24 / 69
前編
惹かれていく感情2
しおりを挟むストゥルティはリュツィフェールと同じ集落の出。とあることがあって以降、ずっと一緒にいる。常に二人で行動していたから、自分以上にリュツィフェールを見る目が冷たいと知っていた。
なぜ、と思う。少し周囲と違うだけで、なぜこう見られるのだろうか。自分達は選べないのだ。こうやって生まれてしまったのは、自分達がいけないわけではない。
三枚という中途半端な翼は、不気味だと言われ続けた。
六枚の翼をもつリュツィフェールとは、少しだけ扱いが違う。彼は強い力を持つから忌避されていたのだが、自分はそうではない。
親から見捨てられ、孤立していたストゥルティにとって、傍にいてくれたリュツィフェールは支えでもあった。
「お前……きれいだな」
ある日、たまたま出会ったのがアルトゥスだ。翼を見て、きれいだと言った。
「きれい? みんな不気味だって言うけど」
三枚なんて不気味すぎると言われたのに、なんできれいと言うのかと視線を向ける。忌み子の証なのに。
そう、自分は忌み子なのだ。理由も、このときストゥルティは知っていた。それで家族から捨てられたのだから。
目の前に広がる四枚の真っ赤な翼。驚いて言葉を失えば、目の前で笑った天使は暗い目をしていた。
「俺の翼、血みてぇだろ」
その瞬間、すべてがわかってしまったのだ。彼はそう言われ続けてきたのだと。ある意味で、自分と同じなのかもしれない。
いや、自分達だと思う。リュツィフェールも翼の多さから化け物と言われているのだから、目の前にいる天使もそうだろう。
「血まみれの天使とか、化け物とか、殺人鬼……まぁ、色々言われたな。一応、まだ殺しちゃいねぇ」
いつかはやるかもしれないが、と言うのを見て、ほっとけないと思ってしまった。
以降、たまに会うようになったのだ。ここに来たら、自分が話し相手になれると言うことで。
リュツィフェールに紹介するまで、そう時間はかからなかった。自分と以上に気が合ったようで、三人で行動するようになり、ストゥルティの成人と同時に集落を飛び出す。
三人で生きていこう、と決めたのだ。そうすれば、周囲が望むような化け物にならないで済むかもしれないから。
疲れ切って眠ってしまったルーメンを部屋で寝かせ、窓から空を見るストゥルティ。この空だけは、なにがあっても決して変わらない。
リュツィフェールに救われた日。アルトゥスと出会った日。二人と集落を飛び出した日。なにも変わらないのだ。
「ルーメン……」
眠っている幼い天使を見ながら、リュツィフェールから聞かされた話を思いだす。
彼は言っていた。ルーメンは水色の三枚羽根だったと。
「三枚羽根……お前も、俺と同じなのか……」
アルトゥスのような四枚や、リュツィフェールのような六枚は力の強さが比例していると言われている。
たいして、三枚羽根だけは違う。この羽根は、混ざりものという意味を持つのだ。別の血が混ざっているから、天使としては中途半端ということ。
「知らないで育ったということは、少なくとも親は受け入れていたのか。なら、なぜ親元にいない」
いつか聞けるだろうかと寝顔を見る。
なにかあった際、対応を任せると言われた。確かに自分が一番理解できるだろうと思うのだが、親から愛されて育ったなら話は変わってくる。
自分はそうではないから、受け入れられないかもと思ってしまったのだ。
同じだが同じではない。親にどう思われていたかは、自分の中では大事なポイントだ。
(俺は…死にかけても冷たい目で見られるだけだった。リュフェがいなかったら、あのまま死んでいた……)
彼がいるから、今の自分があるのだと言い切れる。だからこそ、どこかでリュツィフェールのために生きるのだと決めている部分がある。
本人に言ったことはないのだが、命すら捨てられると思っていた。
「んぅ…」
ゴロンと寝返りを打つ姿に、世話が焼けると布団をかけ直す。
安心しきっている姿を見ると、命の危機に陥ったことはないのだとわかる。自分とは大違いだ。
(……でも、俺もリュフェ達に護られてたからなぁ)
気の抜けない日々だったが、基本的にはリュツィフェールとアルトゥスが護ってくれていた。そういった意味では、こちら側かもしれないと思い、複雑な気持ちをどうすることもできない。
もうしばらく様子を見ればいいか、と思った辺りで部屋を出ていく。いつまでもここにいたら仕事にならない。
ルーメンは護衛対象ではないのだから。
広間に戻ってみれば、リュツィフェールと風呂上がりのラピエールしかいない。それほど長くルーメンといたのか、と思わず反省する。
「ルーメンは?」
「寝ちまったよ。騒いだからなぁ」
「なぁんだ。つまらない」
少し拗ねた様子に、ストゥルティは可愛いと笑う。主のために集められる天使だからか、ウィリディスといい可愛い天使だと思っている。
判断基準に、そういったのがあるのではないかとすら思う。
「アルトゥスは、戻ったのか」
「あぁ。まだ熱が完全に引いてないからな。先に休ませた」
いざというときは動けるとわかっているが、それでも万全な状態でいてもらいたいからと言われれば、その通りだけに頷く。
「ウィリディスも一緒?」
「おそらくな。あの状態だから、しばらくは一緒に寝ていそうだ」
「そっか…」
(アルトゥスが、まさか惚れるなんてな。たぶん、リュフェも……)
惹かれているんだよな、と二人の様子を見ながら思う。だったら、護衛として全力で動かなければと気持ちを強めた。
二人が惚れた相手なら、なにがなんでも護らなくてはいけないと。
.
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています
紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、
ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。
「もう君は、僕の管理下だよ」
退院と同時に退職手続きは完了。
住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。
外出制限、健康管理、過保護な独占欲。
甘くて危険な“保護生活”の中で、
私は少しずつ彼に心を奪われていく――。
元社畜OL×執着気味の溺愛社長
囲い込み同棲ラブストーリー。
遊び人の侯爵嫡男がお茶会で婚約者に言われた意外なひと言
夢見楽土
恋愛
侯爵嫡男のエドワードは、何かと悪ぶる遊び人。勢いで、今後も女遊びをする旨を婚約者に言ってしまいます。それに対する婚約者の反応は意外なもので……
短く拙いお話ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
このお話は小説家になろう様にも掲載しています。
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~
双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。
なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。
※小説家になろうでも掲載中。
※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる