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番外 七 マルチバース 不仲世界編
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しおりを挟むやたらおしゃれなスーツを着た亜麻色の髪の若い刑事と、独特な髪型――リーゼント頭に、グレートな顎髭の白スーツダンディ刑事。
この二人が講義終了後の喧噪に、異物としてぽつんと現れた時、ダリオは背後に撮影カメラを探した。
コントでも始まるのか? 何かのドラマの撮影か?
別にそうではないようだ。リーゼント頭の白スーツをまとうダンディな方が、身分証一式を提示しながら名乗った。
「イーストシティ市警のダグラス・リーゼントです」
ブラックレザーの表に、EAST CITY POLICE DEPT(イーストシティ警察)と金の箔押しがしてある。ぱらりと垂らすと、銀色の紋章にDETECTIVE(刑事)とはっきり階級の彫り込まれた刑事バッジが提示された。事件現場などで、警察がポケットなどに差し込んで、身分証明に使われるものだ。身分を記したIDカードも入っている。
(刑事だ――)
ダリオは内心困惑した。なんで刑事が自分のところに、というわけだ。
なお、イーストシティでは刑事は巡査階級相当だが、グレードが1~3まであり、若い数字の方が経験のある刑事である。一級になると給与は警部補相当支給される。
ダグラス刑事はグレード1、一級刑事だった。ダリオが視認したのを確認して、ダンディなしぐさでバッジケースを内ポケットにしまいながら、バスの効いたバリトンボイスで尋ねる。
「学生課で所在を伺いました。ダリオ・ロータスさんですね」
「そうですが……」
ダグラス刑事のインパクトに、ダリオの返事は間の抜けたいぶかしげなものになった。いかがわしいかっこうで給仕アルバイトをしているが、風営法に違反するようなことはしていない。たぶん。それとも店舗にがさ入れでも入ったのか。いつかそうなると思っていた。
「次の講義は休講だそうですね。よろしければ、少し質問させていただいても?」
「構いませんが、俺でお役に立てるのか……そもそも何の聞き取りです?」
「これは失礼」
なんかわざとやられてるっぽいなと思ったが、ダリオは黙った。
「昨晩……アディラ・ハントさんが殺害されました。彼女の当日の足取りを追っています」
「……は?」
ダリオは眉を寄せ、真顔になった。何言ってんだこのおっさん、と失礼を通り越して無礼な思考になり、それが顔に出てしまったらしい。ダリオは元々無表情だが、機嫌の悪いような空気は出さないので、普段は案外他者から避けられることもない。だが、滅多になく真顔が険しいものになると、体格もあって威圧感を与える。
「驚かれるのは当然です。当日の日中、アディラさんは、あなたのアルバイト先、クラブ・ラビットホールに顔を出されたそうですね」
「——はい」
まだ話を飲み込めないながら、ダリオは返事する。ダグラス・リーゼント刑事はあくまで物腰穏やかに丁寧だ。見た目はインパクトがある。しかし、話し上手で聞き上手といった落ち着いたダンディ話術で、外見の強面は相殺されていた。その柔和な人当たりの良さに、ダリオはショックを受けた直後にも関わらず、まともに受け答えし、気づけば刑事二人は大体聞きたいことは聴取できたらしい。
「ああ、それと」
ついでとばかり、もう一人の若い刑事がクラッチバッグから、スケッチブックを取り出した。
「ダリオさん、こちらに見覚えとかないですかねー」
ダンディ刑事に比べて軽いが、ニコニコと愛想よくスケッチを開帳する。
「——?」
ダリオは目を通し、
「いえ――」
そう言いかけて止まった。
一本の線である。白いスケッチのやや下部、空間にただ一本、黒いクレヨンで水平に短く引かれた黒い線。
じわ、とその線から赤い糸が出た。
糸と見まごうようなそれが、黒いクレヨンで引いた水平線から、下部にじわじわと線を伸ばしていく。ぐちゃぐちゃぐちゃと絡まりながら、まるで――
