始まりの竜

朱璃 翼

文字の大きさ
66 / 174
三部 神具編

触れられない心2

しおりを挟む
 二人のあとを追えば、宿屋の庭へと向かっていく。なぜと四人は思ったが、理由はすぐにわかる。

 黒耀と赤混じりの黒髪をした青年が、手合わせをしていたのだ。

「おーい、仲間が来たぜ。いつまでやってんだよ」

「うるさい! あとだあと!」

 盛大にため息をつく秋星。振り返り、どうするかなぁとぼやく。

「止めるの、お前の仕事だろ」

 呆れたようにユフィが言えば、心底嫌そうな表情を浮かべる。

 確かに止めるのは秋星がやっていたが、飛狛を止めろというのは、ある意味で命がけなのだ。

「やれやれ、しょうがねぇ。やるか……」

 このままだといつまでやっていのかわからない。腕輪を手にすると、二本の剣を取り出す秋星。二人が斬り結ぶ寸前に割って入り、どちらの攻撃も受け止めてみせた。

「ほら、終わりだ終わり」

 何事もないように言うが、飛狛の槍を受け止める腕が微かに震える。片手で押さえるには、かなり厳しいのだ。

「あー、わかったわかった。終わりにしようか」

 槍を引き戻し、一振りする青年。もちろんユフィは知っている人物であり、なんともいえない複雑な表情を浮かべる。

「ユフィいるぜ」

「あっ、ほんとだ。へぇ、じゃあ霜瀬さんの血族はその人だね」

 手合わせをしていたときとは真逆な雰囲気をした青年。

 笑うと少し女性的な一面を見せる。手合わせを見ていなければ、弱そうに見えたことだろう。

「あぁ。水鈴さんの血族、麒狛さんの血族。特にほら、フェンデの巫女は氷那ちゃんにそっくりだぜ! いやぁ、未来は楽しいなぁ!」

「嫌がってたのは、どこへいったんだよ」

 散々帰ろうと言っていたのだが、開き直ったら楽しむことにしたようだ。切り替えの早さはさすがだと思う。

 彼のこういった面は、時折見習いたいと思うほどだ。

「琅悸、タイミングが悪かったな。今日の船は出てしまったから二日後だぞ」

「そう、か」

 船よりもこの二人がなんなのか。琅悸はそちらの方が気になった。




 場所を移し、火炎山での出来事を四人に説明する。このまま過去からの来客が同行することも。

「俺達はなんもしねぇけどな」

「あんまり、未来に干渉するべきではないだろうからね」

 過去の魔法槍士と補佐官と言われれば、琅悸達もさすがに言葉を失う。

「まったく、白秋もとんでもねぇことすんな。仕掛けは?」

 ムスッとしながら腕を組むユフィ。こいつは本当に精霊か、と刺さる視線すら気にしないほど、不機嫌そうにする。

「火炎山で神具を使う。これ以外、見当がつかない。まだ他に手があるとは思うけど……あるとしたら、父さんの目に関するんじゃない。俺とは違うし」

 いくらなんでも、父親一人で出来ることだとは思っていない。誰か協力者がいるはずだ。それが母親の可能性は低いだろうから、誰か他の心当たりはある。

「帰って聞くさ。ユフィはわかんねぇけどな」

「ムキィー! こっちにいる間に解明しろー!」

 そんな無茶な、と誰もが思った。今現在、魔法槍士である飛狛がわからないというなら、やった本人にでも聞かなくてはわからないだろう。

 第一、長生きの精霊ならわかるんじゃないかとも言いたかったりする。冷静になればわかるだろうに、と。

 おそらく、そんな考えは塵ほどもないのだろう。

 ユフィと秋星が他愛ない言い合いを始めると、苦笑いしつつ飛狛は放置する。これは、過去の世界ではいつものことなのだろう。

「ところで、柊稀はどこですか?」

 柊稀と瑚蝶、それからもう一人の来客である夜秋。三人の姿が見当たらない。どうしたのかと氷穂が問いかける。

「あぁ、すぐに呼ぶ。バーバラに置いてきたからね」

 神具を手に入れた際の疲労が酷く、バーバラで休息をとらせたままほっといた、というのが正しい。

 琅悸達が来たらすぐに呼べばいいという、軽い気持ちだったのだ。

「夜秋がいるし、迎えに行ってくるよ」

 あっさりと言う青年に、どうやってと言いたげに蒼翔が見る。

「相変わらず、便利な力だなぁ」

 描かれていく魔法陣を見て、ユフィが呟く。

「朱秋のほうがいい力だろ。あいつ、一度見ただけで魔法も魔技も覚えるからね。さすがに、俺にはできない」

 そんな力があるのかと虚空は思ったが、精霊眼を持つのだと考えれば、それぐらいできて当たり前だったのかもしれないと考え直す。

「厄介だよなぁ。俺からすりゃ、お前の属性転換も嫌いだけどよ」

 苦笑いを浮かべながら飛狛が魔法を発動させる。その力は、一同を驚かせるには十分だった。




.
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―

酒の飲めない飲んだくれ
ファンタジー
俺は一度、終わりを迎えた。 でも――もう一度だけ、生きてみようと思った。 女神に導かれ、空の海を旅する青年。 特別な船と、「影」の船員たちと共に、無限の空を渡る。 絶望の果てに与えられた“過剰な恩恵”。 それは、ひとりの女神の「願い」から生まれたものだった。 彼の旅路はやがて、女神の望みそのものを問い直す。 ――絶望の果て、その先から始まる、再生のハイファンタジー戦記。 その歩みが世界を、そして自分自身を変えていく。 これは、ただの俺の旅の物語。 『祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―』

その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。 貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。 元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。 これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。 ※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑) ※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。 ※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。

慈愛と復讐の間

レクフル
ファンタジー
 とある国に二人の赤子が生まれた。  一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。  慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。  これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。  だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。 大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。  そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。  そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。  慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。  想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……

異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~

タカノ
ファンタジー
異世界へ転移し、聖女として崇められ、愛する家族に囲まれて88歳で大往生した……はずだった。 目が覚めると、そこは現代日本。 孤児の中学2年生、小金沢ヒナ(14)に戻っていた。 時間は1秒も進んでおらず、待っていたのは明日のご飯にも困る極貧生活。 けれど、ヒナの中身は酸いも甘いも噛み分けたおばあちゃん(88歳)のまま! 「もう一度、あの豊かで安らかな老後(スローライフ)を手に入れてみせる!」 ヒナは決意する。異世界で極めた国宝級の【補助魔法】と【回復魔法】をフル活用して、現代社会で大金を稼ぐことを。 ただし、魔法は自分自身には使えないし、中学生が目立つと色々面倒くさい。 そこでヒナがビジネスパートナー(手駒)に選んだのは―― 公園で絶望していた「リストラされた冴えないおっさん」と、 借金取りに追われる「ワケあり最強美女」!? おっさんを裏から魔法で強化して『カリスマ社長』に仕立て上げ、 美女をフルバフで『人間兵器』に変えてトラブルを物理的に粉砕。 表向きはニコニコ笑う美少女中学生、裏では彼らを操るフィクサー。 「さあ善さん、リオちゃん。稼ぎますよ。すべては私の平穏な老後のために!」 精神年齢おばあちゃんの少女が、金と魔法と年の功で無双する、痛快マネー・コメディ開幕!

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

僕らの10パーセントは無限大

華子
青春
 10%の確率でしか未来を生きられない少女と  過去に辛い経験をしたことがある幼ななじみと  やたらとポジティブなホームレス 「あり得ない今を生きてるんだったら、あり得ない未来だってあるんじゃねえの?」 「そうやって、信じたいものを信じて生きる人生って、楽しいもんだよ」    もし、あたなら。  10パーセントの確率で訪れる幸せな未来と  90パーセントの確率で訪れる悲惨な未来。  そのどちらを信じますか。 ***  心臓に病を患う和子(わこ)は、医者からアメリカでの手術を勧められるが、成功率10パーセントというあまりにも酷な現実に打ちひしがれ、渡米する勇気が出ずにいる。しかしこのまま日本にいても、死を待つだけ。  追い詰められた和子は、誰に何をされても気に食わない日々が続くが、そんな時出逢ったやたらとポジティブなホームレスに、段々と影響を受けていく。  幼ななじみの裕一にも支えられながら、彼女が前を向くまでの物語。

処理中です...