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第二夜 性少年のジレンマ
10.その夜。もし、この夜、俺が――な、きっかけ。はじまり。
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それから1時間ほどして店を出た。
なんとなく家に帰る気分でもなくって、でもどこに行きたいっていうのもない。
俺、なんなんだろ?
最近いっつもぐだぐだ悩み過ぎてる。
実優ちゃん好きだったときも結構悩んでたから――やっぱ、松原のこと諦められないってことなのかな。
ため息が出てしまう。
吐き出した息は熱くって、酒のせいで全身火照ってる。
いつもなら酔ってないはずなのに、気が滅入ってるからか悪酔いしてる気がした。
蒸し暑い夜風にまたため息ながらふらふら歩き続けて、気づいたら見覚えのある公園にいた。
「……ストーカーかよ、俺」
そこは……松原のマンションの近くにある公園だった。
ありえねぇ……。
もう何回目だろうってくらいのため息をついて、自販機でコーヒーを買う。
プルタブを引いて、無糖のコーヒーを一飲みする。
空を見上げたら一瞬満月かなって思ったけど、よく見たら欠けてて――なんだ、ってちょっとがっかりする。
本当に俺なんなんだろ? 恋する乙女かよ、ってくらいに感情が沈みまくってる。
自分の感情がうっとうしくってコーヒーを一気に飲み干した。
空になった缶を4メートルほど離れたゴミ箱に投げる。
もし――、一発で缶がゴミ箱に入ったら……マンションの前まで……行っていいかな。
会えなくっても。
そんなくだらないことを賭けながら見守る視界で、コーヒー缶は放物線を描いてゴミ箱に落ちていった。
「……見るだけ……だし」
実優ちゃんがいないときに俺がひとりあの部屋に上がることはない。
それに偶然マンション前で松原に会うことだってきっとない。
ただ――もう一回……。
自分に言い訳しながらゆっくり俺は松原のマンションへと足を進めてた。
空を見ながらぼんやり歩いてたから、マンションの前に一台の車が止まってることに気づいたのは結構近くに来てからだった。
松原だったら、って一瞬どきりとしたけど、車が違うからそれもない。
でも――……。
「……実優ちゃん?」
黒の車。その車体の前に立っている二人の男女。
片方は俺がよく知っている――俺の好きだった女の子・実優ちゃんだった。
じゃあもう一人は……?
スーツを着た、かなりのイケメンが実優ちゃんを優しい目で見下ろしてる。
20代半ばくらいの誠実そうな、松原とは全然違う雰囲気のひと。
実優ちゃんはそのひとにすごく楽しそうに、幸せそうに笑いかけていて。
直感で――このひとが実優ちゃんの……ゆーにーちゃんなんだって、わかった。
実優ちゃんの叔父さんで、だけど元カレ。
実優ちゃんは前、松原とこのひとの間で揺れて、すごく苦しんでた。
お互いがお互いを大切に想って、最終的には実優ちゃんは松原と結ばれた。
でも元カレだけど、叔父だから縁は切れたりしない。
ふたりがなにを喋ってるのかはわかんねーけど、ふたりの間に割り込めないくらい……なんかいい空気な気がする。
「……」
あの人……ゆーにーちゃん……優斗さんは……まだ実優のこと好きなんじゃねーの?
柔らかい笑顔でそっと実優ちゃんの頭を撫でている姿に、そう思わずにはいられなかった。
チリチリ胸の奥が焼けるような気がする。
なんか、すげぇ嫌な気分だった。
大切な……家族なんだろうけど、でも、松原が……可哀想だ。
俺だったら家族だからってわかってても、あんなに親密そうな雰囲気見たら絶対嫉妬する。
それにもうすぐ夜の10時だっていうのに、こんな遅くまで二人っきりだったりすんの?
筋合もないのに俺がイライラしてしまってた。
そして少しして実優ちゃんは手を振ってマンションに入っていく。
それを優斗さんは笑顔で見送って――実優ちゃんの姿が消えてから煙草を取り出していた。
口に咥えて火をつけている姿は、正直意外だった。
なんとなく煙草なんて吸わなそうなイメージに思えたから。
だけど煙を吐き出す姿は様になっている。
さっきまであった微笑は消えてて、ぼんやりしているような表情で空を見上げていた。
――やっぱりこのひとって……まだ実優ちゃんのこと……。
俺はただその場に立ちつくして固まったように動けないでいた。
なんか……妙に切ない気分になって。
しばらくして煙草を吸い終えた優斗さんは携帯灰皿に吸殻をしまって、車に乗り込むために動き出した。
そして、俺と――目があった。
なんとなく家に帰る気分でもなくって、でもどこに行きたいっていうのもない。
俺、なんなんだろ?
