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番外 - 破壊神狂想曲
05.トラブル収束と新規案件
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「では元の場所へ帰ったのですね、あの破壊神は」
「うん。もう迷惑かけないって約束していったから大丈夫」
「一安心です……」
ほっと胸をなでおろすニルに苦笑する。彼には本当に迷惑をかけてしまった。
黒柴、もとい事務員さんと縁深い破壊神を雲海で捕まえた次の日、朝イチで事務員さんが訪ねてきた。
我が家のドアをノックしたのは始業時間ぴったりで、さすが事務員さんだと感心してしまった。
「おはようございます。あのアホ犬は本部に送り返しましたので、ご報告に参りました」
「おはようございます! そうですか、俺としてはちょっと話したかった気持ちもあるけど、それなら仕方ないですね」
研修時代は周囲に他神がいたけど、派遣が始まってからは他の破壊神と話す機会は皆無になる。せっかくだから破壊神同士、雑談でもできたら良かったのだが。
残念がる俺とは裏腹に、事務員さんは一瞬だけとても苦々しく嫌そうな顔をして、一瞬で取り繕った。
「破壊神さんがアレを気にする必要などありませんよ。他の破壊神と話したいことがあるのなら、本部に相談してみましょうか」
「あっいえいえ、そんな大事にしなくていいので。すみません、気にしないでください」
「そうですか」
さっき嫌そうな顔をしたのは、俺にあの恋人を取られるとか思ったのだろうか。そんな風に考える。
だって今日の事務員さんは、なんというか、少しだけだが、色っぽい。
一筋だけ垂れている前髪とか、手元の資料に目を伏せる仕草とか、時折小さく息を吐くときとか。
これはつまり、あんまり考えないほうがいいことだがあえて推測するとすれば……事後。
彼とは無事元サヤになれたということではないのだろうか。
「破壊神さん?」
「あ、すみません。あとなんでしたっけ?」
「いえ報告は以上です。地上の処理の方はリクさんにお任せして良いのでしょうか?」
「そのつもりです。後の仕事はいつも通りに」
ふと沈黙が降りた。
いつもはきはきした話し方をする事務員さんには珍しく、言い淀んでいるというか……言おうかどうか迷っている、みたいな空気を感じる。
俺が視線で促したせいか、僅かに俯いて「彼は」と口火を切った。
「お騒がせした破壊神ですが……今度は正規の方法で本部から出て、正規の手続きを経てコンタクトを取ると、約束していきました。だからまた、破壊神さんと話す機会もあるかもしれません」
「そうですか……」
「えぇ。創造神さんが上位次元から地上へ侵入するルートも塞いでくれたので、もうこんな事態は起きませんが、リクさんたちによくよく伝えておいてほしいです」
「わかりました。また会えるならその時を楽しみにしてます。……あ、俺は別に疚しい気持ちで会いたいって言ってるんじゃないですから、心配しないでくださいね」
「…………はい?」
あれ、いつも素敵なアルカイックスマイルを浮かべる事務員さんなのに、この笑顔はなんか怖い。
「破壊神さんがなにを勘違いしているか知りませんが、私はアレと会いたいなど思いませんし、また来たとしても破壊神さんに有益な情報を齎せなければすぐに叩き出しますよ。もし破壊神さんがアレを気に入ったのなら、本部から首輪を取り寄せましょうか。柴犬のまま飼うこともできますよ」
「あっいえ、その、すいませんでした……」
どうやらかの破壊神と事務員さん、すんなりよりを戻す関係じゃないらしい。
地雷を踏み抜いてしまったことを謝りながら頭を下げると、事務員さんも平常心じゃなかったことを謝罪してきた。
どんなときも冷静な事務員さんの心を乱せるってだけで、あの破壊神は十分すごいと思うけど、これ言ったらまた事務員さんが荒れてしまうので黙っておく。お互い素直じゃなさそうだし。