まるで、何かの隙間から、血が染み出しているように。
ふと気づくと、水平線は、その両端から先端を炭で溶いたように上部へ二本の線を伸ばし、その行き止まりで今度はお互いの先端を蓋するように結んだ。
つまり、縦の長方形だ。
縦の長方形がダリオの目の前で勝手に完成した。
硬直するダリオの前で、更に長方形は黒い隙間を残しながらこちらに向かって、
ひらいていく。
ああ、これは『扉』だ。ドアの絵だ。ドアだろうか。下部に血のようなものが染み出してくる隙間がある。よく見たら、足。二本の足がドアの下の隙間から見える。違う。四本。
大人と子供だ。
直観的にダリオは悟った。
扉は、開いていく。
開いて。
これ、まずいんじゃないの。
ダリオは思った。
白昼堂々怪異爆誕に何故つき合う羽目になっているのか分からない。
「ダリオさん、これ、なんだかわかりますかあ?」
若い刑事の場違いに明るく軽い伸びやかな声が響いた。
知らねーよ。ダリオは思った。
「アディラさんの遺品なんですよぉ」
知りませんかあ? なんなんですかねえ、この線。意味わかんないですよねえ。
ヘリウムガスより軽い。調子っぱずれの明るい声。
「トイレじゃ、ないですかね」
「トイレですか~? えー、これ一本線ですよ。トイレって、なんでトイレなんです?」
「……なんとなくです」
目が離せない。いやこれ開ききったらどうなる。
「あの、もういいですか」
「あ、すみません、なんかあれですね、この絵を見て何に見えるかな~的な心理テストみたいですね。ははは」
ぱたん、とダグラス刑事が大きな手のひらでスケッチを横から閉じた。
「貴重なご意見ありがとうございます。ちなみに、見覚えは?」
「ないです。でも、これやっぱりトイレだと思いますよ。さっきも申し上げたとおり、アディラさんは独自に何か児童の性加害事件について調べていたようなんで。俺がアディラさんと出会ったのもそうした経緯でしたし」
「そうですか。実は、こちらは、そのアディラさんが独自に調査されていた『いくつか』の事件の被害児童に描いてもらった絵のようでしてね」
アディラは、女装男のトイレ侵入の件のみならず、あの手の事件を複数調べ、関わっていたようだ。口ぶりから、ダリオと知り合った事件だけではないような深度は感じていたが、このことがはっきりすると、ダリオはぺらぺらの表層がもっと厚みのある奥行きのあるものだったのではないかと理解した。彼女の殺害事件は、原因自体が、更に根深いものからきているのかもしれない。
「トイレといえば、こちらのコピーも少し見て頂きたいんですがね」
「はあ」
今度見せられたのは、小学校の簡単な見取り図のようなものである。
「こちらも児童が描いたものです。ちょっと変わっているでしょう」
ダリオはのぞき込んで、今度こそ眉根を寄せた。
ちょっと変わっているというか、一見よくできた見取り図だが、よくみると異様に感じる。
見取り図の中心に、横並びにいくつも設置された『便所』の文字。
便所。
便所。
便所。
便所。
便所。
その周辺に、まるで並列便所を中心として校舎、校庭、図書館、体育館、裏庭、などが配置されている。
要するに、便所が世界の中心だ。
いくつも並んでいる『便所』という言葉が異様に感じられる。
ダグラスは表情を変えずに言った。
「現実に、イーストシティにはこうした配置の学校はないんですがね。この見取り図も、一見よくできているように見えて、まあなんというか、ユニークでしょう」
「そうですね、『便所』が中心にいくつも綺麗に並んでるのを見ると、少々異様に感じるかもしれないです。これも児童が、ですか……」
被害児童が描いたと言われれば、どこか納得できるような気もする。ダンディならぬダグラス刑事が顎髭に手をやりながら、説明した。
「まあ、私らは素人門外漢ですが、箱庭療法というものがありまして。自由にこう、用意された箱――箱庭の中に、マスコット人形のようなものを配置するそうです。で、それを専門家の先生方が見て、心理状態を紐解くらしいんですが。んん、こういうのは学生さんの方が詳しいですかな」