最近いっつもぐだぐだ悩み過ぎてる。
実優ちゃん好きだったときも結構悩んでたから――やっぱ、松原のこと諦められないってことなのかな。
ため息が出てしまう。
吐き出した息は熱くって、酒のせいで全身火照ってる。
いつもなら酔ってないはずなのに、気が滅入ってるからか悪酔いしてる気がした。
蒸し暑い夜風にまたため息ながらふらふら歩き続けて、気づいたら見覚えのある公園にいた。
「……ストーカーかよ、俺」
そこは……松原のマンションの近くにある公園だった。
ありえねぇ……。
もう何回目だろうってくらいのため息をついて、自販機でコーヒーを買う。
プルタブを引いて、無糖のコーヒーを一飲みする。
空を見上げたら一瞬満月かなって思ったけど、よく見たら欠けてて――なんだ、ってちょっとがっかりする。
本当に俺なんなんだろ? 恋する乙女かよ、ってくらいに感情が沈みまくってる。
自分の感情がうっとうしくってコーヒーを一気に飲み干した。
空になった缶を4メートルほど離れたゴミ箱に投げる。
もし――、一発で缶がゴミ箱に入ったら……マンションの前まで……行っていいかな。
会えなくっても。
そんなくだらないことを賭けながら見守る視界で、コーヒー缶は放物線を描いてゴミ箱に落ちていった。
「……見るだけ……だし」
実優ちゃんがいないときに俺がひとりあの部屋に上がることはない。
それに偶然マンション前で松原に会うことだってきっとない。
ただ――もう一回……。
自分に言い訳しながらゆっくり俺は松原のマンションへと足を進めてた。
空を見ながらぼんやり歩いてたから、マンションの前に一台の車が止まってることに気づいたのは結構近くに来てからだった。
松原だったら、って一瞬どきりとしたけど、車が違うからそれもない。
でも――……。
「……実優ちゃん?」
黒の車。その車体の前に立っている二人の男女。
片方は俺がよく知っている――俺の好きだった女の子・実優ちゃんだった。
じゃあもう一人は……?
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20代半ばくらいの誠実そうな、松原とは全然違う雰囲気のひと。
実優ちゃんはそのひとにすごく楽しそうに、幸せそうに笑いかけていて。
直感で――このひとが実優ちゃんの……ゆーにーちゃんなんだって、わかった。
実優ちゃんの叔父さんで、だけど元カレ。
実優ちゃんは前、松原とこのひとの間で揺れて、すごく苦しんでた。
お互いがお互いを大切に想って、最終的には実優ちゃんは松原と結ばれた。
でも元カレだけど、叔父だから縁は切れたりしない。
ふたりがなにを喋ってるのかはわかんねーけど、ふたりの間に割り込めないくらい……なんかいい空気な気がする。
「……」
あの人……ゆーにーちゃん……優斗さんは……まだ実優のこと好きなんじゃねーの?
柔らかい笑顔でそっと実優ちゃんの頭を撫でている姿に、そう思わずにはいられなかった。
チリチリ胸の奥が焼けるような気がする。
なんか、すげぇ嫌な気分だった。
大切な……家族なんだろうけど、でも、松原が……可哀想だ。
俺だったら家族だからってわかってても、あんなに親密そうな雰囲気見たら絶対嫉妬する。
それにもうすぐ夜の10時だっていうのに、こんな遅くまで二人っきりだったりすんの?
筋合もないのに俺がイライラしてしまってた。
そして少しして実優ちゃんは手を振ってマンションに入っていく。
それを優斗さんは笑顔で見送って――実優ちゃんの姿が消えてから煙草を取り出していた。
口に咥えて火をつけている姿は、正直意外だった。
なんとなく煙草なんて吸わなそうなイメージに思えたから。
だけど煙を吐き出す姿は様になっている。
さっきまであった微笑は消えてて、ぼんやりしているような表情で空を見上げていた。
――やっぱりこのひとって……まだ実優ちゃんのこと……。
俺はただその場に立ちつくして固まったように動けないでいた。
なんか……妙に切ない気分になって。
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そして、俺と――目があった。
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