傲慢貴族な転生者が、ハイスペックな敵キャラに籠絡されるなんて!?

飯田 いち太郎

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謝罪

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「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・。」

 師匠は、壁にすがりつくように両手をつき、そのまま膝をついた。

 何度も繰り返す謝罪の言葉。掠れた声で、震える唇で続く言葉。まるで、呪いのように自分自身へ言い聞かせる言葉。

「どうして、謝るんですか。」

 問いかけた俺の声は、思っていた以上に弱くて、頼りないものだった。

「こんなこと、こんな・・・。」

 師匠は、俺の問いに答えず、ただ顔を覆って、首を大きく横に振った。

「・・・私が来た時には、もう、ルインの姿はなかった。」

 ぽつりと落ちた言葉が、時間を止めた。

 石造りの広間に、冷たい空気が張り詰める。

 顔から手を離した師匠の顔を見ると、今にも壊れてしまいそうな顔だった。

 目はうつろで、頬には乾きかけた涙の跡があった。

「代わりに、あったのは・・・壁に広がる、この大量の血。」

 視界に広がるのは、赤黒く染まった壁。天井にまで、飛び散った、血。

 そこに、先程まで誰かが“いた”ということは明らかだった。でも、どうして、求める姿がいないのだろう。

「だから、何ですか。」

「この血の量で、生きてるなんて、生きてなんてッ!!」

 師匠の声が割れ、悲鳴のように変わる。今にも泣き叫びそうな、壊れた音を、発している。

 どうして、そんなに悲しんでいるんだろう。そんなに謝るんだろう。だって、まだ、決まった訳ではないじゃないか。

「・・・。」

「世界は・・・救われたのよ。たった一人の犠牲を出して。」

 その“たった一人”が、俺にとってどれほどの意味を持っていたのか、誰にもわからないだろう。

「・・・。」

「一瞬の輝きは、失ったらもう、得られない・・・。」

「輝き。」

 誰かが、同じことを言っていた気がする。誰だっただろうか。どうして、思い出せないんだろう。

 光魔法を使えば、思い出せるだろうか。

「私が、あなた達に関わらなければ、私が、私が・・・。」

 涙を流して崩れる師匠。どうしてだろう。確かに喋っている声が聞こえるはずなのに、意識が遠くに行っていて。

「ルイン。」

───俺は、そっと壁に触れる。まだ残る懐かしいその魔力を感じていると、全身の力が抜け落ちる感覚がした。

 頭が、とても痛い。

 まだ、ここにいるなら。俺は、まだ、待っていてもいいのだろうか。

 ルインへ言えなかった言葉を思い浮かべては、溢れる汗と、詰まる呼吸に苦しくなる。

「アゼク!もういいわ、もう・・・できないのよ・・・。」

「え?」

 魔力が一気に消えていく。俺は、何かの魔法を使おうとしていたのだろうか。

 意識が、どんどん溶けていく。

 指先の感覚がない。目の奥が熱いのに、心が痛むのに、涙がどうしても出ないんだ。

 このまま眠ってしまったら、夢の中で、君に会えるだろうか。
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