BLINDFOLD

雲乃みい

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第五夜 性少年の嫉妬

第15話

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 松原はすぐに目を伏せて笑うと立ち上がった。
「先、上がるな」
「あ、うん」
「向井」
「……なに」
「お前、一度ちゃんと優斗と話ししろ」
「……は?」
「ちゃんと胸にあるもの言ってみろ」
「……」
 ねーよ、そんなもん。
 そう言ったけど、小さすぎて松原に聞こえたかはわからない。
 湯船に半分顔を沈めた俺に松原の声が響く。
「優斗にとってお前もたった一人、ってこともちゃんと頭に入れておけよ」
 そして内湯に続くドアが開閉する音が響いて、露天風呂には俺だけになった。
「はー……」
 ぱしゃんとお湯を手で揺らしながら空を見上げる。
 まだ明るい空。
 もちろん夕方だから少し暗いけど。
 もともと風呂に長く入る方じゃねーから、俺も上がりたくなってきた。
 でも部屋にも戻る気になれなくて岩の上に座って涼む。
 ――優斗にとってお前もたった一人、か。
「……そんなん……知ってるっつーの」
 ちゃんと、優斗さんが俺のことを大事にしてくれてるのなんて痛いほどわかってる。
 わかってる、けど。
 俺は――なにもわかっていなかった。
 松原の言った言葉の本当の意味を、なにも。
 のぼせるくらい露天風呂に入って、そして少し休憩してから部屋に戻った。
 部屋の入口には靴があって優斗さんが帰ってきてるのがわかった。
「ただいま」
 そう言って中に入ると寛いでいた優斗さんが俺を見上げる。
「お帰り。お風呂行ってたんだね」
「うん。ごめん、先行って」
 一緒に入ろうって言ってたのは俺だったのに。
「いや、いいよ。まだ部屋風呂もあるし。俺こそ散歩に行ってごめんね」
 実優が誘いに来たんだけど、捺くんよく寝てたから。
 って、ちゃんと優斗さんは隠さずに話してくれた。
 そうなんだ、って笑って頷いて。
「いーよ。俺ずっと寝てばっかりだし。優斗さんにも楽しんでもらわなきゃだし」
 座椅子じゃなくって畳にそのまま座り込んで脚を伸ばす。
 まだ身体はぽかぽかして熱いままだ。
 手うちわで仰いでいたら、
「ありがとう。――なにか飲む?」
 室内にある冷蔵庫をあけて訊いてくれる優斗さん。
「えーと、じゃあコーラ」
「了解」
 差し出されたコーラを受け取って、よく冷えているのを一気に近い感じでごくごく飲んだ。
 炭酸と冷たさが身体の中に落ちていく感じにでっかいため息ついて缶をテーブルに置くと横になった。
「まだ眠い?」
「ううん。ちょっと長湯しすぎたかも」
 俺のすぐそばに座った優斗さんが俺の顔を覗き込む。
「大丈夫?」
「うん」
 さっき寝てしまったときみたいに優斗さんが俺の髪を梳く。
 よく優斗さんは髪を撫でてくるけど、たぶん癖なんだよなぁ。
 そんなこと考えながらぼうっと優斗さん見つめてたら、影が落ちてだんだん顔が近づいてきた。
 あ、と思って目を閉じる。
 唇が触れてきた。
「冷たい」
 でもすぐに離れて優斗さんが目を細める。
「え? ああ、コーラがすっげぇ冷えてたからかな」
 唇を指でなぞられながら答えてたらまた塞がれて今度は舌が入ってくる。
「……ん」
 歯列なぞって舌を吸い上げられる。
 火照っていた身体にぞくぞく刺激が走る。
 優斗さんの手が浴衣越しに腰を触ってきた。
「……優斗さん」
 唾液のまじる水音を響かせながら唇が離れていって、どうもスイッチが入ってるっぽい優斗さんを見つめる。
「ご飯……何時だっけ」
「ん? 7時。あと30分くらいあるよ」
 言いながらそのまま手は動き続けてる。
「……30分しかないよ? あ、あのさ……夜、ゆっくりシよーよ?」
 俺の身体の熱を上げるように動く指先に少し身体を震わせながら言ってみた。
「うん。そうだね、夜はゆっくりね」
「……夜は……って」
「だって湯上りで浴衣で、捺くん色っぽいから。少しだけ」
「色っぽい……?」
 んなことないよ、って言いかけたけどまた口塞がれた。
「ゆ、うと……さん」
 気持ちいいけど夕食までそんな時間ねーし。
 わかったのかわかってねーのかよくわかんねーけど、とりあえず手の動きは止まってキスだけ交わした。
「これ以上はヤバイかな」
 散々咥内荒らした後、笑いながら優斗さんは俺を解放してくれた。
「……ヤバイどころじゃないよ。俺、大丈夫かな」
 半分くらい反応しかけてる俺の息子を必死で宥める。
「キツイなら抜いてあげようか?」
 からかうように俺の耳で囁く優斗さんに少し口尖らせて首を振る。
「いいよ」
「なんで?」
「だって恥ずかしいし、このあと夕食なのに」
 さすがにヤってすぐあとに松原と実優ちゃんに会うのは気が引ける。
 ていうかちょっとだけ――この旅行ではシないかも、とか思ってた。
 だってさ、部屋は違うけど実優ちゃんも一緒に来てるから、なんとなく。
「そうだね。じゃあ、あとでゆっくり、ね?」
 だけどそうじゃなくて、いつもと同じに触れ合ってくれるのが嬉しかった。
「うん、メシ食いまくって体力つけてから」
 俺の言葉に優斗さんが可笑しそうに笑ってまたキスして、夕食までの時間を過ごした。


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