BLINDFOLD

雲乃みい

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第五夜 性少年の嫉妬

第25話

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 その日の夜、7時くらいに部屋で勉強してるときに優斗さんから電話があった。
 実優ちゃんは相変わらず高熱らしい。
「あんまり熱続くみたいなら病院連れてったほうがいいんじゃないの」
『……そうだね』
 いまいち反応は薄い。
 それは実優ちゃんが病院嫌いだから、だ。
 風邪引いても病院がいやで診察にいかない。
『明日様子見て、奈央に頼んで診てもらおうかと思ってるよ』
 奈央さんっていうのは優斗さんの高校時代の友達で産婦人科医。
 会ったことはないけど、奈央さんとその旦那さんで優斗さんの親友の直之さんの話は優斗さんから聞いてた。
「……なら安心だね」
 わざわざ奈央さんに頼んで診てもらうとか――ぶっちゃけ過保護だなって思うけど。
『実優は結構昔から熱が出やすいタイプだから……風邪こじらせてるだけだと思うんだけどね』
「そうなんだ。今日きつそうだったな、実優ちゃん」
『ああ……今日はお見舞い本当にありがとう』
「別に、気になってたから」
『……捺くん』
「なに?」
『夕方まで居てくれたんだって?』
「……あー」
 優斗さんにはすぐに帰るって言ってたんだ。
 ちょうど夕方実優ちゃんに会ったから、そのせいだろうな。
 机から離れてベッドに腰掛けて、なんて言おうか迷って、そのままのことを言う。
「ちょっと勉強してたら珍しく集中しちゃってて」
 もしかしたら1時間半くらい待ってたら、会えたかもしれない。
 優斗さんは――少しでも俺に会いたいって思ってくれたのかもしれない。
「急いで家帰ったら、早く勉強しろってお袋に言われてずっとしてたよ」
 会いたくなかった、なんて思われたくねーし。
 少しだけ大げさに話した。
 ほんとは帰り道雨宿りと気分転換かねて駅近くの本屋で時間つぶして、家に着いたのは6時くらいだった。
 友達んちで勉強してたって言ったけど、信用されてねーのか勉強しろって尻叩かれてさっきまで勉強してた。
『そっか……。雨、大丈夫だった?』
「あ、ん。大丈夫」
『ほんとに? 傘持って行ってよかったのに』
「マンション出た後降りだして、まーいっかって走ったんだ」
 嘘と、本当と。
 笑って誤魔化して。
 ――俺、なにやってんだろ。
『……捺くんも風邪ひかないようにね』
「うん。優斗さんも移らないように気をつけてね!」
『ありがとう。――そうだ』
 思い出したように優斗さんが言って、
『悪いんだけど明日は泊りは無理だから―――』
 って。
「……実優ちゃんいるし、当然だよ」
 優斗さんが言い終わる前に、遮ってた。
 笑って言えた、よな。
 明日、泊りにいけないことなんてちゃんとわかってる。
 実優ちゃんいるのに泊るなんて、俺だってしたくないし。
『……そうだね』
 少し間が開いて、静かな声が響いてくる。
 なんだろ。
 なんか、焦る。
 できたら――"わかってる"ことを、あえて言われたくねーって、思ってしまう。
 だって、わかってる、から。
 ぎゅっとシーツ握りしめて、優斗さんは目の前にいないのに笑顔張りつけたまま俺の中でテンション上げる。
 ――言われる前に、言ってたほうがマシだ。
「あ、あのさ。土曜なんだけど」
『土曜?』
「ん。テスト終わってパーっと遊びたいなーって。だから土曜は和と遊ぶから。優斗さんは、ほら実優ちゃんの看病もあるだろうし。せっかくの休みだし、たまにはゆっくりしててよ」
 まだ土曜日、和を誘っちゃいねーけど。
 でも、今日まだ高熱の実優ちゃんが明日少し熱が下がったからって土曜日完治してるなんて思えねーし。
 だからってお見舞いには行きたくない。
 そのついでに会いたくねーし。
 だから、最初から会わないって決めてたほうがマシだって、思った。
『……捺くん』
「――捺ー! ごはんだって!」
 ドアがノックされて、姉貴のむちゃくちゃでかい声が響いた。
 俺の返事なんて聞く気がない姉貴の足音がそのまま下に下りていく。
『ごはん、だね』
「……ごめん、電話中に」
 笑いを滲ませた優斗さんの声に、俺も思わず苦笑する。
『いや。ご飯ちゃんと食べて、テスト勉強がんばって』
「うん!」
『――……明日、また電話するよ』
「わかった」
 電話を切るときはやっぱちょっと寂しい。
 ばいばい、って切って――出るのはため息。
 とりあえず土曜まで会えない、っていうがっかりなのと、あと……。
 あと――。
 ベッドにあおむけに倒れ込む。
 メシ、食いに行かなきゃいけねーのに、面倒臭い。
 ――全部、面倒くさくてまたため息が出た。
 珍しく勉強しまくったせいかわりと次の日の英数テストは解けたと思う。
 あっという間にテストは終わってようやく勉強からも解放された。
 ぐあーっと伸びしてテスト期間中の疲れを全部吐き出すようにため息ついてたら七香と羽純ちゃん、それに和まで俺の机のところにきた。
 もうSHRも終わって帰るだけ。
「ねー、捺。実優の様子どう?」
 俺が実優ちゃんの叔父である優斗さんと付き合ってるから、今回はやたらと実優ちゃんのこと聞かれる。
「あー、今日朝から優斗さんが病院連れて行くって言ってた。熱は少し下がったらしいけどまだありはするらしー」
 仕事を数時間休んで、奈央さんのところに診てもらいに行くって朝からメールが入ってきてた。
「そっかぁ。なかなか治らないね」
 心配そうな羽純ちゃん。
 和ももちろん心配さを隠そうともしないで眉寄せてる。
「ん。でも病院の薬飲めばすぐ治りそうじゃね? よく効くしさ」
 ちょっと言い方軽すぎたかなって思いながら言えば、七香はとくに気にする様子もなく頷いた。
「そうだね。土日休んで月曜日には出てくれるといいけど」
「お見舞い行きたいけど、気を使わせちゃうからね」
「うんうん」
 羽純ちゃんの呟きに七香が頷いて、和が俺を見た。
「今日は行くのか」
「や。今日は行かない」
 いまもしかしたらまだ優斗さんいるかもしれねーし。
 それに熱も少し下がったらしいから大丈夫かなって……って、薄情かな。
「テスト終わってパーっと遊びたいけど実優いないんじゃねー。今日は大人しく帰ろうか」
「うん」
 七香と羽純ちゃんがそう結論だして、和もたぶん一番この中じゃ心配してるし、真っ直ぐ帰るだろうな。
 明日……誘って出てくるかな、こいつ。
 和を眺めてると、「帰るぞ」って先に歩き出す。
「あーい」
 生返事して今日は軽いカバンを持って俺も教室を出ていく。
 俺はこのあとどうしようかなー……。
 家は帰りたくねーな。
 他の友達誘ってみるかなーなんてスマホいじってたら、
「あ、あの先輩っ」
 って、後ろで声がした。
 歩いたまま後を振り向いたのは俺が呼ばれたと思ったからじゃなくて、ただたんに声がしたからってだけだ。


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