始まりの竜

朱璃 翼

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六部 最終決戦編

呪われた精霊2

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 精霊は己の属性以外使うことはできない。能力も生まれ持ったもので、努力したら強くなるなんてことはない。能力はそのまま寿命の長さだとも言われているほどだ。

 精霊王はすべての力を持ち、すべての力を操ることができた。

「ユフィ、またサボってる!」

「うっせぇな! サシャには関係ねぇだろ!」

「もう! ユフィの力なら、精霊王にもなれるのに!」

「興味ねぇし」

 けれど、まれにすべての力を扱える精霊が現れる。それは決まっていて、精霊王の力が弱まった頃だ。

 そのため、その精霊は王になるために生まれ、世代交代をするように力を吸いとるのだとも言われていた。そうすることで、魔力と同時に知識も受け継いでいく。

「それで、ここにサボりにくるんだ」

「普通の精霊は立ち入り禁止だろ。うっせぇのが来なくて、いいんだよ」

 ユフィは生まれてすぐ、精霊王が認めた後継者。たくさんの精霊が監視する不自由な中で、ずっと生活していた。

 それに耐えきれず、逃げ出すように妖精族の元へ行っていた。

 妖精族の領域は、なぜか精霊は入れない。だが、精霊王は別だ。後継者であるユフィも、当然同じ扱いとなる。

 逃げる先としては最高だったのだ。

「なんで、精霊は入れないんだろうね」

「さぁな」

 サシャという妖精はここで最初に知り合い、ユフィが唯一気楽に話せる友人であった。

 精霊や妖精は子を作らないため、恋愛感情なんてものは存在しない。男女の違いもたいした意味はないと言われていた。

 だから、この関係もただの友人だと思っている。

「サシャは、俺に精霊王になってもらいたいわけ?」

「んー、よくわかんない。でもさ、なんか響きがいいじゃん!」

「はぁ?」

 響きがいいなんて言うとは、さすがに思わない。こいつはバカだ、と思ったほど呆れた。

 けれど、それでいいとも思う。だから彼女といるのは楽しいのだ。

「かっこよくない?」

「かっこよさで決めるのかよ」

「うん!」

 即答されれば、なにも返す言葉はない。

 属性は性格に影響すると聞いたが、ユフィは自分の属性と性格が真逆だと自覚している。

 だからこそ、余計に縛り付けられるのが嫌だった。身動きのとれない精霊王など、嫌で嫌でたまらなかったのだ。

 自由でありたい。まるで風のような性格だった彼は、とにかく自由を求め続けた。

 結果、唯一の友人を失うこととなる。

「……ふざけんな。ふざけんなぁ!」

 サシャのせいで、ユフィが妖精族のもとへ通う。後継者の監視役としていた精霊達は、そんな理由で集落から追い出した。

 追い出されたサシャは鳥獣族に捕まり、見世物のように扱われ死んでいった。

 殺生を嫌う精霊は、自分達で殺すことはしない。だから、違う形で死へ追いやったのだ。

 事情を知ったユフィが、怒り狂って精霊を殺したのが始まり。サシャを捜し回り、鳥獣族を殺し、竜族すら殺した。

 後継者というだけあり、力は竜族にすら劣らなかったのだ。すでに十分すぎるほどの力を、ユフィは持っていた。

 事態を重く見た精霊王により呪いをかけられたのだが、それでもユフィの殺戮は止まらない。

「死ぬまで…殺し続けてやる……」

 命などなんとも思っていなかった。自分の命すらどうでもよかったのだ。

 友人を失い、自暴自棄になっていたのかもしれない。

 命を削りながら殺しをしていたとき、彼は出会ってしまった。その後の運命を変える人物と。

「誰かいるのか? 精霊の気配だな」

 見た目は女性だが、声は間違いなく男のもの。よく見れば、隙があるようで隙がない。自然と警戒心が強まる。

「なぜ、わかった?」

 普通なら気付くことのない存在。けれど気付いた青年が、とても気になったのだ。

 なぜ、これだけ興味が惹かれるのだろうかと思ったほどだ。

「家に精霊がいたからな。属性も同じようだし。……なにか変だが」

(こいつ、ただ者じゃねぇ)

 家に精霊がいることも普通ではないが、ユフィが普通の精霊じゃないと気付いたこともおかしい。

 そして、雰囲気からもおかしなものを感じる。

「精霊がなにしに来た」

「……お前に用はねぇよ」

 相手にしてはいけない。自分の力でも、目の前にいる青年は殺せない。瞬時に力量差を察し、手を出さないと決めた。

 このときはこれで別れたのだ。互いになにかを感じ取り、関わりたくないと。

 その後、別の場所で二人は再会する。ユフィが殺しをしていた現場に、彼が現れたのだ。

「いつかの精霊か」

 気配だけで察してみせ、姿も見えない相手を攻撃した。

「殺しをする精霊がいるなんてな」

 困った住民が、旅で寄った霜瀬へ強引に頼み込んだのだ。姿の見えない襲撃者から護ってくれと。

「……だったらなんだよ。自分の手を汚さずに殺す精霊より、俺の方がマシだと思うぜ」

 さすがに今回は衝突を避けられない。簡単に逃れられる相手でもないとわかっていた。

 探りながらどうにかするしかない。

「そりゃそうだ。他者を利用するのは一番ダメだ。それに……俺は人のこと言える立場じゃない。罪のない民を殺すなとも言えない」

 言葉を聞いた瞬間、ユフィは興味が沸いた。目の前の青年は、間違いなくその手を汚している。

 自分と同じように殺しをしており、それが一人や二人ではない。かなりの数、殺していると言い切れる。

 サシャを失って以来、久しぶりに惹かれるものを感じ、ユフィは彼についていこうと決めた。

「そりゃいいが、つれがいるんだよな」

「女か? それは楽しいな」

 気まぐれだったが、彼を変えるには十分すぎる出会いであった。殺意しか持っていなかったユフィは、それらをすべて消し去るほど楽しい日々を過ごせたのだ。

 過去を捨てるように、姿を変えた。力を抑えることで、精霊独特の金色の瞳は翳り、同族ですら呪われた精霊だと気付かなくなった。

「なんも聞かねぇのな」

 察しているはずなのに、彼はなにも聞いてこない。なにかしら思うことがあるはずだというのに。

「言いたくないことを聞く必要はないしな」

 力を抑えるため、協力したのは彼だ。自分の力を抑えたように、ユフィの力を抑える魔具を作った。

「ただし、一度外せば戻せないからな」

 外すということは、壊すということになる。壊さなければ外れないものを作ったからだ。

「おぅ! 外すことなんてねぇからいいんだよ!」

 これを外すときは、死ぬときなのだと自分で自分に言い聞かせた。本当にそんな日がくればの話だ。

 姿を変えたことで、彼は過去のすべてを捨て去った。精霊に関わることもせず、彼と過ごすのだと。

「なら、いいけどな。俺の前で外すなよ。やるなら、死んだ後か離れたあとにしろ」

 詳しいことを知らなくても、なにかを察していたのかもしれない。

 自分の前で死ぬような真似はするな。それが彼からの唯一の頼みだった。





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