始まりの竜

朱璃 翼

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六部 最終決戦編

呪われた精霊

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 過去から来た三人と別れ、中庭を抜ける一同。抜けた先は再び石造りの神殿。

 入ってすぐの広間で、唐突に攻撃はやってきた。飛狛が言っていた精霊とやらだろう。

「魔法なら負けなくてよ!」

 すぐさま瑚蝶が結界を張る。琅悸が戻ったことで、彼に頼み結界魔法の強化をしていたのだ。

 仲間達を見て、攻撃より護りを強化したほうがいいと思ったのだ。みんなが自由に叩けるように。

 今までとは格段に違う強力な結界に、攻撃はすべて弾かれていく。

「やるじゃない。けど、竜族だからこそ防げない力もあるのよ!」

 次の瞬間、辺りを襲う力は結界を簡単に通り抜けた。琅悸が瞬時に結界を張るも、意味をなさない。

 種族の違いによる魔法の抜け道があるのだと、彼らは思い知った。

「……だったら、相手するのは俺しかいねぇよな」

――ユフィ殿!――

 一瞬にして襲いかかる力を弾き、今まで翳っていたのとは違い、力強く輝く金色の瞳をしたユフィがそこには立っていた。

 精霊が関わっていると気付いたとき、いざというときは自分が動こうと決めていたのだ。飛狛が離脱すると言った瞬間、相手をするのは自分しかいないと思い直す。

 過去から来た彼らがここまでやり、自分が動かないなどあり得ないとすら思っていた。

 光が溢れ、少女のような風貌をした精霊の姿が青年の姿へ変わっていく。

 輝く金色の瞳と溢れでる強い魔力の波動に、琅悸は驚いたように見た。隠し事があることはわかっていたが、ここまでの力を隠しているとはさすがに思わない。

「ユフィ……お前、何者だ」

 肌をピリピリと刺激する強い魔力。今まで意図的に抑えられていた力は、明らかに普通の精霊ではないと思わされた。

「ユフィ? そう……あなたが有名な呪われた精霊ね。バカよねぇ、呪いなんて受けなければ、あなたは精霊王になれたのに」

 呪いという言葉に誰もが驚く。精霊王になれたということよりもだ。

 悪戯好きではあるが、呪いをかけられるようなタイプではない。なぜそのようなことになってしまったのか。

「うるせぇな。どうだっていいだろ」

 吐き捨てるような言い方は、普段笑って悪戯をする精霊とは別人のように感じる。

 雰囲気もどことなく違う。なんとなくだが、威厳のようなものを感じるのだ。それは魔力による圧だったかもしれない。

――氷穂殿、歌を。巫女の歌をユフィ殿へ――

 なんとかしなければ、と黒欧は考えていた。彼はユフィのことをすべて知っていたのだ。

 どのような存在で、どのようなことがあったのか。その結果、彼が背負った呪いのことも。

「敵も精霊なんだよね? だったら、効果は二人へいっちゃうんじゃ」

 巫女の歌がユフィに効果を与えたとしても、敵まで受けたら意味がない。蒼翔は不思議そうに聞き返す。

――ユフィ殿だけへ、と願えばいいのです――

 精霊のためではなく、ユフィのために歌えと黒欧は言う。

 ユフィが背負う呪いがどのようなものなのか。それは、気付いてしまったというべきかもしれない。

 魔法槍士とオルドの繋がりが消えたあとも、個人的に交流があった黒欧。長い付き合いで、彼が背負うものが感じ取れてしまった。

 気付いたとき、ユフィは笑いながら内緒だと言ったのだ。

――華朱殿、精霊眼の力はどれ程やれますか――

「過去の魔法槍士みたいにはやれないけど、使いこなせるわ」

 なぜ華朱に問いかけるのかと誰もが思っただろう。精霊眼なら黒耀も使えるのに。

――精霊が見られて、精霊の力とやりあえるのは華朱殿だけです。魔法槍士は独自の使い方をするため、精霊眼のみしか継いでいませんので。ユフィ殿の力は強いですが、長時間の使用はできません――

「それが、呪いってこと?」

 見ただけでは、呪いを抱えているようには見えない。彼がどのような呪いを背負っているというのか、柊稀は気になった。

――使い続ければ、彼は死にます。それが、ユフィ殿にかかっている呪いの正体です――

 彼にこのまま戦わせてはいけない。戦わせれば、待っているのは死だけ。

「なっ…」

 さすがに琅悸も言葉を失う。長く自分達の家系を見守っていた精霊に、このような想像もつかない秘密があろうなど、思ってもいなかったのだ。

 いつもなら口出しをすることのない黒欧は、このときばかりは黙っていられなかった。

 飛狛を欠いたことがここにきて悔やまれる。だが、本来はいない存在。頼るわけにはいかないのだ。

 目に見えない相手との攻防戦。同じ精霊であれば、いくら姿を隠していても丸見えだ。

 そして驚かされたのは、ユフィは攻撃魔法が得意ということ。攻め立てていく威力は、おそらく瑚蝶を越えるだろう。琅悸ですら防ぐのは厳しいと思わせるほどだ。

 もうひとつ驚かされたのは、属性も問わないこと。大地を属性に持つ精霊だが、それ以外の力も使えるようだ。平然と炎に雷を放つ姿に、琅悸の手が握り締められた。

「強いじゃない、呪われた精霊!」

「そりゃ、呪われるぐらいだからな!」

「アハハ! そりゃそうだよね! 教えてよ、どれぐらい殺したのさ!」

 姿を消したままだが、ユフィには少女の姿をした精霊が見えている。残酷な笑みを浮かべ、平然と攻撃をする少女が。

(俺も…あんな顔してたんだな……)

 醜いと思った。少女の表情は醜く、過去を思いだすには十分すぎた。

 醜くて、醜くて忘れ去りたいけど、忘れられない記憶。忘れるなというように、目の前に昔の自分と同じ表情をした少女はいた。





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