そのままぺこぺことお互いに会釈し合いながら業務連絡を終え、事務員さんは帰っていった。
あの破壊神は、事務員さんと事務員さんが司っていた世界を破滅させた罪で本部に拘禁されていた囚神だという。
事務員さんは彼のことを好きじゃなさそうにあしらって、悪し様に言っていたけど、あの破壊神は本部を脱走してまっすぐ事務員さんのいるこの世界へやってきたというし、昨日ふたりが(心情はどうあれ)元サヤに収まったのなら、それはもう「愛」だと思うのだ。
「引き離して良かったのかなぁ……」
「何、海くん。あの犬飼いたかったの?」
「そういうことじゃなくて……って総、やっと起きたのか。おそよう」
「ん」
寝起きのキスを受け止め、すかさず深く触れ合おうとする総司郎を遠慮なく押し遣ってからリビングへ戻る。
事の仔細を地上組にも共有しなくてはならない。
すぐに繋がったテレビ電話に、総司郎は再び引っ込んでしまったが、どうやらカメラに映らない位置にいるらしい。気にせず報告をする。
ニルと話していたら途中でリクが画面に入り込んできた。
「リク、おはよう。昨日はありがとな」
「別に。それよりソウ兄さんいる?」
「いるよ」
リクに呼ばれて総司郎が画角に入り込む。
隙あらば己の分身のような存在であるリクを可愛がりたい俺と違い、総司郎はわりと淡白だ。会いたがることはほぼないし、会話も事務的で、なんだか本当の男兄弟という雰囲気。
「ソウ兄さん、俺の弟って創る予定ないの?」
「はっ!?」
その総司郎へと、リクはなにやらとんでもないことを聞いている。
「お、おま、リク! 何言ってんだおまえ!」
「カイ兄は黙ってて」
「えっ……」
もしかしてうちの子ってば反抗期?
拒絶されて呆然とする俺の横で、特に動揺していない総司郎が「なんで」と尋ねる。
「今回のことでちょっと思うところあって。ダークマターの処理とか、破壊方面は俺だけで十分手が足りてるけど、創造の方は全然だからさ」
「何か困ったことでもあったのか」
「んー、俺がって言うよりニルがさ。神に愛される大魔道士って持ち上げられっぷりエグくて、忙しすぎて見てらんないっていうか」
俺は我が子の優しさに涙した。拒絶されたことは一瞬で忘れた。
なんて優しい子なんだ、そういうところ総司郎に似なくてホント良かった。
俺が口元を押さえて感動に打ち震えている間に、話が終わったのか通話が切れた。
「おい勝手に終わらすなよ」
「必要なことは報告し合ってたしいいでしょ。それより海くん、今日の仕事は?」
「えーと、今回の報告書は事務員さんの方で上げてくれるって言うし、あとはルーティンワークだけ。玉削ったりとか」
「わかった。じゃあ仕事終わるの待ってる」
そう言ってソファへ移動した総司郎は、クッションを抱いて大人しくなった。
珍しい。いつもは鬱陶しいくらい俺にくっついて、家事も仕事も邪魔しまくるのに。
まぁ本人がそれでいいなら否やはない。
俺はのびのびと仕事ができる喜びを噛み締め、いつもより気持ち早めに終業することができた。
夕食を食べ終え、入浴を済ませ、寝る前にのんびり過ごす時間。
並んで座ったソファの上で俺は熱烈に口を舐め回されていた。
相手は犬とかじゃない。総司郎だ。
「ちょ、んっ、そうしろ……ッ」
「したい。いいよね?」
「い、いけど……」
いつになく性急に促され寝室へ移動する。
例の破壊神騒動があってご無沙汰だ。といっても一日か二日そこらの話だが。
溜まっていたんだろうか。それにしたってガッつきすぎじゃないか。
でも恋人が自分を求めてくれること自体は嬉しいし、俺も問題が片付いて晴れやかな気持ちだから、彼を拒む理由はない。
「お風呂で準備してくれた?」
「……ん」
俺だってこういう展開になったらいいなと期待してたのは事実だし。抵抗なく総司郎の指を食む後孔の柔軟さに、バレていたと恥ずかしがる時期はとっくに過ぎた。
