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10年後編

恐ろしい弟

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「てことで、今から事務所行ってくるわ」
と立ちあがろうとするアーク君を引き止めた
「ま、待って待って!!ノア君には、その…身ごもったこと言ったの…!?」
「……言ってない」
言ってないのかよ!
「まずはノア君と相談して決めたら?」
「…そうなんだけど…おろせって言われるのが怖くて、言えないんだよ…!」
えぇ…?
「ノア君は子供を望んでないってこと?」
「そう言われたことはないけど…」
じゃあ言えばいいじゃん…。
「……ぐすっ」
…!?
「おれ、絶対この子は産みたいんだよ…!
だけど、もしおろせって言われたらどうしようかと思って…
そんなことになったら俺、ノアの元から消えて1人でも産むからな…!」
…っ、、俺はアーク君の肩を掴む
「しっかりしなよ!まだ何も言われてないのに1人で決めてるの!?
君はいつもそうだよね」
勝手に引退するって言うのもそうだし、
昔の話だが俺の知らない間に彼が枕営業をしていたと噂が上がった時もあった。
「そのお腹にいる子は君だけの子じゃないよ!ノア君にもその子の将来を考える権利はあるはずだ」
「…つきしろ、お前俺より早く父親になったからって大層な口聞くようになって…」
…はぁ?俺が必死に説得したって言うのに
この期に及んでそんなこと言うの?
と思ってると、彼の電話が鳴った
「…!ノアからだ
もしもし…」
『アーク……大丈夫ですか?』
「………ん
あのなノア…俺妊娠した」

俺はついに言った。
ノアがどんな反応をしようと、俺は腹の子を産む。
それだけは決まっていた
『…まぁ、そうだろうと思いましたよ』
「………え」
『医者のボクが妊娠の初期症状に気づかないとでも?
それと検査薬がゴミ箱に入ってましたから』
あ………、、テキトーに捨てちゃったもんな。。
「……ノア、俺の事捨てないのか……??」
『ふふっ、なんでボクがそんな事するんですか?
……あ、そろそろ仕事に戻らないといけないんで、続きは家で話しましょう』
「ん…わかった」
電話を切ると、月代は既にベンチを立って帰ろうとしていた
「君がマジで引退するって言うなら止めないけど、ノアくんとよく話し合うのが先だからね」
「ん…月代、ありがとな
俺フォトンと入院する時期被っちゃったな」
と笑うと、何を思ったのか奴は俺の髪を撫でてきた
「……ちょ!?なんだよ今の!?」
「…いや、俺が入社したばかりの頃はアークくん高校生だったのに感慨深いなと思って…」
「俺はお前の弟じゃねえ!」 
「クスっ、そう?お兄ちゃんって呼んでくれてもいいよ」
「呼ばねえよ!どっちかと言うと俺の方が兄キャラだろ…!
はぁ~これだからオッサンは」
「……君もだからね」

[アーク視点]
夜仕事があったから何とかこなして、帰ってきた
うぅ………腰と腹が痛い……
!!帰ると既にノアの靴があった
「ノアっ」
「おかえりなさい、迎えに行けずごめんなさい」
「いや……それより随分早く仕事終わったんだな?」
「ええ、アークと早く話がしたくて」
、、、
彼は紅茶を入れて俺に差し出してくれた
「カフェイン入ってない紅茶があったので買ってきたんですよ」
ノア………。
「………アークは、どうしたいですか?
ボクは産んで欲しいって思っているんですが」
「……!!!!産んでもいいのか!?」
「あの…そもそもボク子供欲しいからあなたを襲ったんですけど…無理やりしてごめんなさい」
………そうだったんだ
「ぐすっ……ノア、俺も産みたいっ……」
「ふふっ…アークがそう言ってくれて嬉しいです」
……っ、、俺は思わず目の前の弟に抱きついた
「ううっ…おれ、ノアにおろせって言われたらどうしようかと思って………」
「えぇ…?言いませんよそんな事…
………アーク、妊娠初期は体調もつらいのに、背負わせてごめんなさい……
ボクがケアしますから……だから……」
弟は俺に指を絡め、目を覗き込んで言った
「ボクと、結婚してください」

