堕天使の愛

朱璃 翼

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前編

楽園へ入るルーメン3

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 目の前でラピエールが楽しそうに笑う。無邪気に笑う姿に、リュツィフェールの心が動かされていく。

 凍り付いた心が、たった一人の天使に解かされていく現状は、アルトゥスが戸惑うはずだと苦笑いを浮かべたほど。自分の身に起きれば、このようなことあるのかと思ってしまった。

 夕食後はみんなでくつろぐのも定番となり、のんびりと過ごしている。

「アルトゥス……熱上がってきたんじゃね」

 さすがに一晩で完全に引くわけがなく、怠そうに座る姿に寄り添う。顔を近づけると危険、と学んだのだろうか。

 ウィリディスは額を重ねることはせず、手を額に当てる。そんな行動に、アルトゥスは笑いながら見ていた。

「大丈夫だから、気にするな」

 怠いことだけは事実だが、やらかしたのは自分の落ち度だ。この程度のことで護衛の仕事に影響を出すこともない。

 楽園にいると忘れそうになるが、今までの暮らしを考えればどのような状態でも気を緩めることはできなかった。

「熱…」

「熱があっても動ける。そうじゃなきゃ、生きていけねぇ環境だったしな」

 だから気にするな、と言ってから後悔する。落ち込んだ姿に、言わなくていいことまで言ったと気付いたのだ。

 ぎゅっと服を掴む姿に、気にするなと頭を撫でる。

「翼も含めて、嫌なことはいくらでもあったが……お前は気にしないんだろ」

「しねぇよ。俺はアルトゥスを化け物とか思ってねぇもん」

 きれいな翼だろ、と言われると、誰もが驚くほど柔らかく笑う。それこそ、自分と同じと認識しているリュツィフェールですら驚くほどだ。

「あぁ…お前がこの翼をきれいと言うなら、俺は隠すことなく表に出し続ける」

 たった一人、きれいだと言ってくれるだけでこうも変われるのか。不思議な気持ちだとアルトゥスは思っていた。

「翼の色って、意味あるのか? ルーメンは水色なんだよな」

 なぁ、と呼びかけようとして、ストゥルティとふざけ合っている姿に苦笑いを浮かべる。いつの間にここが仲良くなったのか、と思ったほどだ。

「水色なのか?」

 少しばかり真剣な表情を浮かべたアルトゥスに、リュツィフェールが頷く。この話はストゥルティにしかしていなかったと思いだしたのだ。

 ウィリディスと寝ていたことから、話すタイミングを逃していた。

 今するべきか、と一瞬だけ迷ったが、ウィリディスのお陰で普通の会話として行えるかと判断した。

「ストゥルティと同じで、三枚羽根だった。お前のどぎつい真っ赤より、透き通った水色で目に優しい」

 いい色だったぞ、と言われれば、喧嘩を売ってるのかと睨む。彼は度々、アルトゥスの翼は目に優しくない、と言うのだ。

「あ、そういえば、ルーメンは水属性の魔法が得意だった。アルトゥスもそうなのか?」

 翼の色に関係があるのかわからないが、得意なんだとウィリディスが言えば、なるほどと頷く。翼が属性を表しているのかもということだ。

 それに関しては、あながち間違いではないと思っていること。

「俺は火属性が得意だ。だから、間違いではないと思う。そういった意味では、ウィリディスの色的に風属性ということになるが」

 魔力をあまり感じられないことから、どうなのだろうかと思っているアルトゥス。

「俺、そんなに強くないんだよ。だから、両親に男になれって育てられた」

 だからこれか、と二人が納得したように頷く。見た目は可愛い女の子なのだが、口調が男の子なのにはずっと疑問を持っていたのだ。

 ここに反発しているから、というのも考えていたが、聞くほどではないと思っていたところだった。

 魔力か、と小さく呟いたのはアルトゥス。自分の力が強い自覚を持っているだけに、ここだけは問題になるかもしれないと思ってのこと。

 両親がそう育てたということは、子を産むという部分に問題が生じるということ。

 力の弱い天使が、強い子を産むと命の危機に瀕することは有名だ。アルトゥスの力を継ぐ子ができてしまえば、死ぬかもしれない。

(まぁ、別に子供とかいらねぇか)

 作らなきゃいいだけの話だ、と考えを切り捨てれば、しっかりと抱き締める身体。遠慮しないどころか、隠す気すらなくなった姿に、リュツィフェールはなんともいえない表情を浮かべる。

「寒いのか?」

 寒気でもするのかと、心配するように見るから、そうではないがそうだと嘘をつく。そうしたら、もっとしがみついてくるかと思ってのこと。

 わざとやっていることに気付いたリュツィフェールが離れていくと、ホッとしたようにウィリディスがしがみつく。

 見られることに、少しばかり抵抗があるらしい。男になろうと思っていたことも、気持ち的には響いているのだろう。

 このまま自室へ連れ込もうか、などと考え始めた頃、ラピエールがタオルを持って現れた。

「ウィリディス、お風呂入ろう! あ、邪魔だったかな」

 二人の様子を見て、一人で入るべきかなと言うから、ウィリディスはそっと離れる。

「そんなことねぇよ。行こうぜ」

「よかったぁ」

 ずっと二人で生活してきたことから、お風呂も一緒に入るのが当たり前となっていた。二人の日課とでも言える行動だけに、アルトゥスも仕方ないと笑っている。

 ルーメンに取られることは許せないが、ラピエールは許せるという気持ちもあるのだが、言うと噛みつかれるとわかっているから言わない。

「ちょっと行ってくるな」

「あぁ。気にせずゆっくりしてこい」

 送りだせば、寝ようかと思ってすぐに諦める。ルーメンとストゥルティが騒いでいて、寝られる状態ではない。

 仕方ないから、誰かと話すかと見る。彼も自分と同じだとわかっているからこそ、話す必要があると思っていたのだ。

 これから、どうしていくのかについて。




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