潤滑剤が何度も足され、総司郎を受け入れるための場所が準備を整えていく。
三本入るようになったところで指が抜かれ、熱く滾ったものがぐっと押し込まれる。
その頃にはもう俺は身も心もとろとろに蕩けさせられてて、でもまだギリ動く頭の片隅で「ペース早いな」とか考えていた。
「海くん、痛くない?」
「へーき……それより、今日はどうしたんだ」
「なにが?」
「なんか、焦ってるだろ。急がなくても俺は逃げないぞ」
汗ばんだ総司郎の頬に手を伸ばすと、体ごとぎゅっと抱き竦められる。
そのまま腰を使われ、俺は情けない声しか出せなくなった。
雲の上に力の強い神が侵入なんてしたものだから不安定になっているのかもしれない。創造神が不安に揺れるのならば、それを宥めてやるのも破壊神の仕事だ。
普段は俺様で尊大な、本当は寂しがりで、まだ俺が先に死んだ過去の傷が癒えていない恋人が不安に思うのならば、それを払拭してやるのも俺の仕事だ。
「大好きだ、総司郎。ずっといっしょだ」
喘ぐ隙間に吐息のようにしか言えなかったけれど、総司郎はしっかりと聞き届けてくれた。
お互いに強く抱き合って快楽を追う。
かわいいかわいい、俺の恋人。望むならいつまででもこうしていてやりたい。
……なんて考えてた数時間前の俺、早まるんじゃない。
ずっとこうしてよっか♡なんて言えば、性豪絶倫の総司郎が喜ばないはずないじゃないか。
「海くん、もう一回」
「も、やぁ……は、ぁ、あぁ────」
あまりにも長く続く快感から逃げ出そうとして伸ばした腕を後ろから掴まれる。
うつ伏せのまま背後から挿入され、びくびくと腰が震えた。
もはや拒絶する元気もない。
シーツと総司郎に挟まれるように揺さぶられ、もうほとんど出るもののない前が擦れて身悶える。気持ち良すぎてつらい。
「うっ……」
どくどくと中で脈打つ肉塊がもたらす絶頂は、なかなか降りてこられない。もうずっとイキっぱなしになってる。
潤滑剤より中に出された精液の方が多くなっていそうだ。
ぐちゅぐちゅと鳴る卑猥な音に耳を塞ぎたくても、疲れ切って腕が上がらない。
何度も出したせいか、総司郎の飢餓感は少し落ち着いたみたいだった。
今にも寝落ちしそうになっている俺の耳元に顔を寄せ囁く。
「こんなに中で出したら、孕んじゃいそうだね……?」
びくっと肩が揺れた。
いや待て落ち着け、俺は神とはいえ男だし、女のように孕むわけがない。
そう自分を納得させようとして、いつか総司郎が話した内容が脳裏を過った。
神同士で交わって────子を作る方法について。
「あ、や、やぁっ」
再び総司郎が這入ってくる。
掠れた声を出しても抵抗とすら思われない。背中にぴったりと密着する総司郎の身体はすごく熱い。
「海くんは嫌? 俺との子ども、欲しくない?」
「そ、んなの、ムリ」
「無理じゃないよ。無理じゃなかったら、子ども欲しい?」
「……」
無理じゃなかったら。総司郎との子ども。
────将来有望な総司郎の、輝かしくて「ふつうの」未来を奪っていることに罪悪感がないはずがなかった。
総司郎は俺を好きだと言ってくれるけど、それだっていつまでのことかわかったもんじゃない。それなら早めに手放してやるべきなんじゃないか。
同性愛者ってわけじゃない総司郎。
俺が離れてやれば、ごく「ふつうの」幸せな人生がこの先に続いているんじゃないか。俺みたいなうだつの上がらない、しがないただの年上男なんかに時間を使わせたらダメなんじゃないか。
女だったら良かったのに、なんて一度も考えたことないけど。
彼に何かを残してやれたらよかったのに────。
「そうしろ……ごめん、ごめんなぁ。先にいってごめん」
「カイ、くん」
「おまえになにも、遺してやれなかった。それだけずっと、心残りだった。おれがこどもを、うめる体ならって、かんがえたこともあったよ。そうしたらおまえをひとりで置いていかずにすんだのに、て」
「……っ、海くんはいっつも俺のことばっかりだ」
そりゃそうだ。何よりも愛おしい俺の総司郎。
いつだっておまえのことばかり考えていたよ。今も、昔も。
「海くん愛してる。もう絶対に放さないから」
「はは……おれも、だ」
正直もうこの頃には自分が何を言っているかよくわかってなくて、ただ総司郎が泣きそうな笑顔で何度もキスしてくるから、半ば酸欠になりながらそれに応えたってことだけは覚えてる。
次の朝、誇張じゃなく腰が立たなくてベッドから出られないという結果を見て、昨夜は盛り上がりすぎたな……と思い出す。
その程度しか記憶が残ってなかった。
「海くんおはよ」
「あぁ、そうしろ……んん、ごほっ」
「ごめん、喉枯れちゃったね。水飲める?」
ヤりすぎた自覚があるのか、甲斐甲斐しく世話を焼く恋人に遠慮なく頼る。
さすがに今日の仕事は休みにするしかない。急ぎの案件はなかっただろうか……と思案する俺の体を、総司郎がころんと転がし仰向けにした。
「? なんだよ」
「お腹みせて」
見せろといいつつ触られているが、そのままにする。
さすがにこれだけ疲労困憊の俺に挑んでくることはないだろう。そういえば昨日ヤバいくらい中で出されたモノは処理したのだろうか。体が気持ち悪くないからこいつがやってくれたのかな。
気を抜くと寝てしまいそうな俺の耳に、信じられない言葉が入った。
「おぉ、できてる。すごい」
「……え? なにが?」
「俺たちの子ども。作れるとは聞いてたけど半信半疑だったんだ。やっぱり海くんが受け入れてくれることが重要だったのかな」
「……え?」
どうやら俺は昨日、総司郎の願いを叶えようと心も体も「開いて」しまったらしい。
その結果、リクを作るときに総司郎が創ったガラス玉みたいな核の、もっとちっちゃいようなやつが今俺の腹の中にある、と、
「総司郎……てめぇ……」
「あ、大丈夫だよ。子どもができたって言っても女性の妊娠出産みたいな痛みとか不便さとかはないから。ちょっとした疑似産卵プレイにはなるけど」
平然ととんでもないことばかり言う総司郎に、俺は、キレた。
「どこが大丈夫だ! 報連相はどうした! 事前に連絡相談しろーッ!」
怒鳴り声に腰がびりびり痛んだが、こればかりはなあなあで許してやることはできない。
ベッドに寝そべったまま動けない俺と、ベッド横の床に正座して説教を受ける創造神というなんとも間抜けな構図は、俺の空腹が限界を迎えるまで繰り広げられたのだった。
「うん。もう迷惑かけないって約束していったから大丈夫」
「一安心です……」
ほっと胸をなでおろすニルに苦笑する。彼には本当に迷惑をかけてしまった。
黒柴、もとい事務員さんと縁深い破壊神を雲海で捕まえた次の日、朝イチで事務員さんが訪ねてきた。
我が家のドアをノックしたのは始業時間ぴったりで、さすが事務員さんだと感心してしまった。
「おはようございます。あのアホ犬は本部に送り返しましたので、ご報告に参りました」
「おはようございます! そうですか、俺としてはちょっと話したかった気持ちもあるけど、それなら仕方ないですね」
研修時代は周囲に他神がいたけど、派遣が始まってからは他の破壊神と話す機会は皆無になる。せっかくだから破壊神同士、雑談でもできたら良かったのだが。
残念がる俺とは裏腹に、事務員さんは一瞬だけとても苦々しく嫌そうな顔をして、一瞬で取り繕った。
「破壊神さんがアレを気にする必要などありませんよ。他の破壊神と話したいことがあるのなら、本部に相談してみましょうか」
「あっいえいえ、そんな大事にしなくていいので。すみません、気にしないでください」
「そうですか」
さっき嫌そうな顔をしたのは、俺にあの恋人を取られるとか思ったのだろうか。そんな風に考える。
だって今日の事務員さんは、なんというか、少しだけだが、色っぽい。
一筋だけ垂れている前髪とか、手元の資料に目を伏せる仕草とか、時折小さく息を吐くときとか。
