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前編
悪魔の侵入
しおりを挟む何事もなく、平和な日々を過ごしていた。特に変りもなく、変化は護衛が無機質ではなくなったこと。こっそり忍び込んでいたルーメンが、下働きという形で楽園にいること。
そして、もう一人の遊び相手であるアルノームが、食材を届ける天使の中に混ざっていることぐらいだ。
さらにわかったことは、食材を届けていた天使がリュツィフェールと知り合いだったということだろうか。
「リューちゃん、頼まれてた食材はばっちりだよ」
リューちゃん、と気安く呼ぶ姿には、さすがにアルトゥスとストゥルティも驚いている。彼にこのような接し方をする知り合いがいるとは思っていなかったのだ。
「アルビオン…首に赤い痕があるが……」
「キスマークぐらい珍しくないだろ。これぐらいで動揺してたら、彼女できたときどうするんだよ」
いや、そうじゃないと思う、とはラピエールの内心。隣で、そうかと呟くのはウィリディスで、嫌な予感がすると表情を変えたのがアルトゥスだ。
(うん、間違ってないと思う。僕もね、ウィリディスが考えてることはわかる)
自分にもつけて、とか言いそうだなと思いながら笑って眺める。
気持ちを受け入れたどころか、応えたのはアルトゥスなのだから頑張れと内心エールを送ることに。
このあと、二人がちょっと騒いでいたのだが、誰も関わらずにほっといたのは言うまでもない。勝手にしてくれ、というのが全員の総意だった。
事件が起きたのは、ある日の夜。この事件が、彼らの運命を大きく変えていくことになるのだ。
「ウィリディス…女になるか悩んでるの?」
「は? なんで?」
「だって…」
いつも通りお風呂に入っていて気付いた変化。最近、変わっているような気がしていて、いつぶつけようかと思っていたことだ。
性別がない未成年は、どちらになりたいと思っているかが身体に出てしまう。女になりたいと思えば、女の身体に変化していき、男になりたいと思えば、男の身体に。
不思議なことで、気持ちひとつで身体が自然と変わっていってしまうのだ。
少し前までは完全な男だったウィリディスの身体は、最近丸みを帯びてきている。アルトゥスとの関係が、確実に変化を起こしているのだろう。
「もしかして、変わってきてる?」
身体を見ていたからか、変化しているのかとウィリディスも気付く。本人には自覚がなかったのだ。
「うん」
誤魔化しても仕方ないことから、素直にそうだと言えば、ウィリディスは少し戸惑ったように視線を泳がせる。
本人もわかっているのだ。アルトゥスといるために、女になるかどうかを考えていたからこそ、身体に変化が起きてしまったのだろうと。
「アルトゥスは成人済み。性別は固定されてて、変わらないもんね」
一緒になるということは、自然と女になるということになる。今まで男になろうとしていたウィリディスには、少しばかり抵抗があるのかもしれない。
どうするのかと問いかければ、考えているところだと小さく呟く。
「わかってんだ。でもさ、今更女っぽくなんてなれねぇし…」
男になるよう育てられたことも大きいだろう。両親がどちらになってもいいように育てていたら、こうまでも悩まない。
このまま性別だけ女になる。それでもアルトゥスはなにも言わないと思えたが、それでいいのかと自分自身が思ってしまう。
「まっ、あと二年あるし。変化するかもしれねぇし、このままかもしれねぇ。最終的には、アルトゥスと話して決めるさ」
今すぐ女になることは考えられないが、成人までの間に気持ちが変わるかもしれない。アルトゥスといることで、なにかしらの変化があるだろう。
そう思えば、急ぐ結論じゃないと言えば、ラピエールも同意するように頷く。
身体も洗い終わり、湯に浸かろうと立ち上がった瞬間、背筋を悪寒が走った。
「ほぉ……中々の可愛い天使じゃないか。当たりを引けたようだ」
そんな声が聞こえたと思えば、目の前に一人の天使が現れる。どこかいやらしい顔をした天使に、本能が違うと叫ぶ。
あれは天使ではない。悪魔だと訴える。
次の瞬間、昔襲われていた天使の姿が脳裏に過った。あれもこいつらなのかもしれないと思えば、自分達が狙われているのだということもわかる。
「いや…」
あんな目に遭うのだけは嫌だ、とラピエールが一歩引く。
逃げなくては。風呂から出れば、外にはリュツィフェール達がいるのだから助けてくれる。そう思っても、風呂場の入り口は悪魔の後ろだ。
どうしたらいいのかと悩んでいれば、急に身体が動かなくなる。
「えっ…どうして……」
なぜ動かないのかと、自分の身体を見下ろす。
「暴れられると面倒なのでね」
嫌な笑い声を漏らしながら近寄ってくる悪魔に、ラピエールは嫌悪で凍り付いた。
ドサッと音を立てて押し倒された身体。襲われていた天使と自分が重なり、息が苦しくなる。
「ラピ!」
慌てたように駆け寄ろうとしたウィリディスだが、同じように身体が動かないのか、悔しげに表情を歪めた。
「順番に可愛がってやる。じっとしていろ。幸いにも、どちらも可愛い天使だからな」
「くっ…」
必死に動こうとするウィリディスを笑いながら見れば、悪魔の視線はラピエールに戻る。こちらからだというように。
「い、いや……」
恐怖で震える身体と、容赦なく触れてくる悪魔の手。風呂場だから当然、隠すようなものはなにも見に着けてはいない。
「あっ…やっ…やだっ…」
悪魔の手は身体を撫でまわし、ざらついた舌が舐める。なにかの力で動けなくなっている身体は、悪魔の手で容赦なく蹂躙されていった。
恐怖で涙がポロポロと零れ落ちれば、それすらざらついた舌が舐めとっていく。
「涙もうまいとは、本当に上玉の天使だ。嫌だと言うわりには、感じているようだしな」
女の部分に触れ、濡れた指をわざとらしく見せつければ、ラピエールは息が詰まりそうになる。
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