始まりの竜

朱璃 翼

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三部 神具編

覚醒した炎2

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 洞窟の中に澄んだ金属音が鳴り響く。柊稀の攻撃に、剣で応えた合図だ。

 一撃で柊稀は弾かれたが、その隙を逃すほど黒耀は甘くはない。それがわずかな隙だろうと、正確に突いてみせる。

黒鳳槍こくほうそう!」

 黒い渦を巻きながら、黒耀の槍が一直線に襲いかかった。

 力強い一撃は、正面から軽々と受け止められてしまう。さすがに一撃で吹き飛ばされることはなく、互いに力で押し、競り合いが始まる。

 動きを止めることさえできれはこちらのものと、瑚蝶は強力な水流を放つ。他にも攻撃魔法は使えるが、この空間では水の魔法が一番効果的。彼女本来の力と空間での作用により、絶大な効果を発揮していた。

 この戦い、瑚蝶の中では水一本で攻めることにしたのだろう。

「そんな!」

 しかし、黒耀の身体を吹き飛ばし、魔法はあっさりと防がれてしまった。

――白秋殿は攻防どちらも得意なのです!――

「結界魔法は、さすがに威力が下がるわよ」

 瑚蝶が得意なのは、あくまでも攻撃一本なのだ。結界が使えないわけではないのだが、強力なのを使うには彼女でも呪文を必要とする。

 腕の違いを実感したが、ここで諦めるわけにはいかない。

 気持ちを落ち着かせると、瑚蝶は敵を睨み付け、魔力を高めていく。気持ちで負けるわけにはいかないのだ。

 相手がどれだけ強かろうと、造られた存在だ。絶対に勝ってやる、と強い気持ちで杖を握り締める。

 休む暇など与えてはくれない。吹き飛ばされて、そのままでいれば狙い打ちだ。魔法を弾かれて呆けているなど論外。

 倒すことではなく、瑚蝶は二人のサポートに徹することを決めた。攻撃より、二人が建て直す時間を作り、攻撃するための隙を作る。

(魔法専門の天才とは、よく言ったものね)

 自分の力に絶対の自信があった。王の末裔ということもあり、魔力の強さは人並外れていたからだ。

 けれど、上には上がいるのだと思い知らされた。彼には、魔法の腕では勝てない。造られた存在でも、そう感じてしまう。

(それでも、負けられないのよ!)

 この戦いは負けるわけにはいかないのだ。自分を信じて別行動を提案した氷穂のため、別行動を受け入れてくれた仲間の為。

 そしてなによりも、今前で戦っている二人の為。瑚蝶は持てる限りの力を使い、彼の攻撃を受け止め続けた。

 それは水の神具を取り戻すことより、過酷なことだったかもしれない。



 腕にそれなりの自信はあった。黒竜族最強と言われる、魔法槍士という肩書き。

 それを背負うだけの実力は、身に付けてきた。けれど、目の前の人物には効かない。まるで歯が立たないのだ。

「黒欧…そんなに、差があるか……」

 すべてを知る者から見ても、自分と彼の差は酷いのだろうか。そう思わされるほど、過去の者達は強い。

――……差はあります。さらに、主殿の力は白秋殿の息子である飛狛殿に似ています。それも大きいかと思われます――

 幻惑使いに慣れているのと慣れてないのでは、まるで違う。幻惑は扱いが難しいもので、使えればそれだけで強い力となる。

 しかし、今目の前にしている敵は、飛狛という幻惑使いで戦い慣れていた。そのため、すべてが簡単に受け止められてしまう。

――白秋殿は、盲目です。なので、感覚も鋭いのです――

 さらに最悪というべきことは、彼が盲目だということ。盲目故に鍛えられた感覚の鋭さが立ちはだかっていた。

「それで、あの動きなの?」

 信じられないと言うように柊稀は見る。どうやれば見えていないのに、これだけの戦いができるというのか。

――来ます!――

「くっ」

 黒欧の言葉と同時に、周囲に複数の陣が現れ爆発を起こす。火竜族ではよく使われる魔技の一種。生前の白秋が得意としていた技のひとつでもある。

 黒耀はすぐさま体制を整えようと身体を起こすと、目の前にはすでに白秋の姿が迫っていた。魔技の発動を示すよう、大剣が輝いている。

「黒耀!」

――主殿!――

 目の前で強力な魔技を放たれれば、体制を整えたばかりの黒耀には避けることも受け止めることもできず、攻撃は直撃した。

「キャァァァ!」

「瑚蝶!」

 黒耀を狙うと同時に、背後を狙っていたのだと気付くことはできなかった。それは瑚蝶も同じだったのだろう。

 自分へ向かってくる魔法への対応が遅れてしまった。

(強い……)

 自分では勝てないとハッキリ言うだけある。柊稀よりも強い二人が、あっさりと倒れるほど彼は強い。

(でも、負けられないんだ。僕は……)

 弱いままではいられない。強くなると決めたのだ。柏羅を護り、朱華を取り戻すのだと決めたばかり。ここで立ち止まるわけにはいかない。

(負けない!)

 カッと目を見開くと、炎が吹き荒れる。髪や服をなびかせ、炎は周囲を荒れ狂っていく。

 その炎が赤ではなく蒼なのを見た瞬間、黒耀は酷く驚いた。

「柊稀…お前……」

 本当に彼は弱いのか。そう問いかけたくなる。

 火竜族の中でも、蒼い炎を扱えるのは高等技術だと言われている。彼が本当に弱いなら、使えるはずがないのだ。

 この青年には秘めた力があるのかもしれないと思う。





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