これはつまり、あんまり考えないほうがいいことだがあえて推測するとすれば……事後。
彼とは無事元サヤになれたということではないのだろうか。
「破壊神さん?」
「あ、すみません。あとなんでしたっけ?」
「いえ報告は以上です。地上の処理の方はリクさんにお任せして良いのでしょうか?」
「そのつもりです。後の仕事はいつも通りに」
ふと沈黙が降りた。
いつもはきはきした話し方をする事務員さんには珍しく、言い淀んでいるというか……言おうかどうか迷っている、みたいな空気を感じる。
俺が視線で促したせいか、僅かに俯いて「彼は」と口火を切った。
「お騒がせした破壊神ですが……今度は正規の方法で本部から出て、正規の手続きを経てコンタクトを取ると、約束していきました。だからまた、破壊神さんと話す機会もあるかもしれません」
「そうですか……」
「えぇ。創造神さんが上位次元から地上へ侵入するルートも塞いでくれたので、もうこんな事態は起きませんが、リクさんたちによくよく伝えておいてほしいです」
「わかりました。また会えるならその時を楽しみにしてます。……あ、俺は別に疚しい気持ちで会いたいって言ってるんじゃないですから、心配しないでくださいね」
「…………はい?」
あれ、いつも素敵なアルカイックスマイルを浮かべる事務員さんなのに、この笑顔はなんか怖い。
「破壊神さんがなにを勘違いしているか知りませんが、私はアレと会いたいなど思いませんし、また来たとしても破壊神さんに有益な情報を齎せなければすぐに叩き出しますよ。もし破壊神さんがアレを気に入ったのなら、本部から首輪を取り寄せましょうか。柴犬のまま飼うこともできますよ」
「あっいえ、その、すいませんでした……」
どうやらかの破壊神と事務員さん、すんなりよりを戻す関係じゃないらしい。
地雷を踏み抜いてしまったことを謝りながら頭を下げると、事務員さんも平常心じゃなかったことを謝罪してきた。
どんなときも冷静な事務員さんの心を乱せるってだけで、あの破壊神は十分すごいと思うけど、これ言ったらまた事務員さんが荒れてしまうので黙っておく。お互い素直じゃなさそうだし。
そのままぺこぺことお互いに会釈し合いながら業務連絡を終え、事務員さんは帰っていった。
あの破壊神は、事務員さんと事務員さんが司っていた世界を破滅させた罪で本部に拘禁されていた囚神だという。
事務員さんは彼のことを好きじゃなさそうにあしらって、悪し様に言っていたけど、あの破壊神は本部を脱走してまっすぐ事務員さんのいるこの世界へやってきたというし、昨日ふたりが(心情はどうあれ)元サヤに収まったのなら、それはもう「愛」だと思うのだ。
「引き離して良かったのかなぁ……」
「何、海くん。あの犬飼いたかったの?」
「そういうことじゃなくて……って総、やっと起きたのか。おそよう」
「ん」
寝起きのキスを受け止め、すかさず深く触れ合おうとする総司郎を遠慮なく押し遣ってからリビングへ戻る。
事の仔細を地上組にも共有しなくてはならない。
すぐに繋がったテレビ電話に、総司郎は再び引っ込んでしまったが、どうやらカメラに映らない位置にいるらしい。気にせず報告をする。
ニルと話していたら途中でリクが画面に入り込んできた。
「リク、おはよう。昨日はありがとな」
「別に。それよりソウ兄さんいる?」
「いるよ」
リクに呼ばれて総司郎が画角に入り込む。
隙あらば己の分身のような存在であるリクを可愛がりたい俺と違い、総司郎はわりと淡白だ。会いたがることはほぼないし、会話も事務的で、なんだか本当の男兄弟という雰囲気。
「ソウ兄さん、俺の弟って創る予定ないの?」
「はっ!?」
その総司郎へと、リクはなにやらとんでもないことを聞いている。
「お、おま、リク! 何言ってんだおまえ!」
「カイ兄は黙ってて」
「えっ……」
もしかしてうちの子ってば反抗期?
拒絶されて呆然とする俺の横で、特に動揺していない総司郎が「なんで」と尋ねる。
「今回のことでちょっと思うところあって。ダークマターの処理とか、破壊方面は俺だけで十分手が足りてるけど、創造の方は全然だからさ」
「何か困ったことでもあったのか」
「んー、俺がって言うよりニルがさ。神に愛される大魔道士って持ち上げられっぷりエグくて、忙しすぎて見てらんないっていうか」
俺は我が子の優しさに涙した。拒絶されたことは一瞬で忘れた。
なんて優しい子なんだ、そういうところ総司郎に似なくてホント良かった。
俺が口元を押さえて感動に打ち震えている間に、話が終わったのか通話が切れた。
「おい勝手に終わらすなよ」
「必要なことは報告し合ってたしいいでしょ。それより海くん、今日の仕事は?」
「えーと、今回の報告書は事務員さんの方で上げてくれるって言うし、あとはルーティンワークだけ。玉削ったりとか」
「わかった。じゃあ仕事終わるの待ってる」
そう言ってソファへ移動した総司郎は、クッションを抱いて大人しくなった。
珍しい。いつもは鬱陶しいくらい俺にくっついて、家事も仕事も邪魔しまくるのに。
まぁ本人がそれでいいなら否やはない。
俺はのびのびと仕事ができる喜びを噛み締め、いつもより気持ち早めに終業することができた。
夕食を食べ終え、入浴を済ませ、寝る前にのんびり過ごす時間。
並んで座ったソファの上で俺は熱烈に口を舐め回されていた。
相手は犬とかじゃない。総司郎だ。
「ちょ、んっ、そうしろ……ッ」
「したい。いいよね?」
「い、いけど……」
いつになく性急に促され寝室へ移動する。
例の破壊神騒動があってご無沙汰だ。といっても一日か二日そこらの話だが。
溜まっていたんだろうか。それにしたってガッつきすぎじゃないか。
でも恋人が自分を求めてくれること自体は嬉しいし、俺も問題が片付いて晴れやかな気持ちだから、彼を拒む理由はない。
「お風呂で準備してくれた?」
「……ん」
俺だってこういう展開になったらいいなと期待してたのは事実だし。抵抗なく総司郎の指を食む後孔の柔軟さに、バレていたと恥ずかしがる時期はとっくに過ぎた。
潤滑剤が何度も足され、総司郎を受け入れるための場所が準備を整えていく。
三本入るようになったところで指が抜かれ、熱く滾ったものがぐっと押し込まれる。
その頃にはもう俺は身も心もとろとろに蕩けさせられてて、でもまだギリ動く頭の片隅で「ペース早いな」とか考えていた。
「海くん、痛くない?」
「へーき……それより、今日はどうしたんだ」
「なにが?」
「なんか、焦ってるだろ。急がなくても俺は逃げないぞ」
汗ばんだ総司郎の頬に手を伸ばすと、体ごとぎゅっと抱き竦められる。
そのまま腰を使われ、俺は情けない声しか出せなくなった。
雲の上に力の強い神が侵入なんてしたものだから不安定になっているのかもしれない。創造神が不安に揺れるのならば、それを宥めてやるのも破壊神の仕事だ。
普段は俺様で尊大な、本当は寂しがりで、まだ俺が先に死んだ過去の傷が癒えていない恋人が不安に思うのならば、それを払拭してやるのも俺の仕事だ。
「大好きだ、総司郎。ずっといっしょだ」
喘ぐ隙間に吐息のようにしか言えなかったけれど、総司郎はしっかりと聞き届けてくれた。
お互いに強く抱き合って快楽を追う。
かわいいかわいい、俺の恋人。望むならいつまででもこうしていてやりたい。
……なんて考えてた数時間前の俺、早まるんじゃない。
ずっとこうしてよっか♡なんて言えば、性豪絶倫の総司郎が喜ばないはずないじゃないか。
「海くん、もう一回」
「も、やぁ……は、ぁ、あぁ────」
あまりにも長く続く快感から逃げ出そうとして伸ばした腕を後ろから掴まれる。
うつ伏せのまま背後から挿入され、びくびくと腰が震えた。
もはや拒絶する元気もない。
シーツと総司郎に挟まれるように揺さぶられ、もうほとんど出るもののない前が擦れて身悶える。気持ち良すぎてつらい。
「うっ……」
どくどくと中で脈打つ肉塊がもたらす絶頂は、なかなか降りてこられない。もうずっとイキっぱなしになってる。
