62 / 174
三部 神具編
覚醒した炎3
しおりを挟む
燃え上がる剣を片手に、柊稀が斬りかかる。瞳が炎のように赤く染まり、炎はさらに溢れていく。
強い魔力に、二人は言葉を失い見守る。立ち入る隙が見当たらなかったのだ。魔法槍士である黒耀ですら、立ち入れなかった。
――精霊眼が発動します!――
金色へ変わっていく瞳。空気が震えるのを感じ、慌てたように黒耀が精霊眼を発動させ、軽減させようとする。
「ぐっ…」
何代にも渡り力が下がっている黒耀では、完全に受け止めることはできず。
吹き飛ばされそうになった身体を支えるので精一杯。辺りに荒れ狂っていた炎は、一瞬で消されていた。
「さすが、初代の精霊眼だ。発動だけでこれだけの力を放つのか」
――力制限しなければ、これぐらいになりますね。あの魔力ですから――
「なるほど…」
当たり前のように話す二人に、精霊眼の発動にこのような魔力の波動が放たれるとは、聞いてないよと言いたくなる柊稀。
そんな彼を尻目に、魔力の差も関係があるのかと呟きながら、黒耀は立ち上がる。
精霊眼に対抗するには、精霊眼を使うしかない。これだけは、柊稀では対抗できないのだ。自分がやるしかないと槍を握る手に力がこもる。
(俺に、やれるだろうか……)
この戦いが始まる前なら、抑えてみせると言えたかもしれない。けれど、今は自信を持って言うことができない。
三人ともが、ここからさらに激しくなると覚悟を決めた瞬間のこと。異変は起きた。
「なにが……」
造られた使い手達に感情はない。痛みを感じる感覚もない。けれど、目の前で苦しげに表情を歪める白秋。
一度伏せられた視線。それが再び柊稀を捉えた瞬間、変化がなにかを察した。
「白秋…さん……」
彼だと、ハッキリと言える。過去で少し言葉を交わしただけだが、その違いはわかった。
「よぉ…久しぶり、か……」
無機質な造られた使い手から、白秋という存在に変わったのだ。予想もしていない出来事に、三人とも言葉を失う。
――白秋殿、一体なにを――
さすがに黒欧でも驚いたように見る。彼は昔の主の夫であり、昔の主の父親。誰よりも理解していたが、このようなことをするとは思っていなかった。
「なにって…約束…だからな。手を打つって……」
別の力を押さえつけているのか、酷く苦しげにしている。一瞬たりとも気を抜くことができないのだろう。
「っても…長く…もたねぇ……」
仕組みなんて話している暇はない。抑えつけている力は、禍々しくなった神具の力であろう。いくら魔法専門の天才と言われていようが、抑えつけていられるのはわずか。
そのわずかで、用件は済ませなければいけない。
白秋の右手が魔法陣を描いていく。複雑な魔法陣に、黒欧がハッとしたような表情を浮かべる。
――白秋殿、まさか――
彼がやろうとしていることがなんなのか、黒欧は察した。付き合いが長かっただけに、それをやってもおかしくないと思えたのだ。
思えたし、最善の手だと思ってしまう。すべてを見てきたから、黒欧は止めるべきなのか悩む。
「俺の精霊眼を…止められんのは二人…そいつじゃ…無理だ……」
瞳が輝き、目の周囲に刻印が浮かび上がる。呼応するように魔法陣が赤く輝き出す。
描かれた魔法陣は黒い空間へと変わり、不気味な光を発した。
「うわわ!」
「な、なんですか!?」
「いったぁ」
ドサッと音をたて、黒い空間から吐き出される三人。
「えっ……」
三人を見た瞬間、柊稀の動きが止まる。
「あ、あぁー!」
思わず、現状もすべて忘れ叫ぶ。
「ん? うわぁ! 柊稀じゃねぇか!」
「ちょっ、待ってください。これってまさか……」
「未来……」
呆然と呟く青年は、過去の世界で知り合った魔法槍士。一緒にいるのは魔法槍士補佐官の二人。
思わぬ出来事に、誰もが動けずにいる。
このようなことを予測できた者は、誰もいないだろう。たとえそれが、魔法槍士であっても。
「あれ…なんで…お前らいんの?」
唯一わかっていた者でも、予定外ということはある。白秋は飛狛のみを引き寄せるつもりだったが、二人余分にいた。
「父さん…まさか…柊稀に手を打つって……」
息子の言葉を聞き、不敵な笑みを浮かべる。答えとしてはこれで十分だ。息子に意味は通じる。
当然、このようなことをしたということは、仕えるべき王の許可も取り済みだろう。父親がそこまでやらないわけがない。
「ふざけんなぁ! 巻き込まれた俺らはなんなんだよ!」
いつもなら落ち着けとなだめる夜秋ですら、今回ばかりは同意するように睨む。
「わりぃ…もう…時間がねぇ…帰りは自力で頼むわ……」
絶句する過去から来た三人に、こればかりは同情する現代の四人。
様々な思考が交差する中、抑えつける力に限界が来たのだろう。徐々に戻っていくのがわかる。
空気が完全に無機質な状態へ戻るのに、数秒程度であった。一瞬だけ時間が止まったようだ。
.