[ノア視点]
それから間もなく、アークは俳優を引退した
なんの前触れもなく出された引退表明に、みんながざわついた
……一部では、彼が妊娠しているんじゃないかという噂も出ている
相手についても色んな憶測が飛び交った
枕営業でできた。
マネージャーとやった。
……そして、弟と交際している、という噂もわずかだが存在する
「ノア~♡迎えに来てくれたのか?」
事務所の前でアークを出迎えた
今日をもって彼は引退、もう二度とこの事務所に来ることは無い。
「ええ、引越し先につけるカーテンを一緒に探そうかと」
「そっか♡」
「…でもアーク、よかったんですか?引退なんて……
ネットでは悲しむファンで溢れかえってますけど」
「ん?まぁ俳優の時は色々あったけど…
俺はこの仕事に未練はねえよ
ノアこそいいのか……?おれ収入ゼロになるけど」
「ふふっ、気にしないでください
今度はボクがアークを守る番ですから」
アークは口にしたことがなかったが、彼が両親の遺産に手をつけたことはほぼ無かった。
これまで彼の収入でボクと姉さんを養ってきたらしい。
そんな彼を心から尊敬するし、今度はボクが彼にそうしてやりたいと思った
…ボクたちの薬指につけられたお揃いの指輪。
兄弟で婚姻は結べないけど、こうして指輪をつけられるだけで充分だった。
「しかし避妊薬も効かないもんだな~
まああんだけ毎日やってたらさすがにできるよな…」
………。
アーク、ごめんなさい。
ボクは彼の避妊薬を入れ替えていた
それも、胞子との適性を高くし妊娠しやすくする薬剤に…。

以前よりボクは海外転勤の提案がされていた。
ボクの能力を買ってくれた上司が、勉強のためと図ってくれたらしい。
だが兄さんと離れ離れで暮らすなんて考えられないから、断ろうと思っていた………
しかし、避妊薬を見て思いついてしまった。
兄さんを孕ませて引退させれば、ずっと一緒に暮らせるし…欲しかった子供もできるじゃないか。
我ながらなんて恐ろしいことを思いついてしまったんだろう…
とにかく出産までは、ボクが懇意にしている口の固い産科医にアーク兄さんを任せることにした。
でもいつかはバレるだろうから、退院予定の月に引っ越すことにしている
「しかしもう引越しのこと考えてるのか?気が早いぞ♡」
「アークだって子供の性別も分かってないのに名前考えてるじゃないですか」
「アークくん、ノアくん」

振り向くと、姉さんとその旦那がいた
「お兄ちゃん!改めておめでとう♡」
「フォトン!ありがとな♡」
「はぁ…なんで俺が君の分の入院準備までしないといけないの…。はい、これ書類」
「ん?マネージャーならこれも仕事のうちだろ?」
「その仕事も今日で終わりだけどね…
…………アーク君、今までありがとうございました」
……!?!?!?
「…!!
……あぁ、こちらこそ世話になったよ
まぁ、もう会えなくなるわけじゃないし寂しがるなよ!」
「寂しくはないから…!」
「ねえねえ!お腹空かない?4人でご飯食べに行こーよっ」
「ふふ、姉さんは何が食べたいんですか?」
「んーー、、牛丼とか?」
「妊娠祝いに牛丼……。」
「妊婦は暴飲暴食なんだからねっ!」
「まったく医者の前でそんな言葉言わないでくださいよ…」


ご覧いただきありがとうございました!
次は「映画デート」編です
時系列は元に戻ります(ノア15歳、アーク21歳)
お楽しみに!!
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