潤滑剤より中に出された精液の方が多くなっていそうだ。
ぐちゅぐちゅと鳴る卑猥な音に耳を塞ぎたくても、疲れ切って腕が上がらない。
何度も出したせいか、総司郎の飢餓感は少し落ち着いたみたいだった。
今にも寝落ちしそうになっている俺の耳元に顔を寄せ囁く。
「こんなに中で出したら、孕んじゃいそうだね……?」
びくっと肩が揺れた。
いや待て落ち着け、俺は神とはいえ男だし、女のように孕むわけがない。
そう自分を納得させようとして、いつか総司郎が話した内容が脳裏を過った。
神同士で交わって────子を作る方法について。
「あ、や、やぁっ」
再び総司郎が這入ってくる。
掠れた声を出しても抵抗とすら思われない。背中にぴったりと密着する総司郎の身体はすごく熱い。
「海くんは嫌? 俺との子ども、欲しくない?」
「そ、んなの、ムリ」
「無理じゃないよ。無理じゃなかったら、子ども欲しい?」
「……」
無理じゃなかったら。総司郎との子ども。
────将来有望な総司郎の、輝かしくて「ふつうの」未来を奪っていることに罪悪感がないはずがなかった。
総司郎は俺を好きだと言ってくれるけど、それだっていつまでのことかわかったもんじゃない。それなら早めに手放してやるべきなんじゃないか。
同性愛者ってわけじゃない総司郎。
俺が離れてやれば、ごく「ふつうの」幸せな人生がこの先に続いているんじゃないか。俺みたいなうだつの上がらない、しがないただの年上男なんかに時間を使わせたらダメなんじゃないか。
女だったら良かったのに、なんて一度も考えたことないけど。
彼に何かを残してやれたらよかったのに────。
「そうしろ……ごめん、ごめんなぁ。先にいってごめん」
「カイ、くん」
「おまえになにも、遺してやれなかった。それだけずっと、心残りだった。おれがこどもを、うめる体ならって、かんがえたこともあったよ。そうしたらおまえをひとりで置いていかずにすんだのに、て」
「……っ、海くんはいっつも俺のことばっかりだ」
そりゃそうだ。何よりも愛おしい俺の総司郎。
いつだっておまえのことばかり考えていたよ。今も、昔も。
「海くん愛してる。もう絶対に放さないから」
「はは……おれも、だ」
正直もうこの頃には自分が何を言っているかよくわかってなくて、ただ総司郎が泣きそうな笑顔で何度もキスしてくるから、半ば酸欠になりながらそれに応えたってことだけは覚えてる。
次の朝、誇張じゃなく腰が立たなくてベッドから出られないという結果を見て、昨夜は盛り上がりすぎたな……と思い出す。
その程度しか記憶が残ってなかった。
「海くんおはよ」
「あぁ、そうしろ……んん、ごほっ」
「ごめん、喉枯れちゃったね。水飲める?」
ヤりすぎた自覚があるのか、甲斐甲斐しく世話を焼く恋人に遠慮なく頼る。
さすがに今日の仕事は休みにするしかない。急ぎの案件はなかっただろうか……と思案する俺の体を、総司郎がころんと転がし仰向けにした。
「? なんだよ」
「お腹みせて」
見せろといいつつ触られているが、そのままにする。
さすがにこれだけ疲労困憊の俺に挑んでくることはないだろう。そういえば昨日ヤバいくらい中で出されたモノは処理したのだろうか。体が気持ち悪くないからこいつがやってくれたのかな。
気を抜くと寝てしまいそうな俺の耳に、信じられない言葉が入った。
「おぉ、できてる。すごい」
「……え? なにが?」
「俺たちの子ども。作れるとは聞いてたけど半信半疑だったんだ。やっぱり海くんが受け入れてくれることが重要だったのかな」
「……え?」
どうやら俺は昨日、総司郎の願いを叶えようと心も体も「開いて」しまったらしい。
その結果、リクを作るときに総司郎が創ったガラス玉みたいな核の、もっとちっちゃいようなやつが今俺の腹の中にある、と、
「総司郎……てめぇ……」
「あ、大丈夫だよ。子どもができたって言っても女性の妊娠出産みたいな痛みとか不便さとかはないから。ちょっとした疑似産卵プレイにはなるけど」
平然ととんでもないことばかり言う総司郎に、俺は、キレた。
「どこが大丈夫だ! 報連相はどうした! 事前に連絡相談しろーッ!」
