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第四夜 性少年の決断
54.俺が好きなのは……?
しおりを挟むどんどん身体が冷えて悪寒に身体が震えてようやく家に入った。
ベッドを背もたれ代わりにして床に座り込む。
自分の部屋の空気に少しだけ落ち着いてため息が出た。
「……なんで、俺なんだよ」
どうすればいいのか本当にわからない。
いままで告白されたことなんて何回もあるけど……。
正直言って、前実優ちゃんを好きになったことより前にちゃんとした恋愛をしたことあるかっていうとないような気がする。
自分で言うのもなんだけど女の子には不自由なかったし、告白されて別に好きじゃなくっても付き合ったこと何回もあるし。
つーか最悪だけど、ほとんどそうだったし。
でもそういう恋愛ばっかりしてたらダメなんだって思ったきっかけは実優ちゃんで、告白して撃沈して。
そのあとディープキスで松原の好きな気がして、そして優斗さんに出会って――智紀さんに出会って……。
流されるままにセックスしたけど、前までと違ってなんかずっとモヤモヤしてたのは、たぶんそんなことシていいのかって思ってたから。
それに、優斗さんがそういう……セフレだとかの関係を持つってことに違和感も覚えてたから。
でもだからって――優斗さんが俺を好き?
土曜日のことを思い出してみたら……あれって嫉妬なんだって納得は出来るけど……。
……つーか、それに智紀さんが俺に一目ぼれって。
「ねーだろ……」
なんでよりによって俺なんだろ。
だって優斗さんも智紀さんもめちゃくちゃ仕事出来てカッコよくて優しくてさ。
俺なんかじゃなくって可愛い女の子とか……。
モテそうだし、別に俺じゃなくて……。
そこまで考えて、ズキズキって心臓が痛んだ。
「あああー!!! くそっ!」
頭の中がこんがらがって、考えなきゃなんねーことと、想うことがうまく噛みあわない。
智紀さんも……優斗さんも……ちゃんとガキの俺に自分の気持ち伝えてくれたんだから、しっかり考えなきゃなんねーのに。
――でも。
どっちか選ぶってことは……どっちかを振るってことだよな?
――俺が?
それこそ、ねーだろ……。
「……あー……」
なんで、こんなことになったんだろ。
俺がバカだから?
快感に弱いから?
「しょーがねーじゃん! 若いんだから!!」
自分で考えて自分に言い訳して――、アホか、俺。
男同士のセックスなんて前なら考えたこともなかった。
それを経験して、ハマったのは事実で。
「しょーがねーじゃん!!! あの人たち無駄にうまいんだから!!!」
またまた自分にツッコミして、脱力した。
のそのそとベッドに上って、突っ伏す。
落ち着きたくて、すこしだけなんにも考えないでいてみようって目を閉じた。
でもなんにも考えないようにするのに、考えてないはずなのに、ぎゅうぎゅうに頭ん中が詰まってるみたいにしこりが取れない。
俺は――誰が好きなんだろう。
優斗さんに出会って、それで……ずっとあっているうちに好きなのかもって思ったりもした。
智紀さんに出会って、飯食って喋ってたらすっげぇ楽しくって、優斗さんのことすっかり忘れたりしてた。
優斗さんに抱かれる感覚は、身体が覚えてる。
でも智紀さんに告白されたときに公園で抱きしめられた感覚はまだ残ってて。
「――……」
なにをどう考えても、考えようとしても、行き詰まっちまう。
ぐるぐると答えがでないまま、眠れもしないままずっと考えた。
全部の発端から今日までのこと、全部。
苦しかったけど、全部、思い返して。
最後に、俺を罰ゲームでべろちゅーしてきやがったあの元教師に心ん中で悪態ついて――松原が言った言葉を思い出した。
もし……。
"智紀や優斗さんがお前以外のやつと――……"
俺以外の男と?
それか誰からも祝福される女?
智紀さんと優斗さんが。
「……っ」
――イヤだって、思った。
ズキズキする。
そのズキズキは――本当は最初っから……あった。
男の俺よりも女の人を相手にしたほうがいいって思うのに――……なんかそれがイヤだって、心の端で思ってしまってた。
あの人が女でも男でも俺以外の人とって考えたら、すっげぇイヤでしかたないって気持ち。
でも、俺は男でまだ高校生で、相手は社会人で。
いいのかなって、不安で。
でも、でも……。
"好き"って言われた言葉が俺の中に響いて苦しくて。
「――……俺だって……好き、だし」
俺しかいないのに、相手はいないのに、ぽつり呟いた。
認めてしまえばどんどんあっという間に自覚して気恥ずかしくなる。
けど、素直に喜べないのは、ずっと俺に優しくしてくれてたあの人を振ることになるから。
二人のことははっきり"好き"だって思えるけど、でも、"好き"の意味が違うから。
ぎゅっときつく目を閉じて頭ん中を少しだけ整理した。
それからしばらくしてポケットからスマホを取り出した。
もう早朝って言える時間を表示させていた。
逃げずに、ちゃんと俺の気持ちを伝えようって決めたのはまたそれからしばらくしてから。
俺が電話をかけたのは少し寝て、昼起きてからだった。
「――もしもし」
ドキドキもしないくらいに心臓が重く緊張してる。
コール音が途切れて、向こうから声が聞こえて、俺は声を絞り出した。
「あの……話したいことがあるんだけど」
まじで胸が痛い。
だけどはっきりさせておかなきゃなんねぇ。
あの人に"好き"だって言う前に――あの人との関係をはっきりさせておかなきゃならない。
「うん。じゃあ……6時に」
そして電話を、切った。
***
12月だから陽が沈むのは早い。
夏だったら明るい時間でも冬はもう夜だし。
空気も全然違う。
ゆっくりとため息をつくように細く吐きだした息は白かった。
壁にもたれてぼんやり暗い空を見ていたら、よく知った車が俺の前に停まった。
ウィンドウが開いて、いつもと変わらない笑顔が向けられる。
「待った? 捺くん」
「――大丈夫」
俺も小さく笑顔を返して。
――優斗さんの車に乗り込んだ。
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