「いえ、俺も別に専門ではないので。一般教養程度程度です。あー、言われると確かにきれいに箱庭療法の区分分けに配置されてますね、これ」
「おやご謙遜なさいますな。ええ、まあ専門家の先生に見ていただいて、色々言われたんですが、ちょっと、書き写したみたいに、区分通りに『配置』して描かれているそうで。もちろん被害児童は恐らく知らないと思うんですがね」
「中心は全体性とか、現在とか、核に当たるはずだったかと思いますが、正直よくわからないです。ただ、逆説的ですが、被害児童がこの『便所』を執拗に中心に並べているのは、なんとなく、そうか、という気は」
「そうですな」
俺にこんなもの見せていいのか、この人ら、とダリオは謎に思う。どういう意図で見せられているのかわからない。児童のプライバシーはどうなるんだ、いいのか。
それはそれとして、人が殺されている。
アディラ・ハントが。
ダリオはゆるく首を振った。
「申し訳ないですが、お役に立てそうもないです。ただ、何か思い出したことがあればイーストシティ警察に連絡させてもらいます」
「ええ、そうしてくれますとありがたい。何かあればこちらまで。では、ダリオさん。ご協力ありがとうございました」
ゆっくりと笑みを作り、ダグラス刑事たちは辞去していった。
刑事たちと話したこの日も、ダリオはアルバイトだった。
そして、ダリオは。
「やってくれたな、アディラさん」
昨日彼女がついたテーブルの裏に、弱い粘着テープで、鍵とカードが張り付けてあった。発見したのは、テーブルの裏が『騒がしかった』からだ。
『ダリオ、ダリオ、なんかここにあるわよ!』
『あの女がここになんかはっつけてったの!』
『ダリオ宛の手紙つき! ラブレター⁉』
「違います」
頭にわさわさ花びらを生やした妖精たちに、真顔で否定して、ダリオは片付けのふりをしてテーブルの下から卓裏をのぞきこんだ。
ダリオでなければ、気づかなかっただろう。そしてこの弱い粘着テープであれば、ある程度したら落下なりなんなりして、店側に届けられたはずだ。
あるいは、アディラは保険をかけて設置し、ダリオに警告した後で、何事もなければ何食わぬ顔でまた来店して『回収』するつもりだったのかもしれない。
たぶんそうだろうな、とダリオは彼女の『ダリオ君もしばらく周辺に気をつけてくれし』といったような警告を思い出して結論した。
保険は保険でも、ダリオへの保険だ。
アルバイトのあと、ダリオはイーストシティ駅の構内コーヒーショップで調べ物をした。アディラ・ハントの名前でざっと経歴を調べたのだ。すぐに出て来た。フリーの記者だったらしい。そして、イーストシティのプラムリバー小学校・女児殺害事件にヒットする。
「そういうことかよ……」
22年前だ。プラムリバー小学校で、当時七歳だった赤いワンピースのメイ・ハントが、外部からの侵入者に性的暴行をされた上、口に下着を詰め込まれてトイレに遺棄されていた事件だ。この被害児童がアディラの妹。アディラは年子で、当時この小学校に通っていた。
アディラは、22年前から『ハント』していたのだ。
ダリオ宛のカードには、何か身辺に危険が迫り、自分と連絡が取れない場合は、コインロッカーを開けて、警察もしくは指定のマスコミに垂れ込むように依頼が書かれている。
ダリオを訪ねて来た時、アディラはすでに自分が連絡のとれなくなるような状態になる可能性を考えるほど、身の危険を感じていたのだろうか。
刑事がやたらカマをかけていったのは、不自然にアディラがダリオを訪れたタイミングから、仲介役で何か彼女から手渡されていないか考えていたのかもしれない。
ダリオが知ると知らざるとにかかわらず、何か託されているかもしれないと、あれこれ聞いてきたのだ。
分からないが、とりあえずさほど身の危険は感じていないものの、アディラが殺された以上、コインロッカーを開けに行くしかない。
まあ、たぶん大丈夫だとは思うが――無防備に開けに行っていいものだろうか。先に警察に連絡するか。
