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22話 レモネード
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今日は私もアダムも休みだったため、丘に行って2人で持ち寄ったサンドイッチの試食会をすることになった。喫茶店の季節限定の商品を決めるためだ。
私も一応頑張って作って来たものの、アダムの作ったサンドイッチの方がすごくおいしそうに見える。すぐにでも食べたい。
「ねえ、アダムのから食べても良い?」
「いいよ! はい、どうぞ」
そう言われ、ラッキーと思いながらアダムのサンドイッチを手に取った。しかし、アダムはじっと私を見ているだけだ。
「アダムは食べないの?」
そう尋ねると、アダムはニコニコと笑いながら口を動かした。
「僕は味を知ってるからね。シェリーの感想を聞いてから食べるよ」
「そっか! じゃあ、お先にいただきます」
「召し上がれ」
そう言われ、私はサンドイッチを1口食べた。その瞬間、口内は美味しさの波に包まれた。食べる前から美味しいことは分かっていたけど、想像よりもずっと美味しかった。それを1口で感じられるのだから、アダムの料理は本当にすごい。
「どうかな?」
キラキラとした眼差しで問うてくるアダムに、今の彼らしさを感じる。昔の怯えて傷付いた表情をした彼からは考えられない姿だ。
「アダムの作るサンドイッチはいつ食べても本当に美味しいわね!」
サンドイッチを飲み込んだ後、美味しいことを伝えるとアダムが突然手を伸ばして来た。そして、親指を私の唇の端の口角あたりに滑らせてニコッと笑った。
「ついてたよ! こんなにもシェリーが喜んでくれるなら僕も嬉しいな」
そう言うと、しれっとアダムはその親指を舐めた。
「このソースは結構自信があったんだよね」
自信があったと言いながら破顔する彼だが、私の心は大爆発だ。彼にこんなことをされたのは出会って以降初めてだ。心臓がバクバクと鳴っている。
鏡を見なくても分かる。私の顔面はもう言い逃れも出来ないほど、真っ赤に染め上がっているだろう。すると、アダムはそんな私を見て、え、と口を動かすと、慌てたようにご、ごめん! と言って顔を真っ赤にした。
顔の熱を引かせるために、一口しかサンドイッチ食べてないのに、アダムが作ってきてくれたレモネードを一気飲みする。何も食べてないくせに、つられるようにアダムも一気飲みしてる。
一口だけしか食べていないサンドイッチは完全に消えてしまった。その代わり、一瞬で冷たいレモンの波に飲まれてしまった。口の中は完全にレモネードの味しかしない。
それでも私の顔の熱は引かず、またアダムの顔も赤いままで、互いに沈黙が続いた。だが、とうとうアダムが口を開いた。
「あの、さ……、シェリー。もう気付いてるかもしれないけど、じ、実は僕、ずっと前から君のことが好きだったんだ……!」
「えっ……」
驚きのあまりつい声が漏れる。
「け、け、け、け、結婚を前提に、ぼっ僕と付き合ってくれませんか……!?」
あまりにも唐突な告白だった。
――うそ、この私が好きな人と結ばれるなんてこんなことあっていいの?
死んだりしない?
「わ、私があなたの、こっ恋人になってもいいの……?」
「当たり前だよ。だって僕が好きなのはシェリーだ。君じゃなきゃ意味がない。僕はシェリー、君と恋人になりたいっ……」
彼は恥ずかしそうにして一瞬俯こうとしていた。しかし、私が何を言っているのか分からなくなると思ったのだろう。必死に真っ赤な顔を上げながら、伝えてくれた。そのことが、痛いほどに伝わってきた。
彼の赤らんだ頬に、緊張で少し潤み美しさを極めたタンザナイトの瞳は、完全に私の心を射貫いた。いや、もうすでに射貫かれているのだが……。
私は自身の恋が叶ったことの喜びと嬉しさもあり、思わず衝動的に彼に抱き着いた。だが、気付いた。
――彼は私に正面から好きと勇気を出して伝えてくれたのよ。
だったら、私も彼にきちんと正面から伝えなきゃ……!