怒鳴り声に腰がびりびり痛んだが、こればかりはなあなあで許してやることはできない。
ベッドに寝そべったまま動けない俺と、ベッド横の床に正座して説教を受ける創造神というなんとも間抜けな構図は、俺の空腹が限界を迎えるまで繰り広げられたのだった。
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この作品は感想を受け付けておりません。
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不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。
【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】
ゆらり
BL
帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。
着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。
凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。
撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。
帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。
独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。
甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。
※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。
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【完結済】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜
キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」
平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。
そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。
彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。
「お前だけが、俺の世界に色をくれた」
蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。
甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー
異世界転移して出会っためちゃくちゃ好きな男が全く手を出してこない
春野ひより
BL
前触れもなく異世界転移したトップアイドル、アオイ。
路頭に迷いかけたアオイを拾ったのは娼館のガメツイ女主人で、アオイは半ば強制的に男娼としてデビューすることに。しかし、絶対に抱かれたくないアオイは初めての客である美しい男に交渉する。
「――僕を見てほしいんです」
奇跡的に男に気に入られたアオイ。足繁く通う男。男はアオイに惜しみなく金を注ぎ、アオイは美しい男に恋をするが、男は「私は貴方のファンです」と言うばかりで頑としてアオイを抱かなくて――。
愛されるには理由が必要だと思っているし、理由が無くなれば捨てられて当然だと思っている受けが「それでも愛して欲しい」と手を伸ばせるようになるまでの話です。
金を使うことでしか愛を伝えられない不器用な人外×自分に付けられた値段でしか愛を実感できない不器用な青年
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