空中をしばらく無意識に睨むよう考えたが、答えが出ない。一度ものを見ておく必要がある。というのも、アディラが直に警察やマスコミに資料を『垂れ込んでいない』のは何か理由があるのではないか。一通り確認しておくべきではという懸念だ。
おそらく、警察の手に渡れば、ダリオが中身を確認する機会は二度とないだろう。
これミステリとかだったら、死亡フラグなやつじゃねーか、とダリオは思ったが、ひとまず手洗いに行くことにした。コーヒーには利尿作用がある。
小用を済ませて、近年改装されたばかりでやたらラグジュアリーな男性トイレで、手を洗うと、ハンカチでふいて、それからふと顔を上げた。
ふわふわとしたブロンド撒き毛にエプロンドレスの美少女が、機嫌のよさそうにダリオの首に手をかけている。鏡の中でダリオと目が合って、にこっ、とアルカイックに笑ってみせた。
ダリオの身長は一八〇センチメートルを超えている。少女の体格からいって、ダリオの頭頂に顔を並べるのは無理がある。つまり、少女は浮遊している。
横を向いても彼女はいない。
少女がいるのは鏡の中だ。
『ダリオ、困ってるのね?』
「やあ、鏡の妖精さん。俺は今取り込んでるし、ここは男性用トイレなんだが」
『あたしの縄張りは鏡全てよ。人間があちこちスペース区切ってるのなんて知らないわ』
「そりゃそうかもだな」
ダリオはそうだなと納得した。
『ダリオ、すぐそういうところある~』
「あーそうかもだな、ところで俺あまり時間がないんだが。何か用か?」
『困ってそうだったから笑いに来たの』
あーいつもの悪趣味発揮ね、とダリオはハイハイと聞き流す。比較的害のない相手だ。ダリオ調べでは、いきなり別の怪異空間に監禁拉致してくるとか、目玉や手足を寄越せと強行してくるとか、逆上して殺害に及ぼうとしてくるとか、それ以外は全部無害判定である。ガバガバだ。この間家についてきたタイプは、経験上、三番目に該当しそうなやつだったので、家まで知られて最悪だった。まあ、別の拉致監禁タイプストーカーが追い払ってくれたようで、事なきを得たが。
青年が玄関扉の向こう側で立ち尽くしていたのではないかと。
そう考えたのを思い出して、ダリオの顔がわずかに歪んだ。
また同時に、拉致監禁後に話が通じなくて恐怖したものの、何故かあっさり解放されて、青髭事件の際は後ろから急に現れ、隣に並んで悪びれずに話しかけてきたのをも思い出す。
当然ダリオは無視した。
無視しても話しかけてくるので、更に無視した。
青年はよく分からないような顔をしていたと思う。はっきり見たわけじゃないが。
気づくと青年は追いかけるのを止めたらしく、ダリオは後ろを振り返らず、肩で風を切るようにして、さっさと立ち去った。
たぶん、あの人外の青年は最後まできょとんとしていたように感じられた。悪いと思っていないのだ。だから、ダリオは関わらないことにした。現に無害であったとしても、自分がしたことの何が悪いのかわからない相手は、危険だ。あいつらは、ダリオを一発で壊す力がある。一度でも行使しかけた、あるいは異界に連れ去り実績のあるやつらを、憐憫に駆られて相手にした際の『酷い目』には嫌ほどあってきた。
『あはっ、ねえ、昨日のこと、あたし知ってるのよ』
ダリオは顔を上げた。
『あの怖いやつ! ダリオの家に入れなくて、ずーっと外で立ってたの! 下品で馬鹿で汚いやつ! 招かれないと入れない程度の気持ち悪いやつ! でももっと怖いやつが来て、追い払ったのよ!』
青年のことだろう。鏡の少女は、人の心を読む。心の声を聴きとれるとかいったことではなく、ダリオの顔色や表情から、痛いところを抉り出して、心臓を掲げるようにキャッキャと笑う。
『もっと怖い――あの支配者! 無理やり押し入れるのに、入れないの! ダリオの家に! 入れないったら入れない! キャハハ! かわいそーう! 立ってたのよぉ! 入れなくてェ、支配者のくせにぃ! みっともなーい! はずかしーい! どんな気持ちかしら! どんな気持ちか聞いてみたーい、きゃははははは!』
えぐい……ダリオは洗面台に手をついて、下を見た。
あの人外の青年をえぐっているというより、ダリオをえぐりに来ている。