そう思い、私はそっとアダムから離れ、しっかりと彼の顔を見て告げた。
「私もあなたのことがずっと前から好きだったの……。私と恋人になってください」
そう言うと、彼は緊張の面持ちだった彼の顔に、まるで花が咲いたような笑顔が広がった。そして、彼は今までずっと耐えていたとでもいうように、ギュッと私のことを抱き締めてくれた。
まるで少年少女のような告白だ。だけど、私たちにはこれくらいがちょうどいいのかもしれないなんて思った。こうしてアダムと思いが通じ、ひとしきり抱き合った後離れて、互いにもう一度向き合った。
すると、彼が顔を真っ赤にしながら話しかけてきた。
「君さえ良ければ、キ、キ、キス……! してもいい、かな?」
――いきなりのキス!?
ちゃんと聞いてくるところが彼らしくて、ついときめいてしまう。
「お、お願いしますっ……!」
――お願いしますって、何言ってるの私……!
恥ずかしいっ……。
そんなことを思っていたが、アダムは私の答えを聞きじゃあ……と呟き、とても緊張した面持ちで彼はそっと両肩に手を添えた。そして、彼の顔が徐々に近づき、お互いの唇が重なった。プレッシャーキスだった。
彼の柔らかい唇がそっと離れ、目を開けると真っ赤な顔の彼が目に映る。彼にも私の真っ赤な顔が映っただろう、お互いに見つめ合いつい笑顔がこぼれる。
「愛してるよ、シェリー」
「私も愛してるっ……アダム」
こうして、私たちは片思いだと思っていた私たちは付き合うことになった。
「ねえ、アダム? 初めてのキスはレモンの味がするっていうけど、私……本当にレモンの味になっちゃた……。いや、正確にはレモネードの味かな?」
「何それ? 初めて聞いたよ! じゃあ、僕の場合もその説は立証されたってことだね」
――アダムの初めてが他の誰かじゃなくて、私なのね! 嬉しい!
お互いこの歳で初めて同士だけど、私たちは私たちのペースで楽しめたらいいよね……。
嬉しくなり、つい笑い声が漏れる。すると、アダムも私の笑いにつられて笑い出した。
こうして私たちは付き合うことになり、この日も私たちは幸せな時間を過ごした。
私も一応頑張って作って来たものの、アダムの作ったサンドイッチの方がすごくおいしそうに見える。すぐにでも食べたい。
「ねえ、アダムのから食べても良い?」
「いいよ! はい、どうぞ」
そう言われ、ラッキーと思いながらアダムのサンドイッチを手に取った。しかし、アダムはじっと私を見ているだけだ。
「アダムは食べないの?」
そう尋ねると、アダムはニコニコと笑いながら口を動かした。
「僕は味を知ってるからね。シェリーの感想を聞いてから食べるよ」
「そっか! じゃあ、お先にいただきます」
「召し上がれ」
そう言われ、私はサンドイッチを1口食べた。その瞬間、口内は美味しさの波に包まれた。食べる前から美味しいことは分かっていたけど、想像よりもずっと美味しかった。それを1口で感じられるのだから、アダムの料理は本当にすごい。
「どうかな?」
キラキラとした眼差しで問うてくるアダムに、今の彼らしさを感じる。昔の怯えて傷付いた表情をした彼からは考えられない姿だ。
「アダムの作るサンドイッチはいつ食べても本当に美味しいわね!」
サンドイッチを飲み込んだ後、美味しいことを伝えるとアダムが突然手を伸ばして来た。そして、親指を私の唇の端の口角あたりに滑らせてニコッと笑った。
「ついてたよ! こんなにもシェリーが喜んでくれるなら僕も嬉しいな」
そう言うと、しれっとアダムはその親指を舐めた。
「このソースは結構自信があったんだよね」
自信があったと言いながら破顔する彼だが、私の心は大爆発だ。彼にこんなことをされたのは出会って以降初めてだ。心臓がバクバクと鳴っている。
鏡を見なくても分かる。私の顔面はもう言い逃れも出来ないほど、真っ赤に染め上がっているだろう。すると、アダムはそんな私を見て、え、と口を動かすと、慌てたようにご、ごめん! と言って顔を真っ赤にした。
顔の熱を引かせるために、一口しかサンドイッチ食べてないのに、アダムが作ってきてくれたレモネードを一気飲みする。何も食べてないくせに、つられるようにアダムも一気飲みしてる。
一口だけしか食べていないサンドイッチは完全に消えてしまった。その代わり、一瞬で冷たいレモンの波に飲まれてしまった。口の中は完全にレモネードの味しかしない。
それでも私の顔の熱は引かず、またアダムの顔も赤いままで、互いに沈黙が続いた。だが、とうとうアダムが口を開いた。
「あの、さ……、シェリー。もう気付いてるかもしれないけど、じ、実は僕、ずっと前から君のことが好きだったんだ……!」
「えっ……」
驚きのあまりつい声が漏れる。
「け、け、け、け、結婚を前提に、ぼっ僕と付き合ってくれませんか……!?」
あまりにも唐突な告白だった。
――うそ、この私が好きな人と結ばれるなんてこんなことあっていいの?
死んだりしない?
「わ、私があなたの、こっ恋人になってもいいの……?」
「当たり前だよ。だって僕が好きなのはシェリーだ。君じゃなきゃ意味がない。僕はシェリー、君と恋人になりたいっ……」
彼は恥ずかしそうにして一瞬俯こうとしていた。しかし、私が何を言っているのか分からなくなると思ったのだろう。必死に真っ赤な顔を上げながら、伝えてくれた。そのことが、痛いほどに伝わってきた。
彼の赤らんだ頬に、緊張で少し潤み美しさを極めたタンザナイトの瞳は、完全に私の心を射貫いた。いや、もうすでに射貫かれているのだが……。
私は自身の恋が叶ったことの喜びと嬉しさもあり、思わず衝動的に彼に抱き着いた。だが、気付いた。
――彼は私に正面から好きと勇気を出して伝えてくれたのよ。
だったら、私も彼にきちんと正面から伝えなきゃ……!
そう思い、私はそっとアダムから離れ、しっかりと彼の顔を見て告げた。
「私もあなたのことがずっと前から好きだったの……。私と恋人になってください」
そう言うと、彼は緊張の面持ちだった彼の顔に、まるで花が咲いたような笑顔が広がった。そして、彼は今までずっと耐えていたとでもいうように、ギュッと私のことを抱き締めてくれた。
まるで少年少女のような告白だ。だけど、私たちにはこれくらいがちょうどいいのかもしれないなんて思った。こうしてアダムと思いが通じ、ひとしきり抱き合った後離れて、互いにもう一度向き合った。
すると、彼が顔を真っ赤にしながら話しかけてきた。
「君さえ良ければ、キ、キ、キス……! してもいい、かな?」
――いきなりのキス!?
ちゃんと聞いてくるところが彼らしくて、ついときめいてしまう。
「お、お願いしますっ……!」
――お願いしますって、何言ってるの私……!
恥ずかしいっ……。
そんなことを思っていたが、アダムは私の答えを聞きじゃあ……と呟き、とても緊張した面持ちで彼はそっと両肩に手を添えた。そして、彼の顔が徐々に近づき、お互いの唇が重なった。プレッシャーキスだった。
彼の柔らかい唇がそっと離れ、目を開けると真っ赤な顔の彼が目に映る。彼にも私の真っ赤な顔が映っただろう、お互いに見つめ合いつい笑顔がこぼれる。
「愛してるよ、シェリー」
「私も愛してるっ……アダム」
こうして、私たちは片思いだと思っていた私たちは付き合うことになった。
「ねえ、アダム? 初めてのキスはレモンの味がするっていうけど、私……本当にレモンの味になっちゃた……。いや、正確にはレモネードの味かな?」
「何それ? 初めて聞いたよ! じゃあ、僕の場合もその説は立証されたってことだね」
――アダムの初めてが他の誰かじゃなくて、私なのね! 嬉しい!
お互いこの歳で初めて同士だけど、私たちは私たちのペースで楽しめたらいいよね……。
嬉しくなり、つい笑い声が漏れる。すると、アダムも私の笑いにつられて笑い出した。
こうして私たちは付き合うことになり、この日も私たちは幸せな時間を過ごした。
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