強い魔力に、二人は言葉を失い見守る。立ち入る隙が見当たらなかったのだ。魔法槍士である黒耀ですら、立ち入れなかった。
――精霊眼が発動します!――
金色へ変わっていく瞳。空気が震えるのを感じ、慌てたように黒耀が精霊眼を発動させ、軽減させようとする。
「ぐっ…」
何代にも渡り力が下がっている黒耀では、完全に受け止めることはできず。
吹き飛ばされそうになった身体を支えるので精一杯。辺りに荒れ狂っていた炎は、一瞬で消されていた。
「さすが、初代の精霊眼だ。発動だけでこれだけの力を放つのか」
――力制限しなければ、これぐらいになりますね。あの魔力ですから――
「なるほど…」
当たり前のように話す二人に、精霊眼の発動にこのような魔力の波動が放たれるとは、聞いてないよと言いたくなる柊稀。
そんな彼を尻目に、魔力の差も関係があるのかと呟きながら、黒耀は立ち上がる。
精霊眼に対抗するには、精霊眼を使うしかない。これだけは、柊稀では対抗できないのだ。自分がやるしかないと槍を握る手に力がこもる。
(俺に、やれるだろうか……)
この戦いが始まる前なら、抑えてみせると言えたかもしれない。けれど、今は自信を持って言うことができない。
三人ともが、ここからさらに激しくなると覚悟を決めた瞬間のこと。異変は起きた。
「なにが……」
造られた使い手達に感情はない。痛みを感じる感覚もない。けれど、目の前で苦しげに表情を歪める白秋。
一度伏せられた視線。それが再び柊稀を捉えた瞬間、変化がなにかを察した。
「白秋…さん……」
彼だと、ハッキリと言える。過去で少し言葉を交わしただけだが、その違いはわかった。
「よぉ…久しぶり、か……」
無機質な造られた使い手から、白秋という存在に変わったのだ。予想もしていない出来事に、三人とも言葉を失う。
――白秋殿、一体なにを――
さすがに黒欧でも驚いたように見る。彼は昔の主の夫であり、昔の主の父親。誰よりも理解していたが、このようなことをするとは思っていなかった。
「なにって…約束…だからな。手を打つって……」
別の力を押さえつけているのか、酷く苦しげにしている。一瞬たりとも気を抜くことができないのだろう。
「っても…長く…もたねぇ……」
仕組みなんて話している暇はない。抑えつけている力は、禍々しくなった神具の力であろう。いくら魔法専門の天才と言われていようが、抑えつけていられるのはわずか。
そのわずかで、用件は済ませなければいけない。
白秋の右手が魔法陣を描いていく。複雑な魔法陣に、黒欧がハッとしたような表情を浮かべる。
――白秋殿、まさか――
彼がやろうとしていることがなんなのか、黒欧は察した。付き合いが長かっただけに、それをやってもおかしくないと思えたのだ。
思えたし、最善の手だと思ってしまう。すべてを見てきたから、黒欧は止めるべきなのか悩む。
「俺の精霊眼を…止められんのは二人…そいつじゃ…無理だ……」
瞳が輝き、目の周囲に刻印が浮かび上がる。呼応するように魔法陣が赤く輝き出す。
描かれた魔法陣は黒い空間へと変わり、不気味な光を発した。
「うわわ!」
「な、なんですか!?」
「いったぁ」
ドサッと音をたて、黒い空間から吐き出される三人。
「えっ……」
三人を見た瞬間、柊稀の動きが止まる。
「あ、あぁー!」
思わず、現状もすべて忘れ叫ぶ。
「ん? うわぁ! 柊稀じゃねぇか!」
「ちょっ、待ってください。これってまさか……」
「未来……」
呆然と呟く青年は、過去の世界で知り合った魔法槍士。一緒にいるのは魔法槍士補佐官の二人。
思わぬ出来事に、誰もが動けずにいる。
このようなことを予測できた者は、誰もいないだろう。たとえそれが、魔法槍士であっても。
「あれ…なんで…お前らいんの?」
唯一わかっていた者でも、予定外ということはある。白秋は飛狛のみを引き寄せるつもりだったが、二人余分にいた。
「父さん…まさか…柊稀に手を打つって……」
息子の言葉を聞き、不敵な笑みを浮かべる。答えとしてはこれで十分だ。息子に意味は通じる。
当然、このようなことをしたということは、仕えるべき王の許可も取り済みだろう。父親がそこまでやらないわけがない。
「ふざけんなぁ! 巻き込まれた俺らはなんなんだよ!」
いつもなら落ち着けとなだめる夜秋ですら、今回ばかりは同意するように睨む。
「わりぃ…もう…時間がねぇ…帰りは自力で頼むわ……」
絶句する過去から来た三人に、こればかりは同情する現代の四人。
様々な思考が交差する中、抑えつける力に限界が来たのだろう。徐々に戻っていくのがわかる。
空気が完全に無機質な状態へ戻るのに、数秒程度であった。一瞬だけ時間が止まったようだ。
.
