BLINDFOLD

雲乃みい

文字の大きさ
89 / 124
第五夜 性少年の嫉妬

第24話

しおりを挟む
 優斗さんのベッドで寝てるってのはわかったけど、どうしているんだっけ?って寝ぼけた頭で考えながら電話に出る。
『もしもし、捺くん?』
 聞こえてきた優斗さんの声に、そういや見舞いに来てたんだったって目がはっきり覚めた。
 ベッドサイドにある時計を見ると12時半を過ぎていた。
 結構寝てたな。
「うん」
『いま大丈夫?』
「へーき。いま優斗さんのマンションだよ」
『まだいてくれてたんだね』
「うん。実優ちゃんにお昼ご飯用意しようかなと思って」
『ありがとう。捺くん』
 スマホ越し、顔は見えなくっても優斗さんは微笑んでるんだろうなって気配で感じる。
「ううん。俺も心配だったし」
『テスト勉強は大丈夫?』
「参考書持ってきてるから勉強するし」
『そう? ならいいんだけど』
 ベッドに寝転がったまま話す。
 優斗さんの部屋で、優斗さんの匂いがそばにあるからか変な感じだ。
 そばにいるような気がするのに優斗さんは仕事中。
『そうだ、捺くん。今日は定時であがるから早く帰れるんだ。だから、もしよかったら』
「……」
『待っててくれたら』
 優斗さんの誘いは嬉しい。
 夕食と、送るって言葉と、会いたいって思ってくれる気持ちはすっげぇ嬉しい。
 でもさ。
「……ごめん、優斗さん。明日のテスト英数でさ、今日は家で勉強してなきゃ、お袋に怒られそうなんだ。だからもう少ししたら帰るよ」
『そっか。そうだね。ごめんね、テスト期間中なのに』
「ううん。俺こそごめん」
 罪悪感に胸が疼く。
 別にテスト期間中だっていつもなら平気で入り浸ってる。
 でも今回は実優ちゃんが風邪引いてるし、それに――。
『じゃあ、夜にまた連絡するよ』
「ん。仕事頑張って」
『ありがとう』
 それに――。
 電話が切れて、一回枕に顔埋めてから起き上がる。
 皺の寄ったシーツを綺麗にして部屋を出た。
 キッチンに行ってお粥を小さい鍋に少しだけ移して温める。
 水と薬とお粥とトレイに乗せて実優ちゃんの部屋に行った。
「実優ちゃん」
「……ん」
「お粥少し食べて、薬飲んでおこう?」
 寝てるのに悪いなって思ったけど、起こしてお粥を食べてもらって。
「美味しい」
 ほとんど食べれてなかったけど、たぶん味覚もなさそうな気がしたけど、それでも実優ちゃんは嬉しそうにお粥を食べて笑顔になった。
 きっと実優ちゃんはもう何回も優斗さんの手料理を食べてるんだろうな。
 って、すっげぇ当たり前のことを考える。
「実優ちゃん、薬飲んだらまた寝るんだよ?」
「ん……。捺くん、ありがとう」
「早くよくなって。松原と優斗さんも心配してるからさ」
「うん」
 素直に頷いて、薬飲んでまた横になる実優ちゃんを見届けて食器を片づけにキッチンに戻る。
 皿とコップだけだからすぐに洗い終えて、空腹感じた。
 来る前にコンビニで買ってきてたパン食って、優斗さんが帰ってくる前には帰ろうって時計見た。
 疲れてんのにわざわざ送ってもらうのも悪いし。
 それに。それに――ここは優斗さんと実優ちゃんの"家"で。
 わかってはいるけど、昔のことだってわかってはいるけど――ここでずっと二人は一緒に住んでたんだって考えてしまう。
 実優ちゃんが松原と暮らしてるときにはなかった実感が、どうしても沸く。
 二人はもうただの叔父と姪なんだからなんもねーってわかってんのに。
 実優ちゃんは風邪で寝込んでるってわかってんのに。
 一緒にこのマンションで過ごしてるっていうのが……単純に嫌だった。
 "しょうがない"のに。
 実優ちゃんに触れる優斗さんを、見たくなかった。
 俺って――……まじで馬鹿だな。
 いつからこんな女々しくなったんだろって自分に呆れながらパンを食べた。
 紙パックのカフェオレ飲んで参考書広げる。
 静かなリビングでの勉強ははかどるような、そうでないような。
 早く帰りてーような、もうちょっといなきゃいけないような、変な気分。
 実優ちゃんの具合が思ったより悪そうだったから、優斗さんもきっとすげえ心配してるだろうなって思うと――もう少しいなきゃかなって。
 とにかくまじで明日のテストは勉強しておかなきゃヤベーから、集中して勉強に取り組んだ。
 そして時間も忘れてひたすら問題集の問題といてたら、小さい物音がした。
 何気なく音のした方に視線を向けるとリビングのドアが開いてて相変わらず顔を赤くした実優ちゃんが立っていた。
「どうしたの、なんかあった?」
 シャーペンをテーブルに投げだして立ち上がると実優ちゃんは咳き込みながら首を振った。
「ううん。トイレに行っただけなの。そしたら捺くんの靴がまだあったからびっくりして」
 声は張りが全然なくて弱々しい。
 壁時計見るともう4時を指してた。
 俺どんだけ集中してたんだ。すげーな。
 なんてどうでもいいこと思いながら、立ってるのもきつそうな実優ちゃんの傍に歩み寄った。
「ああ、勉強してたんだ。もう帰るよ。実優ちゃんひとりで大丈夫?」
「……うん。捺くん」
「なに?」
 とりあえず部屋に戻ろうって実優ちゃんの部屋に向かいながら見上げてくる実優ちゃんを見下ろす。
「ゆーにーちゃんからメールきてたんだけど」
「……ん」
「今日は早く帰ってくるって。もう…ちょっと待ってたら会えると思うよ……?」
 ごほごほと咳しながら口元を押さえて、詰まりながらも喋る実優ちゃん。
「あー……」
 優斗さんは定時に終わるって言ってたから、あと二時間くらい居れば余裕で帰ってくるだろーな。
「今日は帰るよ。勉強道具ほとんど家だし。明日の英数どっちも俺苦手だからさ。勉強してないとヤバイから」
「……そっか」
 ベッドに座った実優ちゃんは残念そうに俺を見つめる。
「鍵は俺が締めるから、実優ちゃんはゆっくり寝てて」
 それに笑顔で返しながらベッドに横になるよう促した。
「……捺くん、ごめんね」
 ――なにがごめんなのかが、わかんねー。
 深い意味なんてないだろうし。
 単に心配かけてごめんって意味なんだろうけど。
 平気だよ、って言葉のかわりに笑顔のまま首を振った。
 それから実優ちゃんにちゃんと寝てるようにって言って、目を閉じるのを見届けてから部屋を出た。
 帰る準備を始める。
 カバンに教科書や参考書やら突っ込んで、ちゃんと片付けてから玄関に向かった。
「……」
 靴履いて、ドアノブに手をかける。
 無意識にため息が出て外に出た。
「……雨かよ」
 曇り空から雨が降ってきてた。
 でもそんなにひどくない。
 小雨だ。
 駅まで走ってもたぶんたいして濡れないよな。
 傘持ってきてないし、仕方なく雨の中走って帰った。


しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

チョコのように蕩ける露出狂と5歳児

ミクリ21
BL
露出狂と5歳児の話。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

処理中です...