンポ遅れて、瑚蝶の水が打ち消し、さらに放たれる炎。
「攻撃が速すぎる!」
なんとか四人がかわし、着地すると同時に、今度は雷が落とされた。着地する場所まで完璧に読まれていたようだ。
「先制されたのは痛いな」
攻撃をするどころか、近寄ることもできない。次から次へと放たれる魔法に、避けるのが精一杯となってしまった。それでも、避けられているのだからまだいいほうだ。
柊稀と瑚蝶はギリギリのところでなんとか避けられている状態。それも、瑚蝶は黒耀が手助けした上で避けている。
このままではいけないと、黒耀が柊稀へ視線を向け、同時に前へ出る。このまま受け身でいるわけにはいかない。
今までと同じで、無機質なのは変わらない表情に、柊稀の中では過去で出会った本人が被る。
「やってみせる……」
剣を強く握り締め、炎が放たれた瞬間に飛び出す。
「瑚蝶!」
「わかっているわ!」
すぐさま柊稀を狙うように放たれた炎に、瑚蝶が放つ水が打ち消した。
一度でも剣を出させれば、攻撃へのチャンスになるはずだと黒耀が攻撃体制へ入る。
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火炎山――過去の世界でも行った山。次元を繋ぐと言われており、その原理について発見したのは一人の火竜であった。
魔法の天才と言われた白秋。彼が発見したと、伝えられているのは一部だけ。さすがに、次元が繋がっているなど公開できない。
「すごい人だったんだね」
――はい。知識だけではありません。実力も尋常ではない。主殿が戦った飛朱殿より、はるかに強いです。白秋殿は、この戦いの中でも難所のひとつとなるでしょう――
夜には火炎山へ行き、火の神具を取り戻す戦いが始まる。それはどれほど大変になるか、想像もつかない。
すべてを知っている黒欧が、難所のひとつと言うだけで大変さは想像がつく。
「それでも、やるしかない。幸いにも、腕のいい魔法の使い手がいる」
「ふふっ。どれほどのものか、楽しみね」
対抗できる魔法の使い手がいるからこそ、今回は二手に分かれることができた。
彼女がいなければ、琅悸に対応してもらうしか手がない。結界でどれほど防げるかはわからず、切ってもらうのが確実だから。
――柏羅殿は、前に出ない方がいいでしょう――
「はい」
腕が悪いからではない。力押しになれば、柏羅の細い腕では確実に負けてしまう。攻撃は柊稀と黒耀の二人で受け止めるしかないのだ。
時間まで休むべきとわかっていても、四人は休めなかった。この先のことを考えたら、とてもじゃないが気持ちは落ち着かない。
特に柊稀は、あの人と戦うのかと考えただけで不安になる。
過去で白秋という人物と会ってきた柊稀。実力は対面するだけでもわかってしまった。自分よりも強く、おそらく黒耀よりも強い。
――前線を二人でやっても、正直どうなるかはわかりません――
「接近戦も可能なのか?」
――可能です――
魔法専門として有名なだけに、瑚蝶のようなタイプだと思っていた。
黒耀の表情は険しいものへ変わる。魔法使用の際に呪文を使わないなら、攻撃しながら魔法も放つということ。
味方なら心強いが、敵ならこれほど手強いものはない。
「やれると、信じるしかないな」
「うん。信じて、みんなもダリウスへ向かったんだし」
氷穂が自分を評価した。過去の世界で、白秋本人と交わした約束がある。それらに応えるため、力一杯やるしかない。
「負けないわよ。だって、造られただけで本人じゃないもの」
本人なら勝てないだろうけど、と瑚蝶は小さく呟いた。
自信家の瑚蝶でも、魔法の天才と呼ばれている彼に勝てる気はしなかったのだ。それは魔道書などを見てわかっていたこと。
これだけの技術を作り上げ、使いこなしていた天才。勝つためには、もっと月日が必要だと思っていた。
さらに、実戦経験もないに等しい。相手はかなりの実戦を積んでいると思われた。戦場では判断能力の差もあるだろう。
自分の能力も、目指していた先である白秋の能力も、瑚蝶はしっかりと理解していた。
夜になっても、気温はあまり変わらない。本来は下がるのだが、今は神具の影響もあって気温が下がらないようだ。
さすがにこのような状態が長く続けば、住み慣れた者でも耐えられないかもしれない。
現に町は活気を失い、暑さに慣れているはずの町民は疲弊していた。
「行こう」
それも今日で終わる。終わらせるのだと、柊稀は中へ進んだ。神具を取り戻せば、町民を救うことにもなるのだ。
薄暗い洞窟は一本道で、真っ直ぐに歩いていく。道を踏み外せば、そこはマグマ。見ただけでもやばいとわかるだけに、柊稀は細い道を通るときは気を付けた。
「中は一人だといいが」
今までのことを考えれば、ここにも邪教集団の末端がいる可能性もある。
「雑魚なら、みんな吹き飛ばしてあげるわよ」
強気な態度を崩さない瑚蝶だが、さすがに今回は緊張しているのか。杖を握る手には力が込められている。
「心強いよ」
「そうだな」
彼女の強がりには気付いていた。だからこそ、こんなときにも自分を崩さない彼女に、勇気づけられる。
意を決し、柊稀は神具への道を進んだ。
一見ではわかりづらい神具への道を通れば、辺り一帯に広がる強い魔力を感じる。それだけで相手の強さを感じ取ることができた。
柊稀は背筋に冷や汗が流れるのを感じる。
(強い……)
この人とこれから戦う。考えただけでも、手足が震えてくる。
広い空間へ入るのと、炎が飛んでくるのが同時。ワンテンポ遅れて、瑚蝶の水が打ち消し、さらに放たれる炎。
「攻撃が速すぎる!」
なんとか四人がかわし、着地すると同時に、今度は雷が落とされた。着地する場所まで完璧に読まれていたようだ。
「先制されたのは痛いな」
攻撃をするどころか、近寄ることもできない。次から次へと放たれる魔法に、避けるのが精一杯となってしまった。それでも、避けられているのだからまだいいほうだ。
柊稀と瑚蝶はギリギリのところでなんとか避けられている状態。それも、瑚蝶は黒耀が手助けした上で避けている。
このままではいけないと、黒耀が柊稀へ視線を向け、同時に前へ出る。このまま受け身でいるわけにはいかない。
今までと同じで、無機質なのは変わらない表情に、柊稀の中では過去で出会った本人が被る。
「やってみせる……」
剣を強く握り締め、炎が放たれた瞬間に飛び出す。
「瑚蝶!」
「わかっているわ!」
すぐさま柊稀を狙うように放たれた炎に、瑚蝶が放つ水が打ち消した。
一度でも剣を出させれば、攻撃へのチャンスになるはずだと黒耀が攻撃体制へ入る。
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