0
あなたにおすすめの小説
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―
酒の飲めない飲んだくれ
ファンタジー
俺は一度、終わりを迎えた。
でも――もう一度だけ、生きてみようと思った。
女神に導かれ、空の海を旅する青年。
特別な船と、「影」の船員たちと共に、無限の空を渡る。
絶望の果てに与えられた“過剰な恩恵”。
それは、ひとりの女神の「願い」から生まれたものだった。
彼の旅路はやがて、女神の望みそのものを問い直す。
――絶望の果て、その先から始まる、再生のハイファンタジー戦記。
その歩みが世界を、そして自分自身を変えていく。
これは、ただの俺の旅の物語。
『祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―』
その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?
行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。
貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。
元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。
これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。
※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑)
※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。
※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。
慈愛と復讐の間
レクフル
ファンタジー
とある国に二人の赤子が生まれた。
一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。
慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。
これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。
だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。
大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。
そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。
そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。
慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。
想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……
異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~
タカノ
ファンタジー
異世界へ転移し、聖女として崇められ、愛する家族に囲まれて88歳で大往生した……はずだった。 目が覚めると、そこは現代日本。 孤児の中学2年生、小金沢ヒナ(14)に戻っていた。
時間は1秒も進んでおらず、待っていたのは明日のご飯にも困る極貧生活。 けれど、ヒナの中身は酸いも甘いも噛み分けたおばあちゃん(88歳)のまま!
「もう一度、あの豊かで安らかな老後(スローライフ)を手に入れてみせる!」
ヒナは決意する。異世界で極めた国宝級の【補助魔法】と【回復魔法】をフル活用して、現代社会で大金を稼ぐことを。 ただし、魔法は自分自身には使えないし、中学生が目立つと色々面倒くさい。 そこでヒナがビジネスパートナー(手駒)に選んだのは――
公園で絶望していた「リストラされた冴えないおっさん」と、 借金取りに追われる「ワケあり最強美女」!?
おっさんを裏から魔法で強化して『カリスマ社長』に仕立て上げ、 美女をフルバフで『人間兵器』に変えてトラブルを物理的に粉砕。 表向きはニコニコ笑う美少女中学生、裏では彼らを操るフィクサー。
「さあ善さん、リオちゃん。稼ぎますよ。すべては私の平穏な老後のために!」
精神年齢おばあちゃんの少女が、金と魔法と年の功で無双する、痛快マネー・コメディ開幕!
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
僕らの10パーセントは無限大
華子
青春
10%の確率でしか未来を生きられない少女と
過去に辛い経験をしたことがある幼ななじみと
やたらとポジティブなホームレス
「あり得ない今を生きてるんだったら、あり得ない未来だってあるんじゃねえの?」
「そうやって、信じたいものを信じて生きる人生って、楽しいもんだよ」
もし、あたなら。
10パーセントの確率で訪れる幸せな未来と
90パーセントの確率で訪れる悲惨な未来。
そのどちらを信じますか。
***
心臓に病を患う和子(わこ)は、医者からアメリカでの手術を勧められるが、成功率10パーセントというあまりにも酷な現実に打ちひしがれ、渡米する勇気が出ずにいる。しかしこのまま日本にいても、死を待つだけ。
追い詰められた和子は、誰に何をされても気に食わない日々が続くが、そんな時出逢ったやたらとポジティブなホームレスに、段々と影響を受けていく。
幼ななじみの裕一にも支えられながら、彼女が前を向くまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる