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六部 最終決戦編
父が残した物2
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「じゃあ、あれはじいちゃんの竜玉が核だっていうのか!」
話を聞いた飛狛は、驚いたように黒い鳥を見る。そんな危険な真似をするなど、思いもしなかったのだ。
竜玉は自分達にとっては命そのものだ。ヒビひとつでも命を失うかもしれない。
「はいですぅ。身体を構成するのも、すべて本人の魔力を使っているですぅ」
彼は父親から魔道生物の作り方を聞いている。だから知っているのだ。どのように造るのか。どれだけの魔力を使うのかも。
魔法槍士である限り竜玉の知識もある。祖父は一歩間違えれば、命の危険すらあることをやったのだ。
――いやはや、あの方らしいですね。命惜しまずですか――
「そんな危険な真似しないですよぉ。竜玉を調べて、近い性質の仮核を用意したですぅ」
必要なのは死んだ後。ならば、そのとき本人に竜玉を入れてもらえばいい、というのが白秋の考えだった。
一度だけ確認のために魔道生物を動かせたのだが、それ以降は必要になるまで眠らせた状態にしていたとも九兎は言う。
「竜玉を入れて、魔道生物が動くのか……さすが父さんだよ」
おそらく、父親が最後に造ったであろう魔道生物。四枚の翼を持ち、真っ黒だが優雅な鳥。
改めて、すごい父親なのだと思った。
鳥の中には、紅飛が使っていた黒水晶も入っていると九兎は言う。
「もしかしたら、同じ黒水晶に反応するのかもしれないな。使わなくなった黒水晶を砕き、分け与えた……」
通常は竜の神殿に保管されるのだが、歴代の魔法槍士の中には伴侶に与える者がいたことは、黒耀も知っている。
そのまま与えたり、加工したりするのだが、このような使い方は聞いたことがない。
「いや、すごい発想だ。ヤバイときに使えというのは、使うとこの鳥がくるってことなのだろう」
他にも効果はあるだろう。気になっているのは、黒い光が武器へ吸い込まれたことだ。なにか力を与えた可能性が一番高い。
それはこのあと双子を見ていればわかるか、と黒燿は思う。力を与えたなら、双子のなにかが変わるはずだと。
死んでもなお、家族を護れるように。そのような願いが込められている仕掛けだ。
――妻はカミュ殿がいれば危険はない。だから、夜秋殿と秋星殿のために残したのですね――
飛狛の傍へいることを選んだ息子へ、手助けできるものを残したのだ。
「やっぱ、じいちゃんには敵わないな。いろんな意味で」
魔法槍士としても、一人の男としても勝てないと思う。
だからこそ、祖父のようになりたいとも彼は思うのだ。
暖かい力が身体を包む。二人は父親が傍にいるような、そんな錯覚すら感じていた。
「父さん……」
「親父……」
この鳥は父親ではない。わかっているが、父親だと思ってしまう。
甲高い鳥の鳴き声に、二人の表情は苦笑いに変わる。
(なにを期待しているんですかね。しゃべると思ってるなんて、あるわけないのに。けど……)
「なぁ、叱られた気分だ」
「あなたもですか」
今の一声だけで、気分は叱られたような気持ち。父親が二人を叱っている。
なにをやっているんだ、と言われたような気持になり、二人の中で気持ちが変わった。その通りだと思ったのだ。
「未来に来て、父さんに叱られるなんて…」
「やってらんねぇぜ」
頭を掻きむしると、秋星はもう一本の剣を取り出す。一度気持ちを落ち着かせるよう、瞳を閉じた。
夜秋はそんな秋星を気にすることなく槍を構える。自分はいつでもやれるというように。
「あれでいいんだな」
頼るなと叱られた気がし、秋星は忘れていたことがあったと思いだす。
「えぇ、あれでいきましょう」
それは夜秋も同じこと。やったのは一回だけだったから、記憶の片隅に追いやっていたのだ。
確認はそれだけ。夜秋が動けば、それが合図だ。すべて任せたというように秋星が剣を構えた。
黒い気をまといながら、夜秋が一気に攻める。
「霊波槍!」
夜秋の槍は目に見えない波動を放つ。
元々、彼の槍は超音波を放つ性質があるのだ。聴覚へ影響を与えるものであり、魔力すら乱す。それらすべて父親に通じなかったのだが、目の前にいるのは造られた存在。
原理は魔道生物と同じなだけに、魔力を乱す性質は効果を発揮していた。もしかしたら、先程の黒水晶の効果もあったかもしれない。
確認すると、その背中を土台に秋星が飛び上がった。
「双・風斬激!」
風をまとう二本の剣。真正面から挑めば、紅飛はあっさりと吹き飛ばす。
けれどその瞬間、夜秋が秋星の腕を掴んだ。ここまでが計算のうちだった。
「風神粒刃!」
掴んだまま、再び紅飛へむけ投げつける。同時に秋星の魔技が放たれた。
「風の粒子? こんな手が…こんな技……」
姿の見えない何者かは驚いたように声をあげる。
風を粒子にして攻撃する、といった技は聞いたことも見たこともなかったのだ。つまり、彼のオリジナルということになる。
「これはな……唯一、親父から一本取った手なんだよ」
ニヤリと笑う秋星の剣が再び輝く。魔技の発動を示す輝きだが、なにかが違う。
「仕掛けは、十分だぜ」
赤いものが頬を流れていく。見た目のダメージは秋星の方が大きい。チャンスは一回しか残されていない。何回もやる余裕は、どちらも残されていないのだ。
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話を聞いた飛狛は、驚いたように黒い鳥を見る。そんな危険な真似をするなど、思いもしなかったのだ。
竜玉は自分達にとっては命そのものだ。ヒビひとつでも命を失うかもしれない。
「はいですぅ。身体を構成するのも、すべて本人の魔力を使っているですぅ」
彼は父親から魔道生物の作り方を聞いている。だから知っているのだ。どのように造るのか。どれだけの魔力を使うのかも。
魔法槍士である限り竜玉の知識もある。祖父は一歩間違えれば、命の危険すらあることをやったのだ。
――いやはや、あの方らしいですね。命惜しまずですか――
「そんな危険な真似しないですよぉ。竜玉を調べて、近い性質の仮核を用意したですぅ」
必要なのは死んだ後。ならば、そのとき本人に竜玉を入れてもらえばいい、というのが白秋の考えだった。
一度だけ確認のために魔道生物を動かせたのだが、それ以降は必要になるまで眠らせた状態にしていたとも九兎は言う。
「竜玉を入れて、魔道生物が動くのか……さすが父さんだよ」
おそらく、父親が最後に造ったであろう魔道生物。四枚の翼を持ち、真っ黒だが優雅な鳥。
改めて、すごい父親なのだと思った。
鳥の中には、紅飛が使っていた黒水晶も入っていると九兎は言う。
「もしかしたら、同じ黒水晶に反応するのかもしれないな。使わなくなった黒水晶を砕き、分け与えた……」
通常は竜の神殿に保管されるのだが、歴代の魔法槍士の中には伴侶に与える者がいたことは、黒耀も知っている。
そのまま与えたり、加工したりするのだが、このような使い方は聞いたことがない。
「いや、すごい発想だ。ヤバイときに使えというのは、使うとこの鳥がくるってことなのだろう」
他にも効果はあるだろう。気になっているのは、黒い光が武器へ吸い込まれたことだ。なにか力を与えた可能性が一番高い。
それはこのあと双子を見ていればわかるか、と黒燿は思う。力を与えたなら、双子のなにかが変わるはずだと。
死んでもなお、家族を護れるように。そのような願いが込められている仕掛けだ。
――妻はカミュ殿がいれば危険はない。だから、夜秋殿と秋星殿のために残したのですね――
飛狛の傍へいることを選んだ息子へ、手助けできるものを残したのだ。
「やっぱ、じいちゃんには敵わないな。いろんな意味で」
魔法槍士としても、一人の男としても勝てないと思う。
だからこそ、祖父のようになりたいとも彼は思うのだ。
暖かい力が身体を包む。二人は父親が傍にいるような、そんな錯覚すら感じていた。
「父さん……」
「親父……」
この鳥は父親ではない。わかっているが、父親だと思ってしまう。
甲高い鳥の鳴き声に、二人の表情は苦笑いに変わる。
(なにを期待しているんですかね。しゃべると思ってるなんて、あるわけないのに。けど……)
「なぁ、叱られた気分だ」
「あなたもですか」
今の一声だけで、気分は叱られたような気持ち。父親が二人を叱っている。
なにをやっているんだ、と言われたような気持になり、二人の中で気持ちが変わった。その通りだと思ったのだ。
「未来に来て、父さんに叱られるなんて…」
「やってらんねぇぜ」
頭を掻きむしると、秋星はもう一本の剣を取り出す。一度気持ちを落ち着かせるよう、瞳を閉じた。
夜秋はそんな秋星を気にすることなく槍を構える。自分はいつでもやれるというように。
「あれでいいんだな」
頼るなと叱られた気がし、秋星は忘れていたことがあったと思いだす。
「えぇ、あれでいきましょう」
それは夜秋も同じこと。やったのは一回だけだったから、記憶の片隅に追いやっていたのだ。
確認はそれだけ。夜秋が動けば、それが合図だ。すべて任せたというように秋星が剣を構えた。
黒い気をまといながら、夜秋が一気に攻める。
「霊波槍!」
夜秋の槍は目に見えない波動を放つ。
元々、彼の槍は超音波を放つ性質があるのだ。聴覚へ影響を与えるものであり、魔力すら乱す。それらすべて父親に通じなかったのだが、目の前にいるのは造られた存在。
原理は魔道生物と同じなだけに、魔力を乱す性質は効果を発揮していた。もしかしたら、先程の黒水晶の効果もあったかもしれない。
確認すると、その背中を土台に秋星が飛び上がった。
「双・風斬激!」
風をまとう二本の剣。真正面から挑めば、紅飛はあっさりと吹き飛ばす。
けれどその瞬間、夜秋が秋星の腕を掴んだ。ここまでが計算のうちだった。
「風神粒刃!」
掴んだまま、再び紅飛へむけ投げつける。同時に秋星の魔技が放たれた。
「風の粒子? こんな手が…こんな技……」
姿の見えない何者かは驚いたように声をあげる。
風を粒子にして攻撃する、といった技は聞いたことも見たこともなかったのだ。つまり、彼のオリジナルということになる。
「これはな……唯一、親父から一本取った手なんだよ」
ニヤリと笑う秋星の剣が再び輝く。魔技の発動を示す輝きだが、なにかが違う。
「仕掛けは、十分だぜ」
赤いものが頬を流れていく。見た目のダメージは秋星の方が大きい。チャンスは一回しか残されていない。何回もやる余裕は、どちらも残されていないのだ。
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