堕天使の愛

朱璃 翼

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前編

惹かれていく感情3

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 自分も、と部屋に戻っていくストゥルティを見送りながら、ラピエールは寂しいなと俯く。いつもなら眠くなるまでウィリディスと騒いでいた。

 だからか、護衛という意味もあって全員が広間にいてくれる。すごく楽しい空間だったのにな、と思わず考えてしまった。

「どうした?」

 リュツィフェールだけが唯一傍にいてくれるが、これは護衛のためだ。わかっている、と視線を向けた。

 彼はここに仕事で来ているだけ。アルトゥスのことがあったから、ウィリディスのことで動いてくれたにすぎないのだ。

「そんな寂しそうな顔するな」

「だって…」

 寂しんだもん、と小さく呟く。ウィリディスはアルトゥスといるし、せっかく会えたルーメンも寝てしまった。

 アルノームは現状外にいる状態で、もっと楽しくなると思っていたのに違う結果となっている。

 考えていることはなんとなく理解できるのだが、リュツィフェールはどう接したらいいのかわからない。困ったな、と考える。

 ストゥルティを引き留めておくべきだったかもしれない、とすら思う。コミュニケーションに関しては、彼が一番いい。

「……一人にしないで」

 一人は寂しいとラピエールが言えば、思わず引き寄せていた。

(今……なにか思いだそうとした……)

 アルトゥスと話していた輪廻という言葉が脳裏をよぎる。本当にそのようなことがあって、昔の自分はラピエールと繋がりがあったのかもしれない。

 だから、こうも心動かされてしまうのかもと。

「リュフェ? どうしたの?」

 普段の様子から、こういった行動に出るとは思っていなかっただけに、少し驚いている。

 ラピエールの中でリュツィフェールは、なにを考えているのかわからない、という印象だ。三人でいるときは基本的に外から見ているだけ。会話に混ざることもあるが、聞いているだけが多い。

 六人で過ごしていても、やはり外で聞いているだけという印象しかなかった。表情もそこまで変わらず、仕事だからか笑顔を作ることもあるが、ほとんどが作り笑顔。

「僕、リュフェのこと知りたいな。いつも聞いてるばかりで、話してくれないから」

 今なら、彼のことが知れるかもと思い直す。他に誰もいないから、話してくれるかもと。

 少し困ったような表情を浮かべるのを見て、聞かない方がよかったのかと反省する。聞かれたくないことぐらいあるだろう。

「……悪い。俺の話は楽しくないと思う。ストゥルティのようにコミュニケーションも得意ではないしな」

「あ…」

 彼は話さないのではなく、苦手なだけなのだ。わかっているから、二人も気にせず話していられる。聞いているだけのリュツィフェールを置いていくようなことは、絶対にしないのだ。

 三人の様子がようやく納得できたラピエール。

「楽しい話じゃなくていいから、聞かせて。そうだなぁ、僕が寝付くまででいいよ」

 行こうと引っ張れば、戸惑いつつもリュツィフェールは頷く。

 少しだけ接し方に困っていたが、彼には積極的に行けばいいのだと思うことにした。向こうが受け身なのだと思えば、接し方もわかるというもの。

「三人でどう過ごしていたか、とかでいいよ」

 個人的なことを聞いても、今は答えてくれないだろう。なんとなくだが、そう感じていたラピエールは、三人でどう過ごしていたのか教えてと言いながら、自室へ入っていく。

 ベッドまでいけば、こっちと誘うからリュツィフェールの思考が止まる。これを受け入れるべきなのか、と悩んでいるのだ。

「リュフェ、お願い。一人で寝るの寂しいんだもん」

 しかし、彼はラピエールのお願いに弱い。たったの一言が、悩んでいたすべてを切り捨てさせた。

「フフッ」

 嬉しそうにしがみつく姿に、自然と笑みが浮かぶ。本人も気付かないほど、作りものではない表情が出るようになっていた。

「リュフェ達はずっと一緒なの?」

「いや、ずっとじゃない。ストゥルティは集落が一緒だったが、アルトゥスは気付いたらいた」

 同じ集落といっても、化け物と蔑まされていたリュツィフェールは、死にかけているのに放置されている姿を見るまで、ストゥルティのことを知らなかったのだ。

 あの出会いがなければ、アルトゥスと出会うこともなかっただろう。

(とはいえ、死にかけて放置など、言う必要もないか)

 うまく誤魔化しおこうと、出会いに関しては濁すことにした。

「アルトゥスは、ストゥルティが突然連れてきたんだ」

 だから、その手前が気になったらそっちに聞けと言われ、ラピエールが笑いながら頷く。いつか機会があれば、聞いてみようと。

 なるべく楽しい話になることだけを、とリュツィフェールが話す。三人でどのように過ごしていたか、という内容になればなんとかなるだろうと。

 純粋なラピエールに、自分達の苦労など話す必要はない。心のどこかに、醜い自分など知られたくないという気持ちもあった。

(わかっている。俺は、ラピエールに惹かれている)

 誤魔化せないところまで来ているのだ。どうやっても、自分を偽ることすらできない。

「寝たら…いなくなっちゃう?」

 眠くなってきたのか、ぼんやりとした眼差しが見上げてくると、リュツィフェールが優しく微笑む。ラピエールが驚くほど、優しい眼差しだったのだ。

「寝てもこうしていてやる。だから、眠いなら寝ていい」

 限界だろうと頭を撫でる。夜も遅くなってきたのだから、もう寝なさいと。

「よかった…」

 いなくならないと知ってホッとしたのか、ラピエールが寝付くまであっという間だった。

 腕に抱えた温もりが静かな寝息を立てる。無防備に寝ている天使は、自分のことを信頼しているのか、それとも意識していないだけなのか。

「おやすみ、ラピエール」

 どちらでもいいかと頭を撫でる。自分がこの天使を手放したくないと思う。気持ちとしてはこれだけでいいのだ。




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