27 / 69
前編
悪魔の侵入2
しおりを挟む息がうまく吸えない。助けてという言葉すら、発することができなくなっていた。次になにをされるかなど、考えたくもない。
「んあっ…」
指が女の部分を撫でている。男の部分には興味がなく、完全にこちらを狙っているのだとわかれば、ラピエールの身体が痙攣を起こす。
やばいと思ったのは見ていることしかできないウィリディスだ。このままだと、ラピエールの心が壊れるともがく。
助けなくては、という気持ちだけで必死に足掻いた。
「ラピ! 俺の声が聞こえるか!」
おかしな音を立てながら呼吸をする姿に、くそったれと怒鳴る。身体が動かないウィリディスには、暴言を吐きだすことしかできないからだ。
(俺が、弱いから……)
もっと強い力を持っていれば、こんなことにはならなかったかもしれない。悔しさで震えながら、それでも抗うのだと悪魔を睨みつける。
「ふむ…威勢のいいガキだな。それほどまでにもやられたいというなら、お前を先にやってやろう。こちらは、どっちが先でもいいからな」
悪魔がニヤリと笑った瞬間、ウィリディスの視界は変わっていた。
押し倒されたのだと気付くのに、数秒を要した。ハッとしたときには遅く、ざらついた舌が身体を這っている。
「お前は、口は悪いが胸に膨らみがあるな」
「やめろっ…さわ…なっ…」
迷いが生じたことで、微かに膨らみを持つ胸へ手を伸ばす悪魔。気持ち悪いと思いながら、それでも怯えた姿など見せるものかと、強気な態度を崩さないウィリディス。
負けてなるものか、という気持ちだけでなんとか立ち向かっているが、結局身体は動かない。
「うっ、くっ…ああっ…」
「さっきまでの威勢はどこにいった?」
「うっせぇ!」
気持ち悪くてたまらない感覚に、なんとか堪える状態。睨みつけることだけは忘れないようにしているが、それしかできない。
笑いながら身体を撫でまわす手は、どうみてもわざとやっている。ウィリディスの反応を見ながら楽しんでいるのだ。
(助けて……アルトゥスっ…助けて……)
ぎゅっと目を瞑り、悪魔が触るのを耐えた。これだけ怒鳴り散らして誰もこないということは、来られないようになっているのかもしれない。
もしもそうなら、ウィリディスには絶望でしかなかった。
自分に触れていいのは、主でも悪魔でもない。アルトゥスだけなのだ。彼以外に触れられたくないと強く思う。
「ククッ…その目を絶望で壊したくなるな」
態度だけは変わらない姿を見て、悪魔は面白いと女の部分に手を伸ばす。濡れているのを知れば、ニヤリと笑って見せつける。
これが現実だと突きつけるように。ウィリディスのすべてを壊してやろうと。
「どうやら成人前の子供みたいだが、ここはしっかりと濡れるのだな」
「くそが…誰がお前なんか! うわっ…くっ…あぁっ…」
ふざけるなと罵ろうとした瞬間、指が入ってくる感覚に、激しい嫌悪で気持ち悪くなる。吐きそうなほどで、自分の中でなにかが警告を発し始めた。
「いやだっ…やめっ…」
壊れると、ウィリディスが手を握り締める。このままだと自分が壊れてしまう。
気持ち悪いのに感じてしまう自分に、これ以上は耐えられない。なにかが音を立てて崩れていく。うまく息を吸えなくなり、胸が苦しいと表情が歪む。
「アル…トゥス……」
助けてと小さく呟くと、ウィリディスの頬を涙が零れ落ちた。
酷い苦しみの中、女の部分になにかが宛がわれていると知る。
「ウィリ…ディス……」
弱々しいラピエールの声に、ごめんと心の中で呟く。護れず、助けを呼ぶこともできずにごめんと。
自分がやられたら、次は間違いなくラピエールだ。わかっていても、ウィリディスは己が壊れていく音しか聞こえていない。
「俺の天使に手をだしやがって、許さねぇぞ!」
暗闇に落ちる寸前、ずっと求めていた声が聞こえてきた気がして、ウィリディスが少しだけ持ち直す。
「しっかりしろ! ウィリディス!」
視界に真っ赤な翼を捉え、現実なのだと知る。アルトゥスがやってきてくれたのだと。なにかを伝えようとするが、うまく声はでない。
ごめん、と唇が微かに動き、身体が力を失う。自分はこのまま死ぬのかもしれない。アルトゥスの腕の中で死ねるなら、それもいいかもしれないと目を閉じる。
その瞬間、唇に触れる温もりと、流れ込む温かい気を感じ取った。アルトゥスが気を送り込んでいるのだと、最後にそこまで考えて意識を手放す。
.
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています
紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、
ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。
「もう君は、僕の管理下だよ」
退院と同時に退職手続きは完了。
住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。
外出制限、健康管理、過保護な独占欲。
甘くて危険な“保護生活”の中で、
私は少しずつ彼に心を奪われていく――。
元社畜OL×執着気味の溺愛社長
囲い込み同棲ラブストーリー。
遊び人の侯爵嫡男がお茶会で婚約者に言われた意外なひと言
夢見楽土
恋愛
侯爵嫡男のエドワードは、何かと悪ぶる遊び人。勢いで、今後も女遊びをする旨を婚約者に言ってしまいます。それに対する婚約者の反応は意外なもので……
短く拙いお話ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
このお話は小説家になろう様にも掲載しています。
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~
双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。
なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。
※小説家になろうでも掲載中。
※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる