堕天使の愛

朱璃 翼

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前編

惹かれていく感情2

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 ストゥルティはリュツィフェールと同じ集落の出。とあることがあって以降、ずっと一緒にいる。常に二人で行動していたから、自分以上にリュツィフェールを見る目が冷たいと知っていた。

 なぜ、と思う。少し周囲と違うだけで、なぜこう見られるのだろうか。自分達は選べないのだ。こうやって生まれてしまったのは、自分達がいけないわけではない。

 三枚という中途半端な翼は、不気味だと言われ続けた。

 六枚の翼をもつリュツィフェールとは、少しだけ扱いが違う。彼は強い力を持つから忌避されていたのだが、自分はそうではない。

 親から見捨てられ、孤立していたストゥルティにとって、傍にいてくれたリュツィフェールは支えでもあった。

「お前……きれいだな」

 ある日、たまたま出会ったのがアルトゥスだ。翼を見て、きれいだと言った。

「きれい? みんな不気味だって言うけど」

 三枚なんて不気味すぎると言われたのに、なんできれいと言うのかと視線を向ける。忌み子の証なのに。

 そう、自分は忌み子なのだ。理由も、このときストゥルティは知っていた。それで家族から捨てられたのだから。

 目の前に広がる四枚の真っ赤な翼。驚いて言葉を失えば、目の前で笑った天使は暗い目をしていた。

「俺の翼、血みてぇだろ」

 その瞬間、すべてがわかってしまったのだ。彼はそう言われ続けてきたのだと。ある意味で、自分と同じなのかもしれない。

 いや、自分達だと思う。リュツィフェールも翼の多さから化け物と言われているのだから、目の前にいる天使もそうだろう。

「血まみれの天使とか、化け物とか、殺人鬼……まぁ、色々言われたな。一応、まだ殺しちゃいねぇ」

 いつかはやるかもしれないが、と言うのを見て、ほっとけないと思ってしまった。

 以降、たまに会うようになったのだ。ここに来たら、自分が話し相手になれると言うことで。

 リュツィフェールに紹介するまで、そう時間はかからなかった。自分と以上に気が合ったようで、三人で行動するようになり、ストゥルティの成人と同時に集落を飛び出す。

 三人で生きていこう、と決めたのだ。そうすれば、周囲が望むような化け物にならないで済むかもしれないから。




 疲れ切って眠ってしまったルーメンを部屋で寝かせ、窓から空を見るストゥルティ。この空だけは、なにがあっても決して変わらない。

 リュツィフェールに救われた日。アルトゥスと出会った日。二人と集落を飛び出した日。なにも変わらないのだ。

「ルーメン……」

 眠っている幼い天使を見ながら、リュツィフェールから聞かされた話を思いだす。

 彼は言っていた。ルーメンは水色の三枚羽根だったと。

「三枚羽根……お前も、俺と同じなのか……」

 アルトゥスのような四枚や、リュツィフェールのような六枚は力の強さが比例していると言われている。

 たいして、三枚羽根だけは違う。この羽根は、混ざりものという意味を持つのだ。別の血が混ざっているから、天使としては中途半端ということ。

「知らないで育ったということは、少なくとも親は受け入れていたのか。なら、なぜ親元にいない」

 いつか聞けるだろうかと寝顔を見る。

 なにかあった際、対応を任せると言われた。確かに自分が一番理解できるだろうと思うのだが、親から愛されて育ったなら話は変わってくる。

 自分はそうではないから、受け入れられないかもと思ってしまったのだ。

 同じだが同じではない。親にどう思われていたかは、自分の中では大事なポイントだ。

(俺は…死にかけても冷たい目で見られるだけだった。リュフェがいなかったら、あのまま死んでいた……)

 彼がいるから、今の自分があるのだと言い切れる。だからこそ、どこかでリュツィフェールのために生きるのだと決めている部分がある。

 本人に言ったことはないのだが、命すら捨てられると思っていた。

「んぅ…」

 ゴロンと寝返りを打つ姿に、世話が焼けると布団をかけ直す。

 安心しきっている姿を見ると、命の危機に陥ったことはないのだとわかる。自分とは大違いだ。

(……でも、俺もリュフェ達に護られてたからなぁ)

 気の抜けない日々だったが、基本的にはリュツィフェールとアルトゥスが護ってくれていた。そういった意味では、こちら側かもしれないと思い、複雑な気持ちをどうすることもできない。

 もうしばらく様子を見ればいいか、と思った辺りで部屋を出ていく。いつまでもここにいたら仕事にならない。

 ルーメンは護衛対象ではないのだから。

 広間に戻ってみれば、リュツィフェールと風呂上がりのラピエールしかいない。それほど長くルーメンといたのか、と思わず反省する。

「ルーメンは?」

「寝ちまったよ。騒いだからなぁ」

「なぁんだ。つまらない」

 少し拗ねた様子に、ストゥルティは可愛いと笑う。主のために集められる天使だからか、ウィリディスといい可愛い天使だと思っている。

 判断基準に、そういったのがあるのではないかとすら思う。

「アルトゥスは、戻ったのか」

「あぁ。まだ熱が完全に引いてないからな。先に休ませた」

 いざというときは動けるとわかっているが、それでも万全な状態でいてもらいたいからと言われれば、その通りだけに頷く。

「ウィリディスも一緒?」

「おそらくな。あの状態だから、しばらくは一緒に寝ていそうだ」

「そっか…」

(アルトゥスが、まさか惚れるなんてな。たぶん、リュフェも……)

 惹かれているんだよな、と二人の様子を見ながら思う。だったら、護衛として全力で動かなければと気持ちを強めた。

 二人が惚れた相手なら、なにがなんでも護らなくてはいけないと。





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