青髭事件の時に、青年を置き去りにした。顔だってまともに見なかった。
それでも、ダリオはわかっていた。
あの青年が、迷子が手をつきかねたように、表情もなく、路上に立ち尽くしていたのを。雑踏の中、追いかけることもできずにひとり、ダリオの遠ざかる背中をいつまでも視線で見ていたのを。
ダリオはわかっていた。
何が悪かったのか分からない奴は危険だ。
だから無視した。
その後も、見られていた。
不快そうにしていたら、視線も遠ざかった。
妙な事件が起こるたびに、好きで関わったわけではないが、死にかける前になんらか支援された。
家に逆上タイプのクソヤバ怪異がついてきた際も、追い払うだけ追い払って、ドアの前にしばらくいたけれども、結局無言で立ち去った。
ダリオはわかっていた。
倫理観はおかしいが、青年は学習している。ストーカーはされているが、だいぶん軽減した。他のそこそこおかしい怪異並だ。それはダリオの許容範囲内だった。
最初に――初手に拉致監禁さえしてこなければ。せめて、不法侵入程度だったら。
許さないけれども、無視まではしなかっただろう。
異界連れ去り案件だけはダリオも許容できない。一番ある意味やばいやつだ。帰って来られないかもしれない。下手したら死ねない状態で酷い目に合わされるかもしれない。現実よりも恐怖の度合いが違う。初手でそれをしてきた相手を許容することはできない。
『あは、あはは……ダリオって本当にちょろーい。もうゆるしちゃってるんだ!』
「……そういう問題じゃあないんだが」
『かわいそうになっちゃったんでしょう? 支配者のくせに献身なんかしてるから。すっごく怖いやつなのにぃ、ダリオにマーキングもできないんだあ! かわいそー! だから変な奴にダリオちょっかいかけられるのよ。マーキングされてたら、あたしも怖くてダリオに近づけないんだもーん』
「……マーキングってなんだ」
『そのまんま? 支配者がマーキングしたら誰もよってこないのに、ダリオに近づけないからそれもできない。対処療法で、ダリオが危険そうなら都度追い払うとか非効率なことしてるの。しかもダリオが見られてるのけはい感じて、嫌そうにしたから見ることもできない。支配者のくせに! 情けない、みじめーかわいそーおっかしーーーい』
知らんけど、そこまで言って、君大丈夫なのか? とダリオは別の懸念を覚える。
『だってあたしあいつ嫌いだもん! あたしのこと一回脅したんだもん! きらいきらいきらい! ダリオのせいなんだからァ! 謝って! 謝って!』
「えーと、分からないが、ごめんな? なんか俺のせいで脅されたのか?」
『ちょっとダリオを鏡の中に引きずり込もうとしただけなのに、消滅させようとしてきたんだから! ダリオの鏡に逃げ込まなかったら危なかったんだから!』
「理解したが、とりあえず……鏡の中に引きずり込みとかやったら二度と口きかねーからな。あと俺の鏡に逃げ込めてよかったよ」
『……もうしないわよ。脅されたし……あいつ嫌いッ、ダリオに嫌われて落ちこめばいいし。あ~~~いい気味ッ』
鏡の少女は言いたいだけ言うと、すとんと急にテンションが落ちて、飽きたから帰ると消えてしまった。
いつものやつだとダリオは今更である。
連中は言いたいことだけ言い、やりたいことだけして、話せるようで話にならない。
ダリオは嘆息ひとつすると、トイレを出て、コインロッカーへと向かった。
それから。
回収した資料を手に、市警へ行くため地下鉄を利用しようとして、早足に急いだ。電光掲示板は次の高速列車が駅構内に入ることを告げていた。メロディとともに、アナウンスが流れる。
『3番ホームに、ドラゴンヘッド行が参ります。ご注意ください』
急いだ方がいい。移動しながら腕時計を見る。その時だった。線路に向かって何者かに背中を突き飛ばされた。
いろいろなことを一瞬で考えたが、線路側に落ちながら、白い光が目を焼いて、嘘だろ、と思ったのを最後に視界は黒に閉ざされた。
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